表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
第二話 中華乱世の悪役令嬢
75/84

42.決起の朝




 朝、まだ篝火がたかれた宮殿の正門前では見張りの兵士が眠そうに目をこすっていた。

 次の瞬間、飛来した矢に首を射られ、兵士は真横に倒れた。

 敵襲を察した他の兵士たちが晒し台を取り囲む。城門の上の鐘楼では弓兵が矢をつがえる。


 朝靄を分けて光が差し込む大通りに武装の一団が姿を現した。

 甲冑の将兵から農具や木材を手にした都人まで。戦うという目的だけで固く結ばれた叛乱部隊だ。


 同時に、都中では富裕層の屋敷を狙って次々と襲撃が起きていた。

「ここだ! この屋敷には食べ物がたくさんある!」

「こっちもだ! ここの家令が豆を買い占めていたからな」

 子游しゆうたち救済園の手の者が煽り、日々の貧しい暮らしに耐えに耐えていた人々は、武器になるものを手に取りここぞとばかりに怒りを爆発させた。


 脱出しようとしても馬車も襲われ、貴人たちは逃げ惑う。彼らが抱えた私兵は主人の警護に手いっぱいで、わざわざ宮殿に駆けつけはしないだろう。


 今の宮中に余剰戦力はない。外から駆けつける援軍ももちろんない。宮殿の閉じた正門を前に、突撃隊を率いたわたしと公子は頷き合った。


 盾を手にした自警団員を前列にして広場へと進む。

 鐘楼から矢の攻撃が始まった。日々鍛錬に励んでいた自警団員たちは上向けた盾を隙なく組んで矢を防ぐ。


 盾の陰で〈気〉を練り上げていたわたしは、飛んでくる矢が途切れた瞬間、短く叫んだ。

「いまっ」

「下ろせー!」

 盾の防壁が消え、開いた視界の真正面に城門上の鐘楼。また矢をつがえた幾人もの弓兵たち。

八相星剣はっそうせいけん!!」

 馬鹿の一つ覚えの必殺技を食らいなさい!


 わたしがふりあげた手のひらから金の光が広がり、出現した黄金色の八本の剣は、倍の十六本、更に倍の三十二本になって鐘楼の弓兵へと襲い掛かった。

子豫しよさま、すげえ!」

 自警団員の皆が口々に褒めてくれたけど、これがわたしの限界、あとはもう何も出なくてよ、おっほほほ。


 実は殺傷力はそれほどないわたしの唯一の技は、見た目のインパクトは抜群なので鐘楼の弓兵らを封じるには十分だ。

 敵の混乱に乗じて、武器を手にした近接メンバーが飛び出し広場の兵士たちへ攻撃を開始した。


 斬りかかる、薙ぐ、突く、叩く、蹴る。乱戦の中、宮殿内の兵士が応援に駆け付けようと正門が開かれる。

 馬鹿め、これを待っていたのよ。


「城門をこじ開けろ! 行け! 行け!」

 怒号をあげて叛乱部隊は突入していく。

 慌てて内側から城門が戻されようとしたけれど、もう遅い。城門内に侵入したメンバーは勢いを止めずに宮殿の兵士を切り崩して正殿を目指す。


 それを見送る形で広場の敵兵を掃討した毅公子は、ようやく、晒し台の芝嫣しえん姉さまと向き合った。

「待たせたな、芝嫣。もう二度と離さない、ずっと一緒だ」


 さようなら、姉さま。

 芝嫣姉さまをかき抱く毅公子の背中に挨拶してから、わたしも宮殿内へと駆け込んだ。


 公子に頼るのはここまでだ。ここからは、おいしいところは全部わたしがいただくのよ、くっくっく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ