ドラゴンさん
「ここに人間どもが来るのは何年ぶりだろう。最近はドワーフ王に言ってここに近づけさせないようにしていたからな」
グルニバラは首を曲げて地面に近づけるとシオン達を観察し始めた。一人ひとりに顔を近づけ頭の先から足の先までなめるように見た。
シオンの番になった時、グルニバラは「ほう」とつぶやいたとき、
「ねー、ドラゴンさんはここで何をしているの?」
とシオンに言われた。
グルニバラは首を再び持ち上げ、
「何をしているかだと。ここは我の住処だ。ここにいて何が悪い」
声のトーンからグルニバラは機嫌を損ねたように思われた。
「すまないねぇ、グルニバラさん。うちの子が生意気言って。それより、私たちはドワーフの国へ行きたいのじゃが、すこし道に迷ってしまってね」
マリアは何とか平静を装って言った。
「ドワーフの国へだと。笑わせるな。人間どもは昔から我の財宝を狙って奪いに来ているだけではないか。英雄だとか、ドラゴンスレイヤーだとか名乗って、邪竜に奪われた宝を取り返しに来たとか言っては、どいつもこいつも大して強くなく、弱いくせに口だけは達者で、我を楽しませた奴は一人もおらんかった」
グルニバラの足元には金貨や宝石が山のように積み上げられ、様々な武具や道具もたくさん見られた。それらはグルニバラのライトに照らされてまばゆく輝いていた。
「人間の国からドワーフの国へならばこの道は通らぬはずだ。そんな戯言を我が信じるとでも思っているのか。ほれその小娘を見ろ。宝の山に興味深々ではないか」
シオンはひとり、ドラゴンではなく宝の山に視線を向けうずうずしていた。
「シオン、宝を取りに来たんじゃないよ。私たちはドワーフの国へ行くんだよ」
「でもママ、あんなにたくさんお宝があるんだよ。何があるのかワクワクしないの?」
今にも飛び出して行きそうなシオンをペーターとチッタが必死になって引っ張った。
「ガハハ、その小娘は素直じゃな。お宝に目が無いようだ。ドワーフの国への道はほれそこの通路だ。行きたければ我の妨害を避けていくがよいっ」
グルニバラは自身の左後方にある通路を爪で指し示した。
「お前たちが動き始めたら攻撃を始める。準備が出来たらいつでもいいぞ」
グルニバラは久しぶりの遊びにすこし声が上ずっていた。
マリアは覚悟を決め、指にはめたマジックリングをしっかりとはめ直し、腰のバッグの中身を上から手探りで確認した。ペーターも弓に矢をつがえ、チッタはブレスレットに手を当てた。
「いいかい、相手はドラゴンじゃ。絶対に勝てるはずがないから、とにかく攻撃をよけながらあの通路を目指すんじゃ。私が注意を引くから、ペーターはチッタを頼んだよ」
ペーターの方を振り向き言った。
「それからシオン、お前はとにかく防御魔法を使うんじゃ。なんでもいいから奴の攻撃を防ぐんじゃ、いいな」
シオンにも声を掛けたが、うわの空で聞いていた。
「いくよ。3・2・1,0っ」
ペーターとチッタが出口に向かって走り始めると同時に、マリアは右の中指のマジックリングをしようした。
「ライトニング・ボルトっ」
マリアから閃光がグルニバラに走る。
閃光はグルニバラにぶつかると激しい火花を散らし爆散した。
「ハハハ、こんなものは聞かぬぞ」
右手の爪をひょいと動かすとその先にはファイアーボールが出現し、爪をペーターに向けると、そのファイアーボールは一直線に飛んで行った。
それを見たペーターは勢いを殺し、チッタに向かって飛びついて爆発を回避した。
グルニバラはさらに三つの小型のファイアーボールをペーターに向かって放ち、それを必死になって避けるのを面白そうに見ていた。
「グレート・ウォーター・ウォールっ」
今度は左手の人差し指のマジックリングを突き出した。
ペーターとグルニバラの間に巨大な水の壁が出現した。圧倒的な水量で分厚い水の壁は安心かに見えた。
しかし、グルニバラは大きく息を吸うとそのまま吐き出した。吐き出した息は炎を纏っており、マリアの出した水の壁を一瞬で蒸発させてしまった。
「な、なんと・・」
水の壁が消されるとグルニバラからペーターとチッタが丸見えとなった。
そこへ再びファイアーボールが飛んで行った。
先ほどはうまくかわしたが、今度のはすこし速度が速く、ペーターの足に当たってしまった。
「ぐわぁっ」
ペーターはその場に崩れ落ちると左足を抱えてうずくまった。
「ぺ、ペーターさんっ」
チッタはペーターの側へ駆け寄ると、その傷を確認し、
「い、今、回復しますからね」
と言い、癒しの踊りを踊り始めた。
最初は恐怖のためぎこちなかったが、徐々に動きが滑らかになってくると、チッタの周りに淡い緑色の光が輝き始めた。
それをグルニバラは興味深そうに眺めた。




