洞窟探検
目の前には薄暗い穴が下に向かって伸びていた。
「これがドワーフの洞窟だよ」
洞窟の幅は大人が二人並んで通れる程度。天井はドワーフに合わせて作られておりあまり高くなく、マリアは少しかがまなくてはならなかった。入口から斜め下に伸びており、足元は山をくりぬいただけではなく切り出した石で階段が組まれていた。明らかにドワーフの手による造りであった。
洞窟の奥から吹いてくる冷たい風を受けながら4人は階段を下って行った。
階段は何百段とあり、最深部まで2時間ほど必要とした。
そこからも洞窟は伸びていたが、ドワーフの手が入っており、歩行には不便しなかった。所々に分岐点があったが、そこにもドワーフの記号が刻まれており、マリアが注意深く観察し進む道を示していった。
最初は暗い、狭い、寒いと愚痴をこぼしていたシオンとペーターであったが、半日もするとあきらめたのか疲れたのか、すっかりと黙り込んでしまった。
暗闇の中では時間の経過が分からなくなったが、空腹と疲労がたまったところで、その日は休息を取った。
翌日、目を覚ますと再び暗闇の中をマリアの明かりの元、先を目指したが半日ほどしたところで一行の足が止まった。
「この先の道がふさがってしまっているねぇ」
先頭を行くマリアが行くてを指した。
洞窟は壁が崩落し、完全に塞がっていた。
「しかたない、ちょっと戻って別の道をいくとしようか」
一行はひとつ前の分岐点まで戻り、違う道を行くことにした。
「ねぇ、ママ、こっちの道で大丈夫なの?」
「まぁ、ドワーフの手が入っているからねぇ。彼らは網の目のように洞窟を作っているから、どこかで彼らの道にぶつかるだろうて」
そう言うとより慎重に新しい道を進んでいった。
しばらく進むと正面から一陣の風が流れてきた。
「この先に何かありそうだね」
進むにつれ風は徐々に強くなり、さらに進むと広い洞穴に出た。
「わぁ、広ーい」
マリアのライトの魔法では光源が弱く、洞穴の壁を映し出すことが出来なかった。しかし、左右と頭上に広い空間が出来たことで、空気のよどみが無くなり、解放感は味わえた。
一行は洞窟の閉塞感から解放されほっと一息ついた。
と、その時、
ゴゴゴゴゴーーーーーッ
と大きな音とともに強風が吹いてきた。
「シオン、戻っておいで、何かいるよっ!」
洞穴の入り口で体をクルクル回していたシオンは、風の吹いてきた方を見ると、慌ててマリアの元へと飛び帰って来た。
ライトで先の方を照らすもはっきりとは何も見ることが出来なかった。
しばらくそのままでいると、再び、
ゴゴゴゴゴーーーーーッ
と音と風が吹いてきた。
さらに周囲を警戒していると、突然頭上から声がした。
「ほう、ドワーフどもではないようだな」
低い声は洞穴内を響き渡った。
「わー、なになに、ママ、何かいるよ」
声に動じないシオンは思わぬ声にやや興奮気味になった。しかし、マリアは不気味な声に全身を強張らせた。
そんなシオンを無視して、声の主は続けた。
「人間がいち・に・さん・四人か。それとおもしろい生き物もおるようじゃの」
声の主は続けて言った。
シオン以外は、恐怖に全身が震えその場から動くことが出来なかった。
頭上の暗闇にはライトの薄明るい光に反射して二つの光が見えた。
「そんな明かりじゃ我の姿が見えまい。もっと明るくしてやろう。ライト」
するとあたり一面まばゆい光に包まれた。
その中心には全身赤い鱗で覆われ、長い首の先には角の生えたトカゲの顔、二本足で立ち、上半身には短い腕。そして背中には大きな翼があった。
「レ、レッドドラゴン・・・」
かろうじて声を出せたマリアがつぶやいた。
精霊界の力を強く受け、異常に発達した生態をもつモンスター。元は自然界に生息していた生き物に何かの拍子に精霊界からの影響を受け、精霊界からのエネルギーで通常ではありえない発達をする。
目の前にいるレッドドラゴンは、トカゲに火の精霊エネルギーが流れ込み発達した。
この地方では古より伝承で伝えられており、その圧倒的な力は歴史上かなうものはいなかった。
しかし、シオンはと言うと、
「おっきい赤いドラゴンだー。私初めて見たー」
初めて見るドラゴンにさらにテンションをあげ、その場でピョンピョンと飛び跳ねた。
「お、おい、シオン、静かにしろよ・・」
怯えるチッタをかばいながらペーターが言った。
「我はレッドドラゴンのグルニバラだ。お前たち人間は今度は何を盗みにきたのだ、と言うか、そこの小娘、すこし静かにしろ」
グルニバラに恫喝され、さすがのシオンもすこし委縮した。




