反撃します
「シオン、なんでもいいから時間を稼いで。ペーター、お前はチッタちゃんを守っておくれ。私は呪文の詠唱に入るからね」
マリアは迫りくるオークを前にして指示をだした。
「よーし、チッタは俺の後ろにいろよ。俺が守ってやる」
ペーターはカバンからパチンコを取り出すと、それに石をセットし力いっぱい引き絞りオークに向かって撃った。
シオンは習いたてのファイヤー・バレットを連射した。全弾命中しバレットは炸裂したがオーク達は一時的にひるむだけで、じわじわと距離を詰めてきた。
マリアは呪文の詠唱の最中であったが、じれっくなりにシオンのおしりを蹴っ飛ばした。
「おバカ、ゴーレムを出しなさいっ!」
呪文の詠唱を一時辞め、シオンに怒鳴った。
「えっ、えっ、でもゴーレムは出すなって・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。状況を考えなさい。さっさと出して」
「わ、分かった。ゴーレムさん出ておいで」
シオンが唱えると、地面が鳴り響き、ストーン・ゴーレムが姿を現した。
「ついでに、さんちゃんと、ふうちゃんも出ておいで」
続けてサラマンダーとシルフも姿を現した。
召喚された三体とオーク達は入り乱れての乱戦になった。
その隙にマリアは呪文の詠唱を再開していた。
「・・・すべてを飲み込みたまえっ」
マリアが唱えると空に水の塊が出現した。それが地面に落ちると、ゆっくりと力強く渦を作り上げていった。
「ほら、さっさと引っ込めて」
再びマリアにおしりを蹴っ飛ばされると、あわててゴーレム、サラマンダー、シルフを元の世界へと戻した。
渦の中はオークのみになった。脱出しようとあえぐが水流が強く思うように体が動かない。渦は次第に強く早くなっていき、しまいにはオーク達をすりつぶしてしまった。
渦が消えると地面にはオークの死体だけが残った。
「貴様、よくも手下たちをっ」
後からやってきたトカゲ頭が叫んだ。
「ふん、なにさ集落を襲っておいて」
「そーだ、そーだ、お前もやっつけてやる」
マリアの横にいたシオンはそういうと、魔法を唱えようとした。
それを見たマリアはシオンの前に手を出し行動を制した。
「シオン、ここはママに任せておくれ」
そういうと一歩前へでてトカゲ頭を挑発した。
「ほれ、かかっておいで。それともこのマリア様が怖いのかい?」
そういわれたトカゲ頭は激高し、手に持っていた槍をマリア目掛けて投げつけた。
槍はマリア目掛けて一直線に飛んでくる。するとマリアは左手を上げ拳を突き出した。その指にはいくつもの指輪がはめられており、そのうちの一つが赤く輝くとファイヤー・ボールが飛び出した。
ファイヤー・ボールは槍に命中し、槍は空中で炭と化した。
「そんなもんかい?」
マリアはさらに挑発する。
怒りに震えるトカゲ頭だったが、今目の当たりにした光景から、自分のかなう相手ではないと判断し、
「畜生、覚えてやがれっ」
と叫ぶと、元来た方へと逃げ去っていった。
「ママ、敵さん逃げっちゃったよ?」
シオンは不思議そうにマリアの顔を覗き込んだ。
「いいんだよ、シオン。わざと逃がしたんだ。ここであいつまで倒してしまうとあの集落が敵に目をつけられてしまうだろ。だからわざと逃がして、私たちがやったことを報告させるんじゃよ。さてと、これで私たちはお尋ね者になってしまったね。さっさとここを離れましょう」
マリアはそういうと身支度を整え、西に向かって歩き出した。
「なぁ、マリアさん。あのトカゲ頭は何なんだい?」
ペーターはマリアの後を歩きながら訪ねた。
「あぁ、あれかい。おそらくリザードマンが魔王の力で強化された上級魔族だろうねぇ。先の大戦の生き残りか、新しく作られたのかはわからないがのぉ」
「へぇ、それで人の言葉もしゃべるんだぁ」
「そうだよ、高い知能が与えられていてな、魔物間で異なる言語じゃ困るから共通の言語をしゃべるじゃ。人族の言葉をしゃべるのはおそらく魔王が人族の言葉を使っていたからだろうね」
その日は夕暮れまで休むことなく歩き続けた。




