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悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
第二話 中華乱世の悪役令嬢
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36.破滅の入口

 芝嫣しえん姉さまの話を聞いて、なるほどね、と私は納得できた。

「安心してください。芝嫣姉さまは魅力で負けたわけじゃないですから」

「どういうこと?」


「気功術です。清蓉せいようは〈気〉を使ってえい公子の関心を引き寄せたのです」

「え、気功術で心を操ったの?」

「そんな呪いのようなことはできません。でも、勘違いさせることは可能です」

 例えば、と私は姉さまに説明した。


 向かい合っているときに血行が良くなるように〈気〉を送る。すると脈が速くなり、顔が熱くなり、頭がのぼせたようになる。

「胸が早鐘を打つように高鳴って、それを恋だと勘違いするんです」

 芝嫣姉さまは干しイチジクをつまみながら胡散臭そうな顔をしてるけど。実際そんなものなのだ。


 あるいは、体を寄せて相手がリラックスするような波長を送る。すると一緒にいると安心できる、癒される、となるわけだ。

「でも確かにそうね、清蓉といるときの叡公子はいつもぼんやりしているの。夢見心地というか」

 桂芝けいしが持ってきた布で手を拭きながら芝嫣姉さまは「ふう」と肩を落とした。

「小細工で負けたにせよ、叡公子が心変わりなさったのは事実よ。がっかりだわ」

「姉さま」


「寵愛がなくても王后おうごうにはなれるけど、それって癪よね。でもいいわ。わたしがいちばん王后の衣装が似合うのだもの」

 ブレない芝嫣姉さまには頭が下がる。けど、どうやら無事に(?)破滅ルートに入ったようだし、そうなると芝嫣姉さまは王后にはなれないだろう。その前に婚約破棄の断罪イベントが起こるのがセオリーなので。


 だが今回の物語に限っては、この国そのものが滅びるシナリオが見えている。淑華しゅくか姉上が思い描いたようにそう家が覇権を握ったなら別のルートが開けたのかもしれないが悪役令嬢わたしが存在する以上その目はなかったわけで。


 遅かれ早かれは滅亡する。悪役令嬢の断罪と国の滅亡、その因果がどんなふうに絡まって、どういうタイムスケジュールでストーリーが進むのか、気になるところだ。


 淑華姉上がいない今、悪役令嬢姉妹として役割を全うするためにどうすべきなのか。このまま芝嫣姉さまを矢面に立たせたままでいいものか。陰謀を秘めたヒロイン清蓉は、わたしたちにどんな罪状をかがげてくるのか。


 ……結局、ここまできてもまだ戸惑ったままだったわたしは、すぐに猛省することになる。

 でもこのあと起きた出来事こそ、この乱世の物語に必要不可欠なイベントだったのだ。

 わたしが、望んで挑んだ、乱世の物語の。

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