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悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
第二話 中華乱世の悪役令嬢
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26.なんだこれ



 それから数日のうちに赬耿ていこうこうへと戻っていった。

 そう家引き込みの隠密行動はことごとく失敗で、大目玉を食らったりしないのかしら、少しは痛い目にあえばいいのに、と呪わしく思う。


 だが、赬耿ていこうと話したことで改めて考えた。

 俺にもできる、と赬耿が決意したことは父上にも可能なのだ。

 出自と実績と実行力。父上にはすべて揃っている。だからこうは父上を囲い込もうとしているのだと納得もいく。


 しかし周囲の警戒はどうあれ、父上が自分で王になることはない。ひたすら主君を助けようとする、父上はそういう方だ。

 ならばせめて宰相に、と淑華しゅくか姉上が切望する気持ちもわかる。

 父上が国の采配を振ればは再興する、父上の栄華はここに極まる、姉上はそう夢見ているのだろう。


 ――それは姉たちもか?

 あっけらかんとしている芝嫣しえん姉さまはともかく、淑華姉上の考えは気になる。ひとりで思い詰めてしまうところがあるし。


 さりげなく姉上と話ができないものかと考えていたある夜。

子豫しよお嬢様! たいへんです、いらしてください」

 芝嫣姉さまの侍女の桂芝けいしが私の部屋に駆け込んできた。何事?


 連れていかれたのは淑華姉上の部屋で、そこでは目を疑う光景が繰り広げられていた。

「恥を知りなさい、棕淑華! 正気を疑うわ。天子の王后おうごうになると息まいてたくせに、なんて恥知らずな真似を」

「わたくしだって、どうしてこんなことになったのか、わからないのよ。自分で自分がわからない……」

「はあ? ふざけないでよっ、情けない。こんな女がわたしの姉上だったなんて。あんたのせいで父上は面目丸つぶれよ、わかってるの!?」

「……っ」


 なんだこれ。芝嫣姉さまに叱責されて淑華姉上がさめざめ泣き崩れている。いつもと立ち位置が逆だ。

「えーと……」

「子豫! 聞いてよ!」

 私を見るなり芝嫣姉さまが飛びついてきた。

「淑華姉上ったら、蔡怜さいれいと密通してたの!」


 みっつう。

 目を見開く私の目の前で淑華姉上はわっと泣き崩れる。

「泣きたいのはこっちよ! 棕家の栄達とか自信満々だったのはあんたじゃないっ。それをぜんぶ台無しにして……!」

 じんわりと目に涙を浮かべて芝嫣姉さまが黙ると、その場はシーンと水を打ったように静まり返った。シクシクと涙する淑華姉上の嗚咽が聞こえる。


「とにかくまず、人払いを。子宇しう、桂芝。しばらくの間近くに誰も近づかないよう周囲を見張って」

「はい」

橘花きつかも……」

 床に蹲ってしゃくりあげている姉上の背中をさすっていた橘花が、不安そうな表情のまま顔を上げる。

「戸を閉めて、誰も通りかからないよう外で見張って」

「はい……」


 侍女たちがいなくなり姉妹三人だけになったところで、私はさて、と姉たちを振り返った。

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