表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は素敵なお仕事  作者: 奈月沙耶
第二話 中華乱世の悪役令嬢
47/84

14.都の洗礼




 その後の旅程は順調で、私たちはようやく国の都にたどり着いた。

 堅牢な城壁の短いトンネルのような門をくぐり抜ければ、そこは馬車が数台並走できるほど広い道幅の大路だった。

 身なりが少しずつ異なる多彩な出自や階級の人々、見たことのない品物を運ぶ荷車が行き交う光景に最初は感嘆したけれど、すぐに違和感に気が付いた。


 一見賑わっているように見えても、街の空気や人々の顔に活気がない。ものは少ないし砂埃に汚れながらの生活でも、辺境の人々の方がずっとずっとエネルギッシュだった。

 比べて都は、華やかではあってもどこかくすんだ空気が漂っている。こうやって衰退していく国もあるのだ。


 一方、衣類を略奪されたのを口実に父上に新しい着物をねだった芝嫣しえん姉さまは、早く買い物に行きたいと目を輝かせ、淑華しゅくか姉上も珍しく落ち着かないようすで馬車の覆いの隙間から前方を仰ぎ見ていた。


 大路の真正面。そこには瓦屋根が荘厳な宮殿がでんと鎮座していた。国王であり現天子の居城だ。

 はしゃぐでもなく気圧されるでもなく、ただ泰然と姉上は宮殿を見つめていた。





 宮中に出仕した父上は盛虎せいこ将軍という称号を得て将軍府をかまえ、私たちもその屋敷で暮らすことになっていた。

 なんですか、盛虎って。だっさ。私は失笑せずにいられなかったが、淑華姉上はあからさまに不快感を表してぶつぶつ怒っていた。

「虎とつく称号をもらえば喜ぶとでも思ってるのかしら。とんでもないわ、父上は勇猛なだけじゃない。知識も教養もあって内政にも明るいわ。宰相こそが父上に相応しいのよ」


 ――わたくしたち三人でそう家の栄達を成し遂げるのよ。

 棕家の栄達、と姉上の口から聞いたとき、確信した。


 淑華姉上の目標は〈女子の栄達〉にとどまらない。姉上が産んだ子どもが天子になれば父上は天子の祖父として権勢を手にすることができる。姉上が夢見ているのは父上の栄華なのだ。

 ファザコンの淑華姉上らしい。でも父上本人はそれを望むのか? とてもそうは思えなかったけれど、姉上に指摘することはできなかった。





 さっそく買い物に出かけた芝嫣姉さまは、都の長官の娘だとかに行く先々でからまれた。

 どこの田舎者なの、みっともない、洗練された都の品の良さなどわからないだろう、店の迷惑になるからさっさと帰れ、と。


 飛ぶ鳥落とす勢いの盛虎将軍(笑)の娘だと知ってケンカを売ってきたのである、もちろん。そして売られる前からケンカを買うタイプの芝嫣姉さまが安っぽい挑発を流すわけもない。

 が、芝嫣姉さまの侍女の桂芝けいしがどうにかこうにか姉さまを宥めた。都に来たばかりで騒動を起こすのはまずい、やり返すのならば態勢を整えてからの方が良いでしょう、と。さすが桂芝。


 そうして屋敷に戻った芝嫣姉さまはあざとく淑華姉上に泣きついた。父上には告げ口しないあたりがやっぱり芝嫣姉さまだ。

 そんなこんなを承知の上で「わたくしにまかせなさい」と引き受ける淑華姉上もさすがであって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ