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シオンの魔法って変じゃない?

 その日は夕暮れまで西に向かって進んだ。

 近くの森に入ると、マリアは箒から降り、ホワイトウルフの背中に乗った。

 日も暮れ、視界が悪くなってくるとマリアが言った。


「今日はこのあたりで休もうかね。暗闇じゃ私らよりも魔物どものほうが眼が効くから不意打ちされたらたまったもんじゃない。シオン、ほら以前キャンプに行った時のあの石の家を作っておくれ」


「うん、分かった。じゃあ、この辺に作るからみんな離れていて。石のお家よ、(ストーン・)出て。(ドーム)


 シオンが言うと、前方の木の根元の地面がひび割れ、そこから石の壁が這い上がり、直径5メートルほどある石で出来たドームが出現した。


「ひゅぅ、相変わらずあんたの魔法は滅茶苦茶だね~。ささ、みんな入ったら、シオン、シルフを呼び出して見張りに立たせておくれ。」


 マリアに言われると、シオンはシルフのフウちゃんを呼びだし、みなに続いてドームに入った。

 ありあわせのもので食事をとると、四人は円形に座った。


「ねぇねぇ、マリアさん。シオンの魔法ってなんか変じゃない?」


 ここしばらくシオンと旅をしていたペーターが言った。


「まあねぇ。この子は規格外だよ。」


 そう言うと魔法の仕組みについて話始めた。

 魔法とは精霊から力を借りて発動する。大きく二種類あり、詠唱と魔道具である。詠唱は精神統一し呪文を唱えることで、精霊界とこの世界とを繋ぎ、さまざまな形で力を発揮する。一方魔道具はあらかじめ物に精霊界の力を蓄え、発動するときには精神統一と詠唱とを省略できるのである。


「しかし、この子は精霊界の力を易々と呼び出してしまうんじゃよ。だから集中する必要もないし、簡単な詠唱だけで魔法を使えてしまうんじゃ。」


「な、それじゃこいつ、じゃなかった、シオンは大魔法使いってことなの?」


「いやいや、そうとも言えないんだよ。シオンを育てたジャックはこの子にあまり実戦的な魔法の使いかたを教えていないんじゃ。魔法を使えるけど使い方を知らない。この子が可愛かったんじゃろ。争いに巻き込まれないようにとの配慮だったのだろうが、最低限の護身用の魔法と、あとはこんな戦闘に向かないような魔法の使い方ばかりでな」


 そう言って石の天井を指さした。


「おそらく城を落とした敵は魔王配下の魔物たち。これからは魔物との戦闘も考えられるから、私がシオンに戦闘向きの魔法を教えていくからね」


「え、そんな、私が戦うの?やだな~。私、痛いの嫌いだし、おっかないし、ママが戦ってよ」


 シオンの訴えたが、ダメ、とマリアに一刀両断された。

 その後、現状の再確認が行われた。

 数か月前、魔王の魂を封じた珠が盗まれたこと。そのことで、ジャックとマリアが王城へ呼ばれていたこと。マリアが遅刻したこと。マリアの千里眼で本来結界が張られているはずの王城に魔物の姿が見えたこと。魔王の復活が近く、これから周辺に魔物たちが勢力を伸ばしていくだろうことが説明された。


「魔王って、昔、ママたちがやっつけたって言う、あの魔王のこと?」


「そうじゃよ、あの魔王だよ。正確には私たちは魔王を滅ぼすことが出来なかったんで、魔王を封じることにしたんじゃ。封じた珠は王都の地下深くに安置されて、その周囲にジャックが魔物が入れないように結界を張っておったんじゃが、それが破られてしまったようじゃ。これから魔物たちは勢力を増すだろうから、私たちもそれに対抗する手段を考えなくてはならない」


 マリアは真剣な顔をして言った。


「そのために、まずは西のエルフの里を目指すんじゃ。あそこには先の大戦で私たちと共に戦ったエルフの戦士、シュレッドがいるはずだからの」


「シュレッド・アスリー、あの5英雄の一人とも会えるんだ!やったぜっ」


 ペーターはマリア以外の英雄と会えることに喜んだ。


「いやいや、私たちは英雄なんて呼ばれているけど、そんな大層なもんじゃないんだよ。私たち5人じゃとても魔王のところまで行けなかったが、王国と周辺諸国が協力して陽動してくれたおかげで魔王を封印できたんじゃ。本当は皆が貴ばれなくてはいけなかったんじゃが、国王としてもその後の復興のためにシンボルが欲しかったんじゃろ。どうしてもと言われて『英雄』になったんだよ」


 それでも、とペーターは褒めたたえたが、マリアはやれやれと返した。

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