狩り
翌朝、食事を済ませると一行は出発した。
木々の比較的薄いところを選びながら、そして開けたところに出るのを避けながら着実に西に向かって進んでいった。
「なぁ、マリアさん。なんでこんな森の中を進むんだい?あっちの街道に出た方がいいんじゃないの?」
ペーターが愚痴った。
「そうだねぇ。一言で言えば見つからないようにだね。お前さんは見ていないだろうが、千里眼で王都にはたくさんの魔物が見えたんだよ。そうすると周辺にもお仲間がたくさんいるだろうから、広いところに出たらたちどころに見つかってしまうだろうね。」
「そうしたら、マリアさんがやっつけちゃえばいいじゃないか。」
「それは簡単だけど、そうしたら次から次へと魔物が押し寄せてくるんじゃよ。昔もあのジャックが魔物にちょっかい出したせいで1か月も追いかけられたことがあるから、面倒なことはなるべく避けたいんじゃ。」
ふーんと答えると、また黙々と歩みを進めた。
時々物陰から小動物が飛び出してくることがあったが、昼過ぎまで特に魔物と遭遇しないで進むことができた。
「ママ、お腹すいた。そろそろお昼ご飯にしない?」
日が昇り切ったころ、シオンが言った。
「そうだね、お昼にしようかね。ペーター、お前は水を汲んできな。チッタは薪を集めて。シオン、お前は私と一緒に狩りに行くよ。」
「えー、お水は私が魔法で出すから、狩りはペーターに行かせようよ」
「駄目だよ。狩りはお前の魔法の訓練も兼ねているんだから私に着いておいで」
そう言うとシオンの襟をつかんで、森の奥へと入っていった。
「この辺でいいかね。さあ、シオン、まず軽くファイアー・ボールを打ってみな」
そう言われ、シオンは右手を前に出すと、えいっ、と言って、ファイアー・ボールを打ち出した。ファイヤー・ボールはまっすぐに飛んでいくと一本の木にあたり、はじけ飛んだ。木の方は粉々に砕け散り炭となった。
「さすがだね。ただ、それじゃ威力が強すぎるから、もう少し小さくしてみよう。私がやってみるから見ていてごらん。そういっても私の場合は水の魔法だけどね」
---生命の源、大いなる水よ、そのものを貫け---
するとマリアの手のひらから水の針が飛び出した。
まっすぐに飛行するとすこし離れた木に突き刺さった。
「これがニードル系の魔法だよ。頭の中で水や火の塊をイメージしたら、それを少しずつ小さくしていくんだよ。とにかく小さく小さく。小さくすることで威力を弱くすることが出来るんじゃ。逆に大きくすれば威力が増すけど、それは魔物がいないところでやろう。さぁ、小さくイメージしたら出してごらん」
「えー、そんなことやったことないよ。いつも適当にえいってやれば出るんだから~」
「四の五の言ってないで、とっととやってごらん。まず、火の玉をイメージして・・・」
そう言われると、シオンは渋々と手を前に出し、珍しく精神を集中させた。
最初は火の塊が頭の中に思い浮かべた。それを徐々に圧縮させていった。ビー玉くらいの大きさになるとそれが勢いよく前方に飛んでいくのを想像した。
えいっ出てっ
そう叫ぶと前に翳したシオンの両手から一筋の炎の弾丸が真っ直ぐに飛び出して行った。
「やれば出来るじゃないか。まぁ、針というより指ぬきくらいだったかな。いまのをもっと小さく、もっと早くだせるように練習しな。今は1分くらいかかっていたからね。そうしたら、今度は実践だよ。わたしがその辺の木陰から動物を追い出すからお前がそれをしとめるんだよ」
「そんな、いきなりは無理だよ」
シオンの訴えは無視され、マリアは森に向かってウォーター・ボールを軽く打ち込んだ。
すると茂みから一匹のウサギが飛び出してきた。
「さあ、いまだよっ!」
マリアが声をかけた。
「えっ、えっ、ちょっと待って」
シオンは慌てて手をかざしたが、えっとえっと、とあたふたしている間にウサギは再び茂みに隠れてしまった。
その後も30分ほど繰り返したが、結局一匹も捕まえることが出来ず、ペーターとチッタが待つ場所へと戻っていった。
マリアの無茶振りに心が折れかけていたシオンは二人の顔をみると、
「わーん、ママがいじめるのー。私にできないことをやらせようとして、めっちゃ怒るの。助けてー」
そう言うとペーターではなく、チッタに飛びついた。
「全く、あれくらいで根をあげているようではだめだよ。今やったこと朝晩しっかり練習すること。いいね、シオン。お前にはもっと魔法を扱えるようになってもらわないと、この先困るんだから」
その日の昼食はマリアが持っていた干し肉を焚火で炙ったものになった。




