5.5 東原 大河(ひがしはら たいが)
閲覧ありがとうございます。
至らない点があると思いますが楽しんでいただけますと幸いです。
俺の名前は東原大河!皆からは「お調子者」とか「ムードメーカー」って言われてる!でも俺、自分で言っちゃうけど、めっちゃ面白い性格だと思うんだよね。顔もまぁまぁイケメンだし!身長もそれなりに高いし、羨ましいだろ!
そして俺はずっとずっと好きだった。北村桃に今告白されている。
「ウチ、ずっと大河くんの事が好きだったの。ウチを大河くんの彼女にしてください!」
「俺もずっと桃の事好きだった」
桃は少し泣きそうな顔で頬を赤らめて告白してくれた。その姿は俺が今まで見てきた桃の中で一番に最高に可愛かった。
桃との出会いは高校一年生の時だった。初めて見た時から「可愛いな」って思っていた。同じクラスなのになかなか声が掛けられなくてあまり関わることが出来なかった。何も思ってない女子には無駄に絡みに行けるのに、このお調子者の俺は、本当に好きな子には自分から話しかけられない程にシャイだった。時々目が合うと笑いかけてくれるから嫌われてはいないと思う。そんな微かな希望を胸にずっと片思いしていた。
二年生になり、クラス替えがあったが、運よく俺は桃とまた同じクラスになった。俺は神様に愛されている。神様、ありがとう。でもこのままではダメだと思っていた。いくら俺がイケメンでも、話したことはないし、桃には男友達が多そうだから。俺が知らないだけでもしかしたら彼氏が居るのかもしれない。だったら、好きな子の幸せを優先するのが真のイケメンなんじゃないか?ずっとグルグルそんな事を考えて動けずにいた。
そんなある日、俺は体育の授業の途中で倒れた。朝から熱があったが、今日購買で限定のプリンが発売になるから、どうしても欲しくて我慢して学校に来ていたのだった。
気づくと保健室で寝ていた。限界が来ていたようだ。頭が痛い。意識がもうろうとする。
ガラッ。保健室のドアが開いた。足音がこちらに近づいてくる。
「あの、これ先生に頼まれて……大丈夫?」
女子の声だ。俺が寝ているベッドの横まできて、スポーツドリンクを差し出てくれた。
「……ありがとう」
その子はすぐに走って行ってしまった。熱で意識がもうろうとしていたのと逆光で顔が良く見えなかったが、ポニーテールの揺れる後ろ姿は桃だったと思う。その日俺はそのまま早退した。
弱っていた俺の心は完全に掴まれた。シャイだとか言っている場合ではない。俺はイケメンだ!自信を持つんだ!そう自分に言い聞かせて後日桃に声を掛けた。
「今日もし暇なら、暇だったらで良いんだけど、一緒に帰らない?」
桃は驚いたのか目を見開いていたがすぐに笑顔で答えてくれた。
「いいに決まってんじゃん!」
それからはすぐに桃との距離は縮まっていった。連絡先も交換したし、気軽に話しかけられるようになった。桃の方からも時々遊びに誘ってくれるようになった。告白こそまだだったけど周りからは「お前ら付き合ってんの?」と冷やかされる程、仲は良かったと思う。桃もまんざらではなさそうだったから安心していた。
一緒に帰っていた時、桃のすぐ横を自転車が通った事があった。俺はとっさに桃の手を掴んだ。
「危ないっ!」
「きゃあ!」
「あの自転車あぶねぇな!大丈夫?」
「大丈夫……大河くんが守ってくれたから」
桃はそう言ってうつむいていた。表情は良く見えなかったけれど、俺の手をギュッと握り返して離さなかった。俺は嬉しさと、恥ずかしさで死にそうなくらいドキドキしていた。ニヤつきそうな表情を必死で抑えていた。ここでニヤついたらせっかくのイケメンが台無しだ。俺達はそのまま手を繋いで帰った。
桃に告白しよう。これはいけるんじゃないか?俺は寝る前に天井を見ながらそんな事を考えていた。
だが次の日、急展開を迎える事になってしまう。
全く別の女子に俺は告白された。しかもその子は可愛い。桃とは違うタイプだけど男子の中では結構人気がある同じクラスの子だ。モテる男はつらいぜ。可哀想だが俺は桃が好きだったから断ろうと思った。しかしそう、うまくは行かなかった。
「あのね、大河くん。私と付き合って欲しいの」
「……気持ちは嬉しいんだけどごめん。俺好きな子いるから」
「知ってるよ。北村さんでしょ?」
「知ってたんだ……じゃあ、何で……」
「それでもいい。二番目でもいい。北村さんとは正式に付き合っていないなら、私と付き合った後にこれから付き合ってもらっても全然かまわない。北村さんを優先していいし、必要な時だけ呼んでくれてもいい。私何でもするから。私はそれでもいいから大河くんの彼女になりたいの。……ダメ?」
なんっておいしい話なんだ!俺の理性が勝つことはなかった。俺はその子と付き合う事になってしまった。桃と一緒に帰って、その後の空き時間に彼女を呼ぶ。まだ桃に出来ない事を彼女としていた。自分でもクズだと思っていたが、男の理想を詰め込んだこの状況を辞める事が出来なかった。桃との仲の良さは変わらなかったが、自分から告白しようという思いは遠のいていっていた。
そんなある日、彼女からある提案をされた。
「私、北村さんと仲良くなりたいの」
「何言ってんだよ?」
「いいでしょ?これくらい。たまには私の願い事も一つくらい聞いてよ。北村さんには私たちの関係、絶対に内緒にするし。いいでしょ?」
「……考えておく」
彼女は何を考えているのだろう。俺が馬鹿だったからこんな状況になった訳だけど、今更後悔し始めた。
そんな中、画鋲事件は起きた。こんなに怒っている桃は今まで見たことがなかったし、よっぽど傷ついたのだろう。俺はこんなのだけどやっぱり桃が一番好きだった。桃の笑顔を壊す奴は俺が許さない。相手が女子だろうと。だから俺は人形が消えるように皆に「帰れコール」を促した。人形は彼女と時々、仲良さそうにしていたから彼女の様子も気になったが。俺はこの時余裕がなかった。感情を抑えられなかった。
まさか人形から殴られるとは思っていなかったけど。イケメンの俺を殴った罪は重い。絶対に許さない。ブスのくせに。でも結局、桃にかっこ悪い所を見せてしまった。女に殴られるなんて。完全に油断していた。幻滅されたかな……。彼女に慰めてもらおう。でも彼女も怒ってるかな。
しかし、驚いたことに放課後、桃の方から「一緒に帰ろう」と声を掛けてくれた。俺は凄く嬉しかったけど彼女の視線を感じた。チラッと見ると不服そうな顔をしている。
「あーえーっと、ごめん。用事あるんだ。あ、そうだ。こいつと帰れよ!またな」
俺は桃と仲良くなりたいと言う彼女の願いを思い出し、促してその場を立ち去った。彼女これで機嫌直してくれるかな。俺は本気で後悔し始めた。あー、桃ともっと一緒に居たかった。誘われて嬉しかったのに。こんな状況がいつまでも続くはずはないんだ。桃と付き合うなら、やっぱり彼女と別れなくちゃ。イケメンだからって俺、遊び過ぎたわ。彼女と別れよう。俺はそう思った。
次の日、彼女は桃と仲良くなれたと嬉しそうにしていた。俺が人形にしてしまった事については怒っていなさそうだ。
そんな彼女に俺は別れを告げた。
「ごめん。別れて欲しい」
「なんで?私は別れたくない」
彼女は泣きそうだった。
「お前には悪い事したと思ってる。でもやっぱり桃が一番好きなんだ。桃だけを大切にしたいから。ごめん」
「そうなんだ。よかったね。桃も大河くんが好きだって言ってたよ。だから今ここで大河くんの寝顔の写真、桃に送っちゃおうかな!」
「やめろよ!何でそんな事するんだよ」
「酷いのはどっちよ。私は最初から二番目でも二股でも良いって言ってるのに。だったら最初から付き合わないでよ。別れるって言うなら今すぐ、桃に送るから!」
「わかったよ。わかったから、落ち着いて」
お俺はとんだメンヘラに掴まってしまったようだ。
いや、でもこうなったら、とことん楽しんでやろう!利用されるより、してやるぜ!何があっても離れていかない彼女なんて最高じゃん!!そうやってポジティブに切り替えられる所も俺のいい所!
そして俺は今、ずっとずっと好きだった、北村桃に告白されている。
「ウチ、ずっと大河くんの事が好きだったの。ウチを大河くんの彼女にしてください!」
「俺もずっと桃の事好きだった」
桃は少し泣きそうな顔で頬を赤らめて告白してくれた。その姿は俺が今まで見てきた桃の中で一番に最高に可愛かった。
そして桃と付き合う事になった。桃には彼女が居る事は内緒だが、彼女には桃の事を話した。彼女はすごく喜んでくれた。
「大河くんが幸せなら、私も幸せだよ」
そう言っている彼女の笑顔もまた、最高に可愛かった。
彼女と桃は仲良くなり、俺は二人と付き合っているという、変な三角関係が始まってしまった。
彼女の名前は南田杏だ。
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