Night.2
また同じ夢の世界だ。前と同じ景色が広がっている。
「戻ってきたのね」
「何故だか寝なければならないような気がして。おかしいね、起きたばかりだと思ったが。今日はよほど忙しかったのかな」
どうにも夢にしては明瞭すぎる頭で考えた結果だった。そんなことがあるかとは思ったものの。
相変わらず葬列は続いている。とは言っても大層なものではない。四人が棺桶を担いで歩いて、その後ろに数人が続いているだけのものだ。飽きもせず歩き回っている。
私はふと、この夢の中をここ以外全く知らないことを思い出し、少し散策してみようかと思い立った。どうせ、やるべき事などここにはないのだ。
みんなが同じ動きで風に合わせてゆらゆらと首を傾げる純潔の白。何も知らない彼らを踏みつける。私は現実では味わえぬ背徳感に酔い、ただ足を進めた。その足跡は鮮血の如き赤。彼らの苦しみの赤。私は気付かぬ振りをしてただ歩き続けた。
永遠に続くかと思われたそれは、突然終わりを迎える。一瞬地を見た目を上げると、そこには巨大な建物が、私を威圧するように立っていた。病院のように見えるそれは、冷え冷えとした無機質さをその大きく開いた口から放ち、今までの生の白とは全く違う異質さを持っていた。
私はそれが自分を呼んでいるかのように感じられ、その入り口に向かった。一歩足を進める事に威圧感は増し、嫌な汗が背を伝った。ようやくその引き戸に手をかける。酷く重いその扉を開くと、私がそこに見たのは唯の伽藍。
ほっとしたのもつかぬま、私は何も無い床で、滑るように後ろへと転倒した。スローモーションの動きで天井を仰ぐ。薄暗かったライトが急に眩しく感じられ、私の視界を遮る。薄れゆく意識の中で、行ったこともない病院への羨慕を思い出した。
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ソファで寝てしまった事を後悔した。変な姿勢で寝たせいで身体の節々が痛い。今日こそは布団までたどり着いてみせるぞと意気込む。
一日は一瞬かのように感じられた。部屋に戻った瞬間、私は意気込み虚しく床に見事に倒れ込み、そのまま眠りに落ちた。