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カエル、嫌い

 超巨大カエルは狙いをサラマンダーからシオンに変えた。

 ゆっくりとその巨体の向きをシオンに変えると、すこし身をかがめ、シオンに向かって舌を勢いよく伸ばした。


「シオン、危ないっ」


 ペーターが咄嗟に駆け寄りシオンに飛びついてた。

 間一髪、カエルの舌は空を切り、シオンは捕まらずに済んだ。しかし、次の瞬間にはカエルは大きく飛び跳ねており、二人にめがけて落ちてくるところだった。


「・・・ウォーター・ボムっ!」


 カエルの背後からマリアの唱えた水の塊が飛んできた。

 水の爆弾はカエルに命中すると激しく爆発し、その勢いでカエルは前方へと吹き飛ばされていった。


「こうも飛び回られると厄介だね。ペーター、私とお前でカエルの注意を引くよ。走りながらとにかく矢を打って。シオン、あんたはカエルの動きを封じ込めて」

 ペーターは弓を手に取ると、走り出した。    

 マリアもシオンから距離を取るように移動しながら、詠唱時間の短い簡単な魔法でペーターを援護した。

 シオンはゆっくりと立ち上がると、


「動きを封じるって、何をすればいいの?」


 いろいろ考えながら両手を上下左右に動かした。

 あーでもないこーでもないしていると、マリアの罵声が飛んできた。


「とっととやりなっ!とりあえず、ゴーレム呼び出しな」


 シオンは一瞬ビクッとなったが、すぐにゴーレムさん、(サモン・)出てきて(ゴーレム)、と言うと、シオンの目の前にストーン・ゴーレムが現れた。

 ゴーレムはわずかに超巨大カエルより大きく、カエルを上から押さえつけようとした。しかし、体表面の粘液がヌルヌルしており、うまく捕まえることができなかった。

 それでもカエルの注意はゴーレムに向いており、マリアは時間を取ることができた。


「二人とも、これから大技いくから、しばらく私に近づけさせないでおくれよ」


 そう言うとマリアは呪文の詠唱を始めた。

 ゴーレムはそのままカエルと格闘をしていたがやはり押さえつけることはできないでいた。その合間を縫ってペーターが矢を入り、シオンが呪文を唱え攻撃をした。

 カエルは相変わらず攻撃が効いてはいなかったが、二人と一体に気を取られていた。

 十数秒が経過した。

 マリアの詠唱も終盤に入り、周囲の空気が振動し始めた。

 マリアから膨大な魔力を感じると、カエルは一瞬動きを止め、マリアの方に向き直った。

 その大きな口を開けると、ゴーレムの脇の下を抜けるようにベロを突き出した。


「危ないっ」


 マリアの前にいたシオンは咄嗟に身を投げ出し、マリアに向かって伸びていたカエルの舌の前に出た。

 ズンッ、とカエルの舌はシオンの腹部に突き刺さった。カエルの舌はそこまで尖ってはいなかったが先端は細くなっており、貫通こそしなかったが、シオンのおなかに深く刺さった。


「シオンーーーー」


 ペーターがシオンの元へ駆け寄り、シオンを支えると、シオンはおなかを押さえその場に崩れ落ちた。

 シオンを地面に下したペーターは矢を手に持つと、矢尻をカエルに向け突っ込んでいった。

 しかしまっすぐ向かってくるペーターに対し、カエルは再び舌を伸ばした。

 舌はペーターの顔面に直撃し、ペーターは後方へと吹き飛んでいった。

 カエルは残ったマリアに向きを変えると今にも飛びかかろうとした。

 しかし、その時マリアの詠唱が終わった。

 大気が振動し、雨粒がいくつか落ちてきたかと思うと、次の瞬間には水が大量に現れカエルを中心に回転し始めた。瞬く間に高速回転になった。

 渦の中のカエルは必死に逃れようとしたが、水流で身動きが取れず、次第に体、手足がよじれてきて、しまいには体の各部位が締め上げられ、引き千切られた。

 しばらくすると呪文の効果が消え、大量の水もどこかへと消えていった。

 魔法を使い終えたマリアはいそいで二人の元へと駆け寄った。


「シオン、ペーター、大丈夫かい?」


 二人を並べて横にすると傷を確かめた。


「よかった、切り傷は無いね。打撲がメインだね。おーーいチッタ、こっちは来ておくれ」


 シオンが気を失ったことで消失しているストーンドームのあった場所に立ち尽くしていたチッタに向かって叫んだ。

 戦闘中はあっけにとられて何もできずにいたが、今度は自分が役に立てる思い、「はいっ」っと大きな返事をして駆け寄った。

 しかし倒れている二人を見ると、急に恐怖と悲しみと不甲斐なさとが湧きあがりかるい混乱状態になってしまった。

 慌てふためくチッタを、マリアは右手で パシン と頬をたたいた。


「しっかりおし、二人を治療できるのはお前しかいないんだ。お前が踊らなければ二人が死んでしまうかもしれないよ。つらいだろうけど、今は踊るしかないんだ。頼んだよ」


 マリアに促され、チッタは癒しの踊りを踊り始めた。

 

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