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悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
第二話 中華乱世の悪役令嬢
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16.三人で〈悪役令嬢〉




 足を前後に開き、腰を落とす。右手に持った剣を構える。

 一陣の風に乗って竹の葉が空中を滑ってくる。つま先で踏み切り、剣を横に薙ぐ。葉っぱに一閃。

 そのまま手首を回して縦横に空を斬りつつ衣の裾をなびかせ体をひねってジャンプする。

 交差させた腕を広げ剣の軌跡で弧を描きながら着地。すぐさま踏み込み前方を突く。


 ひとしきりのモーションを終え肩を下ろすと、横合いから拍手を送られた。

「父上!」

 朝議からの帰りらしく官服のままの父上に向かって、剣を下げたまま胸の前で両手を組み兵士たちがするような礼をする。

 父上は目尻にシワをためて苦笑しながら私の頭を撫でた。


「朝稽古か? 今日は忙しいだろうに」

「私には関係ないもの」

「おまえが姉たちを助けなければ」

「それはそうですね。おっしゃるとおりです」


 剣先を上向けて逆手に柄を持った腕を背中に回したまま、片方の腕を前に出し、やはり男性がするような礼をすると、まったくおまえは、と今度は頬を摘ままれた。

 父上が末っ子の子豫しよをまだまだ幼子のように扱っているのがよくわかる。承知のうえで私もそう振る舞っているわけだが。


 幼い頃の子豫はそれは天真爛漫で、ライザ(わたし)の転生とは思えない善良で快活な幼女だった。

 ライザももし、今生のように深くおおらかで暖かい父親の愛情に包まれて育っていたなら、あんな意地悪な女の子にならなかったのではと思ってしまうほど。

 なので七歳でライザの記憶が戻ってからの〈調整〉に苦労したのも初めてだった。子豫らしさを残しつつ、わたしらしさを徐々に表して行動しやすくしていかなければならなかったから。


 いまだ本調子でないというのが正直なところで、まるでわたしらしさを発揮できていない自覚はあるのだ。大好きないじめだってやっていない。だって、いじめたい相手がいないのだもの。

 相手が少しでも反抗する気配を見せれば容赦なく叩き潰す淑華しゅくか姉上や、鼻につけばだれかれかまわずケンカする芝嫣しえん姉さまとは違うのだ。

 わたしがいじめるのは正ヒロインだけ。となれば、ターゲットであるヒロインとまだ出会えていないということだ。


 はじめは、姉妹間で敵味方となることを予想した。姉妹格差やそれが原因の愛憎、闇落ち、寝取られも、物語の定番だし、淑華姉上にヒロインの片鱗が見えることもあったから。

 しかし淑華姉上が予言をいいように利用したことで、姉上自身がうまく演出しているにすぎないということが、よくわかった。

 なにより、私たちはこの父上の娘なのだ。姉妹で助け合うことを最上のこととして私たちは育てられたし、私は、淑華姉上のことも芝嫣姉さまのことも嫌いじゃない。


 淑華姉上が公子の許嫁いいなずけとなって悪役令嬢の規定路線を進んでいる以上、私たち姉妹三人で〈悪役令嬢〉なのだと考えていい気がする。

 とすれば、じきに私の標的となる令嬢が姿を見せるはずだ。そのときこそ、私の本領が発揮されるのだ! と期待してはいるのだけど…………。

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