捕まっちゃいました
洞窟の中は迷路のように入り組んでいた。ひんやりとした薄暗い通路を男は右手、女は左手へと連れて行かれた。薄闇の中しばらく進むと開けた空洞に出た。空洞の奥には大きな鉄格子の檻があり、その中にはすでに何人もの女性が入れられていた。
「ほら、お前らも入れ」
案内役の山賊に促され、シオン達数名の女性が入れられた。
「お前たちは大事な商品だからな。おとなしくしてれば食料と水はやる。おかしな真似をしたらどうなるか保証はできないぞ」
そう言うと山賊は去っていった。シオンはビクビクしながらも檻の中を見回した。そこには泣き崩れている者や、あきらめて中空を見つめている者、無理を承知で鉄格子を引っ張る者など様々だった。片隅に5・6歳と思われる少女がうずくまってシクシクと泣いていた。それを見たシオンは近づくと声をかけた。
「ど、どうしたの?」
すると少女は泣きじゃくった顔を持ち上げた。
「お、お父さんが、お父さんが・・」
もうその先は声にならず、泣き出してしまった。シオンは困った顔をして少女を励まそうとした。
そこに空洞の入り口に光が揺らめくのが見えた。その光は徐々に近づくと檻の前まできた。
「お水を持ってきました」
入ってきたのは女性であり、そう言うと水の入ったピッチャーとコップを地面に置いた。聞き覚えのある声にシオンは振り返った。
「あ、チッタちゃんっ!」
シオンは少女を置いてチッタのところへ飛んで行った。
「チッタちゃん、チッタちゃん、また会えたね!シオンだよ。こんなところで何してるの?ここはどこなの?私たちこれからどうなるの?それからそれから・・・」
シオンはチッタに質問を投げかけた。
「え、えっと、その、シオンさんたちは捕まって、私はそのお世話を命じられて・・、その・・」
チッタがしどろもどろに答えていると通路の奥から声がした。
「おい、チッタ、なにしてやがる、早く来い、次の仕事が待ってるぞ」
それを聞くとチッタはビクッとして、
「す、すいません」
と言うとシオンの元を去っていった。
シオンはチッタの置いて行った水を飲んで一息入れた。
「ふぅ、怖かったけどチッタちゃんと会えたし、なんとかここから出れないかな。あの子のためにもなんとかしないと」
シオンは先ほどの少女を見た。
「まずはここを出る。この鉄の棒を魔法で吹き飛ばしちゃう。それからペーターを探して一緒に出る。いやいや、それじゃさっきの怖い人たちがやってきちゃう。そうするとみんなが迷惑をする。さすがに私もそこまでバカじゃないわ。先にペーターのいる所を探して、それからこの鉄の棒を・・・って、それじゃさっきと一緒か。うーん、どうしようか・・」
シオンは腕組みをして考え始めた。手から火や風、水、岩などを出して魔法の力を試してみた。
「うん、ここは土の力が強いね。じゃあ、まずノムさんを呼び出してペーターを探してもらおう」
シオンは両手を下向きに前に出し、ノムさんおいで、と言った。
するとシオンの両手が光輝き手の下に身長20cm弱のノームが現れた。
「ノムさん、ノムさん、ごきげんよう。えっとね、ペーターを探して来てほしいの。あ、ペーターっていうのはね・・・」
シオンが切々とペーターの人相を説明すると、ノームはにやりと笑うと左手の親指を立て去っていった。
周りにいた女性たちは目の前で起きた信じられない光景にあっけを取られていた。
その視線を感じたシオンは、
「あ、あの子は大丈夫です。やさしいノムさんです。危害はくわえません」
と、視線の意味を取り違えて答えた。




