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不完全な私達  作者: 紅井さかな
15/20

9,真相

閲覧ありがとうございます。

至らない点があるかと思いますが楽しんでいただけますと幸いです。



次の日、私は下校時間を狙って学校へ向かった。その人と話をするために。楓、樋口さん、田中さんは近くで待機していると言っていた。そして私に携帯を貸してくれた。「何かあったらすぐに行くからね」と。





昨夜はなかなか寝付けなかった。結局、楓の家にお世話になり、泊っていった。

犯人と話をしようとは思ったけど、その後はどうしたらいいのだろう。謝ってもらう?でも私は許せるの?もし許したら前と同じ関係に戻るの?もう関わらない方がいいのでは?向こうはそもそも何を望んでいる?いろんな考えが頭の中をぐるぐると回っていた。その時誰かが私のいる部屋のドアを叩いた。


トントン。


「ひなた、もう寝た?」

「楓?」

 私は少しドアを開けて様子をみる。

「何?」

「心配になってちょっと様子見に来ただけ。起こしちゃってたらごめんね」

「大丈夫。いつもありがとうね」


私はちゃんとドアを開けて楓の目を見た。お風呂上りだからか、楓のいつものふわふわの髪はストレートにしなっと、まとまっていて女性のように綺麗だと思ってしまった。

私の頭にふわっと楓の手が乗る。


「明日、絶対大丈夫だから」

そう言って微笑むと、私の頭をわしゃわしゃと撫でて行ってしまった。楓の言葉にスッと気持ちが落ち着いて行った。気が付くと私は眠りに落ちていた。夢は見なかった。





昨日の事なんて何事もなかったかのように、今日も学校はいつも通り佇んでいる。何事もなかったかのように楽しそうに下校する生徒達。きっと私が見ている世界と、彼ら彼女らが見えている世界はまるで違う。私には真っ暗な恐ろしい場所にしか見えない学校も、彼ら彼女らにはキラキラした青春の舞台でしかないのだろう。



犯人と思われるその人がこちらへ向かって歩いてきた。ドクドクと脈がうなって抑えられない。冷汗がでる。私は勇気を出して、その人に向かって声を掛けた。

「あの、話したい事がある」

「いいよ。じゃあ、近くの公園でも行こうか」


意外とあっさりした反応だった。その反応が本心の見えない彼女の怖さを引き立てていた。


公園に着くと彼女は可憐に、くるっとこちらを向き、可愛らしい笑顔を向けてきた。こんな状況でなければ、私が男なら、一瞬で恋に落ちてしまいそうな程だ。

私は軽く深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。



「……杏。画鋲の犯人も、毎日私の机に花を置いていたのも杏だったんだね」



そう。防犯カメラに映っていたのは杏の姿だった。



「何の事?この前はごめんっ。桃が怖くて逆らえなかったの。許して。私、ひなたが大好きなの。また仲良くしてよ。そうだ!新しいケーキ屋さん行こう?ひなたケーキ好きでしょ?」


やっぱり杏は本心が見えない。何がしたいの?それで言い逃れできると思ってる?

流されてはいけない。


「とぼけないでよ」

「何よ。証拠もないくせに私の事疑うんだ。ひなたってそんな子だっけ?今までいっぱい仲良くして来たのにひどい!!変な男の子と仲良くしてるからじゃないの?」

「そんなの今は関係ない。証拠ならちゃんとあるんだから」


私は携帯で防犯カメラの映像を杏に見せた。

「なんでそんな物持ってるの?こわーい。ひなた騙されてるんじゃないの?変だよ?」


杏は腕を組み、身体をぶるぶるさせ、怖がっている身振りをしている。

「変なのは杏だよ!杏、私の事嫌いだったんだね。仲良くしてくれた時は嬉しかったけど、本当は何が目的だったの?」


「前にも言ったじゃない。私はひなたが大好き」

「じゃあ何で」

「ひなたが悪いのよ」



杏が眉をひそめる。


「私は!私はね……話かけると笑顔で来てくれるひなたが好きだった。私がお願い事をすると何でも引き受けてくれて。私が辛かったら何でも変わってくれて。私が人気者になるための踏み台になってくれて。私に従順でいつも笑顔で側にいてくれて。そんなひなたが好きだった。ずっと側にいてくれるんだと思ってた。ひなたもこんな私の事好きでいてくれてるんだって思ってた。受け入れてくれてるんだって。でも何なの?桃や他の子にもいい顔して。私にだけ従っていれば良かったじゃない。だから嫌がらせしたのよ」


「そんな……」

私に話す隙を与えないくらい杏の話は止まらない。


「私がいくら嫌がらせしてもいつも笑顔でヘラヘラして。杏助けてって泣いてすがって欲しかった。杏だけだよって言って欲しかった。許せなかった。だから桃とひなたを引き離すために画鋲を入れたの。ひなたが自分でポケットに画鋲を入れるとは思わなかったけど。そして、大河にも近づいた。桃と大河が良い感じなの知ってたし。使えると思って。それに大河はさ、桃が好きとか言いながら、ひなたと桃の事見間違えるし、私とも付き合うし、本当にクズだよね。桃本当、男の趣味悪い。すっごく笑わせてもらった。


先生と梢の仲も私は知ってて使えるなってずっと様子見てたの。でも梢が勝手にひなたに対して暴走してくれてさ、あの子こういう面でも優等生だなって思っちゃった。


皆私からひなたをとったから!ひなたが他の人にも優しくするから!あんたなんかずっと一人でニコニコ笑っていればよかったのよ!人形なんだから!全部ひなたが悪いのよ」


私が悪いのか……?


杏がそんな風に考えていたなんて初めて知った。大河と桃の事情もよく知らない。私と見間違えた?

感情が込み上げてきて胸がグッと苦しくなる。私も杏が好きだった。私に親切にしてくれた杏が好きだった。友達だと思っていた。


でもこれは何か違う。


「そんなの狂ってるよ。……私はずっと泣いてたよ。表情は必死で笑顔を作っていたけど心の中では泣いてたよ。そんな時、杏の優しさに救われた。私も杏が好きだったよ。でも私は人形じゃない。人間なんだ」


杏は淋し気な、泣きそうな表情で遠くを見ていた。


「ひなた、変わってしまったよね。笑わなくなったもの。私は人形遊びが好きなの。人間らしくなったひなたなんて嫌いなのよ。大嫌い。あの男のせいなの?あのカフェであった時、ひなたが大人しくあの男紹介してくれれば良かったのに。そしたら簡単に壊せたのに。こんな事にならなかったのに!」



こんなに杏は取り乱しているのに、これが杏の本心かと思うとどこか安心した。杏も自分を取り繕っていたのか。必死に人形で居る事が前の私の生き方だったように、杏もこうしていなければ自分を保てなかったのかもしれない。



「嫌いでいいよ。これが私なの。これが本当の私だった。楓には沢山助けてもらったからね。でも私が自分で選んでここに居るの。人間だから」



「許せない!!私のひなたをかえして!!」


杏はポケットからキラッとする物を出してこちらに走ってきた。涙を流しながら。


そして私は現状が上手く理解できない。杏は何を持っているの?



……ナイフだ。……どうしよう!逃げなきゃ!!私はここで死ぬのか?




「ひなた。大好きだったよ。バイバイ」








最後まで読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価よろしくお願いいたします。

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