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悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
幕間 悪役令嬢の休日
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1.気分転換

 今回はハードだったからちゃんと静養しなくちゃダメですよ、とルカに怖い顔で諭され、わたしは連勤をあきらめた。


 ルカがああいう真剣な顔をするときには言うことを聞いておいた方が良い。ルカだってわたしの魂が疲弊しないよう気を配ってくれてるのだろうから。

 もちろんわたしだってクリアされるのはご免だ。まだまだ派遣〈悪役令嬢〉を楽しみたい。わたしはまだまだできる。


 でも、静養と言われても何もすることないのよね、わたしってば無趣味だから。


 最近できた温泉施設がいいらしいですよーとおススメされて入口まで行ってみたけど、いかにも庶民な女子の集団がきゃっきゃやっていたので、げ、と思って回れ右した。


 静養って心静かに過ごしなさいってことだろうし。ひとりで部屋でごろごろしてるだけじゃダメなのかしら。

 ダメらしかった、気分転換にならないでしょうと言われた。気分転換か。


 仕方ない、たまには街に出てみよう。

 明るい茶色の縦ロールの髪に水色のリボン。レースの大きな襟が付いた水色のワンピースに茶色の編み上げブーツ。

 本来の姿で出歩くのは久しぶりで、こっちの方が新鮮である。これなら立派に気分転換でしょう。


 寮舎を出てあてどなく道をぶらぶら歩く。閑散とした通りばかりを選んでいると街はずれの庭園に辿り着いていた。

 緑のものを眺めながら散策なんてとってもリラクゼーションっぽい。


 よく手入れされた芝生の間の歩道を進んでいくと、正面に大噴水があって歩道は四方に分岐していた。右手は大階段につながっている。

 階段の両脇のバラの生け垣にひかれてわたしは右へと進んだ。


 バラはみんなピンク色で可愛らしかった。ええ、可愛い可愛い。ふわふわゆるゆるなヒロインに似合いそう、と思ったら、握りつぶして踏みつけてやりたくなった。

 環境破壊はいけないわ、と足早に階段を駆け上がる。


 上りきった先も芝生の広場で、円形に続く歩道の右手にはつるバラが絡みついたパーゴラのトンネル、左手には白い東屋が見えた。


 トンネルを見るとくぐりたくてうずうずするなんて子どもっぽいかしら、と考えつつ、パーゴラの方へ足を向ける。赤とオレンジのバラに葉っぱの濃い緑という配色はなかなかシックでセンスを感じた。

 うん、リラクゼーション。


 それにしてもひとっこひとりいない庭園は果てしなく広々と見える。黄緑色の芝生は整えられすぎているようにも。

 むくむくと、新雪を汚してやりたいのと同じ気持ちがわいてきた。


 歩道をはずれ、ブーツの底で柔らかな芝生を踏みつける。ぽすっぽすっと音がしそうな柔らかさだ。歩くだけなんてもったいない。

 芝生にじかに座るだなんて令嬢としてはあるまじき行為だが、今は職務外でわたしは自由だ。

 そうよ、派遣先の令嬢生活ではできないようなことをするのはすごい気分転換になりそう。


 わたしはスカートの裾を押さえながら芝生に腰を下ろし、それからこてんと仰向けに寝転がってみた。

 日差しがまぶしい。日よけがないのはいけないわ。でも実行した以上、もう少し令嬢ではできないことをやっておかねば。


 人目がないのをいいことに、少し大胆になったわたしは、そのまま芝生の上をごろごろ転がってみた。目が回っただけだった。

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