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町です

戦士を助けたシオンは町に到着した。宿を取ると町に出かけるのだが・・・

「すいません、今晩泊めてください」


 町唯一の宿屋へ入ると、カウンターにいた女性に話しかけた。女性は30台半ば、この宿屋のおかみさんだった。


「いらっしゃい、お嬢ちゃん。今晩だね、お部屋空いているよ。それで何人で泊まるんだい」


 シオンの後ろから扉まで見たが、少女一人以外だれもいなかった。


「一人です」


「おや、まあ、お嬢ちゃん一人かい。おうちの方はどうしたの?」


「一人でお使いに来ているんです。それに、私、14歳で子供じゃありません」


 シオンがそういうとおかみさんは困り顔をした。

(14歳って、どうみても子供だけど、ここで帰してしまったらほかに泊まるところないし、しょうがないか)

 そう考えると、


「はいよ、分かったわよ。お嬢さん一人でお泊りですね。一晩3000イェンになるけど、お金はありますか?」


 と答えた。

 シオンはショルダーバッグからがま口の財布を取り出した。財布の中には銀貨、銅貨のほかに、道端で積んだ花や、セミの抜け殻などが詰まっていた。その中から1000イェン銀貨3枚を取り出した。


「これでいいですか?」


「はいよ、たしかに3000イェンいただきました。では2階の一番奥のお部屋をお使いください。夕ご飯が付きますが、何かご希望はございますか」


 おかみさんは銀貨を受け取ると、大人ぶっているシオンに合わせるかのように、丁寧に問い返した。


「えっと、お子様ランチがいいです」


 シオンはそう言うと、階段をあがり部屋へと入っていった。






「へへ、初めて来た町だ、どんのお店があるかなぁ」


 荷物を下ろしたシオンは宿屋をかけ出ると、スッキプをしながら商店街へと向かっていった。

 商店街の中央には広場があり、ちょっとして人だかりができていた。


「よってらっしゃい、みてらっしゃい。王都ではやりの大道芸だよ」


 人だかりの中央にはいかにも胡散臭そうな大道芸人が木箱の上に立ってしゃべっていた。


「さあさあ、こんな田舎ではなかなかお目にかかれない芸を披露してあげますよ。見るのはタダ!しかし、すばらしかったら是非ご寄付をお願いいたします」


 そういうと木箱の下に置いてある募金箱を指示した。


「それでは、まず最初にお披露目しますのはこの短剣を使ったジャグリングでございます」


「まずは一本、続いてもう一本」


 そういうと短剣を上方に投げ、追加していった。


「そしてさらにもう一本」


 三本の短剣を巧みに投げ上げ、落下してくるのをキャッチし、また投げ上げた。

 周囲からは拍手喝采が起きた。

 シオンは群衆の間を潜り込み最前列にやってきていた。

 芸も終盤になり、いよいよクライマックスになってきた。


「さあ、続いては火炎吹きでございます。これは大変危険ですので皆様はなれていてくださいませ」


 男はそう言うと右手にたいまつを持ち、左手に小瓶をつかんだ。左手の小瓶を口に運び、中の液体を口に含むとたいまつに吹きかけた。すると炎が吹き上がり、周囲に大きく広がった。悲鳴と歓声とが入り交ざる興奮状態に包まれた。


「みなさま、いかがでしたでしょうか。そこのお嬢ちゃん、どうだったかな」


 最前列で見ていたシオンに話かけてきた。明らかに称賛を求めていたが、


「今のなら、私にもできるよ」


 と答えた。

 大道芸人は求めていた答えと違う答えが返ってきて、一瞬きょとんとした。


「へっ、何を言っているのかな、お嬢ちゃん。いまのがお嬢ちゃんにできる訳ないじゃないですか」


 眉をひくひくさせながらも冷静さを装い、怒りで声が震えるのを押さえながら答えた。


「火ぃ吹くのならできるよ。やってみようか」


 シオンは大道芸人の感情などお構いなしに言った。周囲の観客は大盛り上がりで、「いいぞ、お嬢ちゃんやってみて」や「頑張って」などと言って囃し立てていた。

 それを聞いて、大道芸人は自分の芸を軽く見られたことに腹を立てどなった。


「よし、ならばやってみるがいい。もし失敗したら土下座してもらうからな」


 とても14歳の子供に向かって言う言葉でないことを言った。

 しかし、シオンは落ち着て、何をそんなに興奮しているのかわからない様子で人前に出て行った。


「じゃ、行きますよ」


 シオンは人差し指を立てた。一言二言つぶやいたかと思うと指に息を吹きかけた。

 するとどうだろう。指先から炎が燃え上がり、それがシオンの息にのって大きく広がった。その範囲は大道芸人の倍はあり、熱量も多かった。見た目が派手なだけでなく、シオンが息の量を調節すると炎の色は赤から青、白、緑と色々な色に変わった。

 観客はみなシオンを取り囲み、「すごい」だの「どうやったの」だの言い、大道芸人を気に掛けるものは一人もいなかった。

 その陰で、大道芸人は荷物をまとめ、


「ちっ、小娘め覚えていろよ」


 と呟くと、路地裏へと消えていった。

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