マリア・マンダリア
「この丘をこえれば城が見えてくるはずだ」
ゴーレムの肩に乗ったペーターが言った。
シオン達はストーン・ゴーレムのおかげで道中何事もなく王都へと進むことができた。道中、また盗賊に襲われないか危惧したが、二日後には王都の近くまで来ることが出来た。ゴーレムが一歩一歩力強く坂道を上り、その頂上へと着いた。
「げっ、なんだあの煙はっ」
三人が見たのは彼方に立ち上る多量の煙であった。
「王都が、王都が燃えている・・・」
ペーターは声を失った。
シオンとチッタも王都の方角を見ると同様に声を失い、呆然と見るしかできなかった。
「と、とりあえず行ってみようか」
シオンが気を取り直して言うと、後ろから声がした。
「いや、お待ち。城は陥落しておるぞ」
女性の声であった。三人は驚き後ろを振り向いたが、そこには誰もいなかった。
「今から行っても魔物に捕まるだけじゃ。一旦引いて策を考えねばなるまいな」
今度は頭上から聞こえた。慌てて顔を上げると、そこに箒に乗った初老の女性がいた。
「あ、ママっ!」
女性を見たシオンが叫んだ。女性はピンクのローブを着ており、頭にはピンクの尖がり帽をかぶっていた。
「シオン、お久しぶり。元気にしてた?」
そう言うと箒をゴーレムの肩と同じ高さまで下降させた。
「シオン、このおばさん誰なんだい?」
ペーターがシオンに聞くと、
「なんだい、この失礼な子は。私はマリア・マンダリア。シオンの知り合いよ」
「え、マリア・マンダリアって、あのマリア・マンダリア?」
ペーターは驚きの顔で見た。
「ええ、そうよ。あのマリア・マンダリア。ジャック・ジルスチュアートのお友達の」
「ジャック・ジルスチュアートってあの英雄の!? ってことはいったいどういうことなんだ?」
動揺するペーターを尻目にシオン達は一旦地面に降り立った。
一同は道端に座り込むとマリアが話始めた。
「いいかい、シオン。私が千里眼で王都をみたんじゃか、魔物の手に落ちておった。城も結界が破られて魔物たちの侵入を許しておる。今から行っても捕まるのが落ちじゃ。そこでこれからの策を検討しよう。まず、城にいる魔物を敵と認定する。敵の大将はまだ封印がとけてはおらぬが、魔王グリッドルフじゃろう。何しろ封印の珠が盗まれておるからな。そうなると周囲の魔物たちはここに集まってくるじゃろう。そこで我々は一旦この地域を離脱する。そして周囲の国や人族の者たちに働きかけ魔王を退治する。とりあえず今はそんなところかな」
「ママ、そんなに一気に話されると頭が付いていけないよ。よくわかんないからママの言う通りにする。二人ともいい?」
シオンは左右にいるペーターとチッタとを見た。
チッタは目を真丸くして、コクコクっと頷いていた(やはり状況を把握できていないようだった)。
ペーターは、
「別にいいけど、マリア様とシオンはどんな関係なんだい。こんなアホ助がマリア様と知り合いだなんでとても信じられないね」
疑いの目でシオンを見ていた。
「シオンは私の友達のジャックの子供ってことでいいんだよね?」
「うん、そうだよ」
と、シオン。
「そのジャックを通して知り合ったんじゃ。シオンはすごい子じゃよ。私たちなんかよりよっぽどすごい魔法使いになるじゃろうて」
「嘘だ~。たしかにこいつ魔法使うの早いけど、頭は抜けてるし、そうはとても見えないな」
「まぁ、おぬしにもいずれ分かる日が来るじゃろう、シオンのすごさが。しかし、当のシオンに全く自覚がないのが困りごとじゃかな」
話はこの後も続いた。
その結果、とりあえず西方に向かって進む。その道中で仲間になりそうな者を探しながらエルフの里を目指す。エルフの里の滞在が許されればそこを拠点とし、ダメだった場合は南下してドワーフを頼ることとする。
以上のことが決まると、シオン、ペーター、チッタの三人はゴーレムでは目立つので、シオンが呼び出したホワイトウルフに跨り、マリアは箒で低空飛行をして出発した。




