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不完全な私達  作者: 紅井さかな
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序章

この度は閲覧してくださりありがとうございます。

初めての投稿になります。表現の仕方や書式など至らない点が沢山あると思います。自分の表現したい事がうまく出来ずまだまだもどかしいですが暖かく見守っていただけますと幸いです。



私の思いが誰かの心に届くことを願って。

 私は人形だ。


 父や母にそう言われて育てられたからだ。幼い頃からずっと父や母の言う事を何の疑問も持たずに聞いてきた。意見を言えば怒られるから、言う事を素直に聞けない私が悪いのだと自分を責めて来た。父と母に喜んで貰えるように、認めてもらえるように私は必死で、勉強も立ち振る舞いも頑張った。人形らしく頑張った。


 学校ではクラスメイトからの頼みごとを何でも聞く。ここでも私に意見を言う義務はない。私が「こうしたい」と意見を言えばやはり皆不機嫌になる。だから私は皆に言われる事を笑顔で答える。そうすれば皆も笑顔で居てくれる。それもやっぱり私が悪い事をしているからそうなるのだと自分を責めていた。

それで充分なはずなのに、皆が笑ってくれれば幸せなはずなのに、私は時々胸が痛くなる。誰かに心臓を握りつぶされているかのように苦しくなる。


 怪我をしても「大丈夫」と答えていた。熱があっても「大丈夫」と答えていた。自分は人形だから何があっても大丈夫だと思っていたのに、いつしか身体が重くなって、起き上がる事さえも困難になって、どんどん人形らしく居られなくなっていく。皆を笑わせなくちゃいけないのに。楽しませなくちゃいけないのに。困っている人が居たら変わってあげなくちゃ。苦しんでいる人が居たら変わってあげなくちゃ。だって私は人形なのだから。


 もしも人形で居られなくなったら私には何の価値があるのだろう。灰になって消えるしかないのだろうか。すぐに忘れられてしまうのだろうか。


 人形として生きる事と、灰になって消える事、私自身にはどっちの方が価値があるのだろう。


 私を一番苦しめているのは私自身なのかもしれない。私の心を一番抑え込んでいたのは私かもしれない。私には人形として生きていくにはもう限界だった。だから私は人形としての自分を灰にする事を選んだ。私が灰になった所で、悲しんでくれる人がいない事は目に見えてわかる。私が居なくなった事実よりも、自分の身代わりになってくれる人が居なくなった事に皆、嘆き悲しむのだろう。私が「灰になろう」と言うまで私の声に耳を傾けてくれる人は居なかった。人形だからと、何でも押しつけて来た。自分が楽になりたいからと、私の事を犠牲にしてきた。優しい人なんてどこにも存在しなかった。ヒーローなんて本の中にしかいない。だから私は灰になる。自分のために灰になる。これが自分の為にしてあげられる最高の贈り物だと思っている。これ以上他人の為の人形で居たくない。


 これは、人形として生きて来た私が人間になるまでの物語。


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