お出かけです
翌朝、窓の外の喧騒で目が覚めた。
「んもぉ、うるさいですね~」
シオンは眠い目を擦りながらベッドから起き上がった。窓まで行き、外を見ると何やら人だかりができておりその中央に人が突き刺さっていた。
「朝から町は賑やかですねぇ。そろそろ出発の準備をしましょうか。サンちゃん、お家へお帰り。またよろしくね」
そう言うとサラマンダーのサンちゃんを元素世界へ戻し、顔を洗い、身支度をして宿屋の一階へ降りて行った。
「おばさん、おはようございます」
「やぁ、お嬢さん、おはよう。朝食できているから食べていきな。パンケーキを焼いておいたよ」
「ありがとうございます!」
シオンは大喜びで食卓に着くと、用意されていたパンケーキをほおばった。
(私、パンケーキ大好きなんだよなぁ。おばさんなんでわかったんだろう)
などと考えながら口いっぱいに頬張り、一心不乱に食べた。おなかいっぱいになると、宿屋のおばさんに挨拶をし、旅の準備のため商店街へと向かった。商店街では食料品と日用品を買い足した。
「さてと、準備もできたし、次の町へ行きましょう!」
首から下げていたがま口の財布をバッグに入れようとした。
その時、シオンの後ろから走り寄る小さな影があった。
ドンッ
その影はシオンを突き飛ばすと、まっすぐに町の外へ向かって走っていった。
「あいたたた」
シオンは立ち上がると、お気に入りの黄緑のローブの埃を叩いた。するとついさっきまで手に持っていたがま口が消えているのに気付いた。
「あ、お財布が無い!」
さきほどぶつかったときの取られたようだった。シオンはすばやく影の去った方角をみると、影は100メートルほど先におり、さらに町の外へと向かって走っていった。
「待ちなさい、それを返してください、あぶないですよっ」
シオンは叫びながら影を追ったが、その差はドンドン開いていくばかりであった。それでもあきらめずに影の走り去ったほうへ走り続け、町の外まで来た。息を切らせ、足ももつれながらも必死に影をおいかれた。すると、遠くから何やら少年の叫び声が聞こえた。
「うぎゃぁ、助けてくれ!」
それを聞いたシオンは、
「あちゃ、やっちゃった」
そう独り言を言うと、歩みを緩め、呼吸を整えながら声のした所、少年の元へと近づいた。
「ほら、言うこと聞かないから大変なことになっちゃいましたね」
両手を腰に当て、少年を見下しながら言った。シオンの視線の先には大カエルの舌に巻き付かれた少年が横たわっていた。
「なんなんだよ、このカエルは!」
「この子は私のお財布のガマちゃんだよ。私から離れるとカエルになっちゃうの」
「なんだよ、その設定は!いいから放してくれ!」
「しょうがないわね。ガマちゃん、戻りなさい」
シオンが手をかざすと大カエルは元のがま口財布に戻り、シオンの手に収まった。捉えられていた少年は腰から地面に落ちると、腰をさすりながら立ち上がった。
「いててて、一体何をしたんだよ。どんな手品だよ」
「手品じゃないよ、魔法だよ」
シオンはエッヘンと言わんばかりに胸をはった。
「なに言ってんだよ。魔法っていうのは小難しそうな魔法使いさんがこう両手を突き出して難しい呪文を唱えたり、なんか怪しい杖なんか使ってやるやつだろ。お前のはそんなの全然なかったじゃないか」
少年は悪びれた様子もなく言い返した。
「そんなことないもん。私のはちゃんとした魔法だもん。お師匠さんだってちゃんと認めてくれてるもん」
「へっ、どうせインチキ魔法使いで手品でも教えてもらったんだろ」
「お師匠さんはすんごい魔法使いなんだよ。そのお師匠さんが言うんだから間違いないもん」
「すごい魔法使いって誰だよ。すごいってのは魔王を封印した伝説の、魔導士ジャック・ジルスチュアート様とかマリナ・マンダリア様とかのこというんだよ。どうせその辺のおやじだろうさ」
「そんなことないもん。お師匠さんは、、お師匠さんは、、すごい人なんだもん」
そういうとシオンは泣き出してしまった。ワンワンなくシオンに少年は困り果てた。
「ごめんごめん、そんなに泣かないでくれよ。ほら、このアメあげるからさ。そうそう、俺の名前はピータって言うんだ。よろしくな」
シオンはピーターから飴玉を受け取ると、それを口にいれ、だんだん泣きやんだ。
「そうだよな、すごい魔法使いは他にもたくさんいるもんな。俺がしらないだけで、きっとおまえのお師匠さん、すごいんだよな」
ピーターは必死に取り繕い、なんとか機嫌を直してもらおうと必死になった。
「そうそう、おまえ、これからどこ向かうんだ?一人じゃ心細いだろう。俺がついてってやるよ」
「ぐすん、いい、私一人で行けるもん」
「いや、女の子ひとりじゃ危ないよ。このへん穏やかって言ったって、野犬とかはでるんだからさ」
「だいじょうぶだもん!あたし、強いんだから!お師匠さんもそう言ってたもん!だから一人でいくの!ついてこないで!」
シオンは師匠を馬鹿にされたのが非常に腹に来ており、ピーターの申し出をピシャリと断った。半泣きながらも怒りをこらえ、町の郊外へと歩き去っていった。
「やれやれ、心配だな。」
ピーターはつぶやいた。
* * * * *
とある田舎町のはずれにある山小屋にて
「ジジ、久しぶりじゃの」
「おぉ、ママ、元気じゃったか」
「シオンはどうしたんじゃ」
「あの子にはお使いを頼んだんじゃ」
「お使い?大丈夫かいな」
「大丈夫じゃ、あの子は馬鹿だが強い」