王都決戦
シオン達が山賊に囚われているころ、王都では。
「行けぇ、者ども、敵を片っ端からぶち殺せっ!」
黒いワイバーンに跨った武将が叫んだ。その足元には数百、数千というゴブリン、オーク、トロルなどの魔物がうごめいていた。魔物の集団の中ほどには攻城用のカタパルトが何台もあり、次々と巨大な岩を城壁目掛けで飛ばしていた。巨大な岩は城壁にあたるものもあるが、中には飛距離が足らず、魔物の上に落ちるものもあったが、魔物の集団は構わず襲い掛かった。
「射撃始めっ!」
対する王都側は城壁の上にずらりと並んだ弓兵隊が火の矢を一斉射出した。
攻城戦は頑丈な城壁と深い堀とで序盤は拮抗していたが、徐々に城壁が削られてくると防御側が劣勢になってきた。やがて堀も徐々に埋められ、跳ね橋の上がった城門にもまもなく魔物が到達しそうになった。
「いざ、撃って出ん」
白薔薇騎士団団長、ザッキーニが叫んだ。
跳ね橋の鎖が緩み、徐々に下がっていくのと同時に城門が開いた。中から王都随一の守備隊である騎士団が一斉に駆け出した。騎兵の突撃は目の前まで迫った魔物の集団を切り裂いた。中央を突破するとゆっくりを右手に旋回すると、城壁と平行になるように再突撃をした。騎士団のとおり過ぎた後は一時的に魔物のいない空間が出来たが、またすぐに後ろから来た魔物によって満たされてしまった。
騎士団の突撃は一時的に敵の侵攻を押し返したかのように見えた。しかし、突撃のたびに騎士もすこしずつ減っていき、やがて魔物の群れに飲まれてしまった。
そしてついに最初の魔物が場内に入ってしまった。
「ここからは先は通さんぞ」
場内にはハーフプレートと槍、盾で武装した青薔薇騎士団が待っていた。
「ファランクス、構えっ」
掛け声とともに騎士たちは前方に盾を突きだし、壁のようにし、その隙間から槍を出すとその陣形で敵に向かって歩みを進めた。
魔物たちは個別に襲い掛かったが硬い盾の守りに阻まれ、その隙を槍で突き刺された。ファランクスはじわじわと敵を押し返し、その後方からは投げ槍や、弓の曲射、魔法による支援攻撃が行われた。
場内の魔物はほぼ城壁まで押し返されたが、そのころには堀は大部分埋められてしまっていた。
ファランクスは正面の攻撃には強いが側面が弱いため、数が劣勢な状態では城壁の外へ出るのはためらわれた。
膠着状態を崩したのはサイクロプスだった。
魔物の後方にいたサイクロプスが前線まで上がってきていた。その巨体は兵士たちの遥か頭上まであった。サイクロプスは近くにいたゴブリンをつかむと、上からファランクスに投げ込んだ。上方に構えている盾は少なく、またサイクロプスの力によって投げ込まれたゴブリンは凄まじい破壊力を持っていた。一撃でファランクスの中央に穴が開いてしまった。続けざまに投げ込まれると前面の盾も、後方の支援も壊滅状態となってしまった。あちこちで前線を支えていたファランクスが破壊されるとゴブリン、オーク達小柄な魔物が一斉に街中になだれ込んだ。
街に入り込んだ魔物たちは一部は逃げ遅れた人たちを襲っていたが、大半は街の中央にある王城を目指した進軍した。
魔物達は城を囲む内堀まで近づいたがそこから先には進むことが出来なかった。城全体にはジャック・ジルスチュアートがかけた対魔結界が張り巡らされていた。
同時刻、王城の中では国王ロバース・セレネータを中心に家臣が集まり今後の行方を協議していた。その席に先日アントニーに声をかけられたジャックの姿もあった。
「わが友ジャックよ、城の結界はどのくらいもつのだ?」
王城の周囲には対魔物結界が張られている。かつての大戦の後、魔王を封印した珠が魔物の手に渡らぬように珠は王城の地下に安置され、ジャックにより王城全体が結界により魔物の侵入を拒んでいた。
「王よ、結界は大陸を流れる魔脈の上に作っているため、敵の攻撃で消耗してもすぐに回復します。あの程度の魔物では到底破ることはできますまい」
ジャックは自信ありげに答えた。
大地の下には魔力の流れる通路、魔脈が流れている。魔脈の付近では通常より魔力の供給が多く、より強い魔法が発動することが知られている。このセレネータ王国の王城はその真上に建てられており、そこに張られた結界は必然的により強固となっていた。多少ダメージを受けても地下からの魔力供給ですぐに修復され、まず破壊は不可能であった。
「皆の者よ、聞いたか、結界は破られぬ。親衛隊含め、城内の騎士たちは撃って出て反撃するのだっ」




