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お師匠はレベル2の大魔王!?  作者: はげぼうず
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第4話『魔王さまのおしごと!』

「魔王さま。聞いてみたいことがあるんですが……」

「何だい。何でも言ってごらんよ。」


「魔王さまって、普段は魔界で何をしているんですか?魔界のトップなんですよね?」


「基本的には魔界の治安を守っているんだ。魔界はそれぞれエリアが分かれていて、そのトップたちをまとめたり、争いごとが起きたら解決したり……とか。

統治していると言っても、魔界全体のだいたい3割くらいだけどね。


だから、あたしが守っているエリアを侵略しようとする無所属のヤツらがいたらやっつけるって感じ。まぁ、そんな事情を知らん人間が一番多いんだけどな。


他には、トラブルが起きたときに手伝ったり、とかかな。簡単に言うと便利屋さんだな。」



"便利屋『魔王さま』"



「で、守ったり助けたりてあげる代わりに何か"対価"を貰っているってこと。この食事とか、道具とか。あとは、魔界出身の冒険者がいるから、そいつらに素材を渡して換金してきてもらったりもしているよ。


だから、ユニが一生懸命レベルを上げて魔物の素材が手に入れば、換金できるし、魔界の中で再利用できるから助かる。ってこと。くれぐれも統治エリア外でな。」


「わかりました!」


「基本的にここにあるものは、お礼で貰ったものばかりだな。中には恐怖で支配して、自分の思い通りにする支配者もいるけど、あたしはそういうのは好かんのでな。」


「この野菜とかお肉とかも……ですか!?」

「そうだよ。肉は狩ってきたものだ。野菜はな、実はエルフの国で作っているんだ。興味あるのか?」


「うん!野菜はあまり好きじゃなかったのに、凄い美味しくて!びっくりで!」


「じゃあ、今度どうやって作っているか見に行ってみようか?」

「やったー!」


「料理は魔界に理解がある人間を近くの街から派遣してもらっていて……」

料理人は派遣なんだ……ちなみに一応冒険者でレベル10らしい……


魔王さまの話はどれも凄い面白かった。今まで村と村周辺のことしか知らなかったから、新しいことを知れて楽しい!

世界が広がっていく。見るもの全てが美しい。魔界だけど。


あと、魔王さまの部屋を見渡して気づいたことがある。"どこまでもドア"


「魔王さまのお家ってお部屋がいっぱいあるんですね。」

「あれはな、魔界のそれぞれのエリアに繋がっている転移門ゲートなんだ。全く便利なもんだよな。あれで、すぐに移動できるようになったし、反対側からもこっちに来れるようになった。だから移動系の魔法が得意じゃないヤツでも移動しやすいんだよ。

昔、マルコが作ってくれたんだ。移動するのがめんどくせぇって。」


「魔王さまは転移門ゲートは使えないんですか?」

「もちろん使えるさ。ただね、永続的なものではないんだ。あいつの転移門ゲートは5年~10年ほども長く持つ。ここにきたときに各扉のメンテナンスもしている。ちゃんと繋がっているか、不具合がないか……とかね。

かなり役に立っているから、あいつからの頼みはあまり断れないんだ。」


お師匠。ちゃんと仕事してるんだ。


「今日は色々あって疲れたと思うから、そこらへんで適当にゆっくり寝るといい。そのうち、腕が立つものに部屋を作ってもらっとくよ。」


ありがとうございます!と元気にお礼を言った。誰だ魔王さまのことを悪くいったヤツは!

めちゃくちゃ優しい神さまみたいな存在じゃないか!


魔王さまの家はとにかく広くて、綺麗でキラキラしている。昨日まで寝ていた場所と比べものにならないくらい環境が良い。魔王さまの言う通り、疲れていたせいかいつの間にか寝てしまっていた。


そして長い一日が終わった。

途方もなく年が離れているけど、"口の悪い兄"と"面倒見の良い姉"ができた。そんな日だった。




「ユニ!出掛けるぞー。」

「……お師匠。おはようございます。こんな日も登っていない朝早くからどこに行くんですかー?」眠い。起きたばかりで開ききっていない目を擦りながら返事をする。


「何言ってんだユニ。もう昼前だぞ?」

「え?そんな、まだ……」人生で初めて寝坊した。ちょっと前まで奴隷で寝坊とかありえなかった。今思うと初めて安眠できたのかもしれない。


「いいか。ここは魔界の"夜の国"の方だぞ?ずっと真っ暗だ。人間界の時間だとお昼くらいだ?」

「す、すすすすすみません……!」そうだ!ここは魔界だった!当然、今までの常識は通用しない。


「まぁ、そのベッド、寝心地良さそうだもんな。」

お師匠に言われて初めて気づいた。昨日寝た場所と違う。何か豪華でフカフカの布団で凄い柔らかい。力が奪われていく感じ。


そして、隣には魔王さまが寝ていた。


「仲良くなったみたいで安心したぞ。で、早速今日からレベル上げしにいく。」


急いで準備して魔王さまの部屋にある扉からレベル上げする場所へと出掛けた。



着いたのは昨日までいた村の前だった。たぶん。


"たぶん"というのは、「どうやらそこに村があった」くらいの形跡しかなく、村らしいものは跡形もなかった。自分が暮らしていた村の周辺の林とかは見覚えがあるから"たぶん"ということだ。


「こ、これは……何があったんですか、お師匠?」

「んー、知らん。戦か何かに巻き込まれたんじゃん?形跡を見るに、結構大規模な魔法を放った感じだな。本当に自分勝手な奴らだ。吐き気がする。」


え?じゃあ、あの日お師匠が村に来てなかったら死んでたってこと?


「別にこの村がなくなっても問題ないんだろ?」

「えぇ…まぁ、はい。そうですね……!」一応自分が育った村だから、何も感じないことはない……けど魔王さまのベッドはめちゃくちゃフカフカだったな昨日からあそこで暮らしているんだもんな……と考えている内に、村のことは心底どうでもよくなった。


「さぁ、レベル上げやっちゃいましょう!」

「お、おぅ……急にどうした?」


村の近くの林はそこまで大きくなく、そこを抜けると大きな草原が広がっており、その奥は森になっている。草原にはうさぎ(食べたことない)や山羊(食べたことない)、豚(美味しいらしい)などが多くいて、たまに熊(食べられるの?)みたいな大きな動物が出てくる。


前までは危ないから近づくことはしなかった。どれもレベルは低いけど、大型の獣はレベル4くらいだ。


「そういえば、お師匠。どうやって戦うの?」


「実はな、レベル上げの仕組みってあまりよく分かっていないんだ。戦闘の経験を積めばレベルアップするというのが基本だ。あと、高レベルの相手を倒した方がより早くレベルアップできる。


で、問題なのは"戦闘の経験"という部分なんだ。実質、戦闘に参加していなくても、同じパーティにいるだけでレベルアップすることもあるからな。何せやったことがないからわからん。


とりあえずやってみたいことがある。レベル3になったらとりあえず攻撃できる魔法を覚えて、さらに戦闘を発展させていこう。


今日は、そうだな。

ユニが小石を俺の方に向かって優しく投げて、それを俺が反射で打ち飛ばして相手に当てる。って方法でやってみよう。


あぁ、安心しろ。俺と一緒にいる間は反射を付与しておくから、死ぬことはない。例え、相手が魔王クラスに強いヤツだったとしてもな!」最後ににっしししと笑いながら説明した。


そんなんで本当にレベル上がるの?確かに、お師匠が間接的に攻撃をしているものの、あたしが投げた石で相手を倒したことになる……のか?例えば、壁に向かって石を投げて、跳ね返った石が相手に当たって倒せば、あたしが倒したことにはなると思うけど……


「とりあえず、試してみよう!」ってことで、小石を集めることにした。


10個くらい拳くらいの大きさの石を拾ったときに、最初の獲物が出てきた。小さい小屋くらいの大きさの熊さんだった。魔王さまドラゴンバージョンを見た後といえど、びっくりした少しおしっこが出た。


「あわわわわわわ……」

「なかなか美味しそうじゃないか。」お師匠!"ペロリ"ってやってる場合じゃないですよ!



「大丈夫。安心しろ。俺が守ってやるから。」……セリフはカッコいいんだよなぁ。


「ほら、小石を下から優しく放ってみ。」

あたしが小石を集めている間に、お師匠はいい感じの木の棒を見つけていた。お師匠は木の棒を両手で持ち構える。


「行きまーす!はい!」という掛け声で、小石を放った。



カッキーンっ!!!



少しミスってしまい石の軌道が逸れてしまったけど、お師匠は難なく打ち放つ。


……気づくと熊さんの顔が吹っ飛んでいた。


「ふぅ……どうだ?ユニ。強くなっている感じするか?」

「……いや、全然分からないです。」と答えると、「そっか」とお師匠は返事する。


「まぁ、一旦今日はこの方法でやってみようか。」

「これなら簡単なんで全然大丈夫です。けど……こんなんでいいんですかね?」


と話していると、さっきの熊さんの仲間なのか、同じサイズの熊さんが5頭出てきた。


「いいじゃん!いいじゃん!やっぱり冒険ってこうじゃなくっちゃ!」子どもみたい(見た目通り)に、はしゃぐお師匠。まだ冒険ってほど冒険ではないのだけど……


「じゃ、1・2・3・1・2・3・1・2・3のリズムで小石を放ってくれよ。"3"のタイミングで打つから!」

「わかりました!」


そして、残っていた石を全部使い切る前に全ての熊の首が吹っ飛んだ。リズムに合わせて石を放る簡単なお仕事。


「わかるか?首を正確に狙うのも"反射"の技術なんだぜ。」


本当に強くなるためには、レベルだけでなく技術も磨け――。これがお師匠の考え方だ。

でも、バッティングの技術はまだ先でいいかな……


倒した熊さんたちは、お師匠が適当な空間に蹴飛ばして保管している。


小石を拾ってお師匠にトスしただけだけど、結構時間が経っていたようで空が赤くなっていた。


「今日は初日だし、もう帰ろっか。」


こんな方法で果たして強くなれるのかは分からない。でも、ちょっと怖かったけど人生で一番充実した日だった。




魔王さまの家"魔王城"に帰ってくると、魔王さまはどこか落ち着きがない様子で、部屋の中をうろうろしていた。


「アルちゃんただいまー。」

「っっどこに行ってたんだお前らーーーっ!!」魔王さま、カンカンである。


「めちゃくちゃ心配したんだぞっ!!!」めちゃくちゃ優しい。


「ごめん、ごめん。いやぁ、さっそくレベル上げをしようと思ってね……てか、出掛けるときもうお昼だったし。次からはちゃんと言ってから出ていくからさ。許してくれよ。」

お師匠はアイコンタクトで"お前も謝れ"と合図を送った。


「魔王さま……ごめんなさい……」

「ううん、いいんだよ!全然大丈夫だからねっ!」機嫌が回復したようだった。


「そんなに怒るなよー。何かあったのか?」

「だって、起きたら誰もいないし……」

このときの魔王さまはちょっともじもじしていて、何ていうかめちゃくちゃ可愛かった。


「で、どうなのレベルの方は?」

「俺たちさ……ほら、鑑定できないじゃん?ちょっとお願いできないかな?」

やれやれ、という感じで魔王さまは鑑定の準備をする。


「今日は何やったの?」

「ん?熊さん6匹捕まえた。美味しいご飯にしてくれ。」はぁ、と溜め息をつく魔王さま。


そういえば、鑑定してもらうの初めてだ。


「ふむふむ。ユニのレベルはっと……ん?"レベル4"ってなっているぞ?めっちゃ上がってんじゃん!あ、ちゃんと"呪い"の魔法はあるみたいね。」

後で分かったことなんだけど、あの熊は普段はあまり出現しない魔物でレベル5だった。レベル5の魔物を6頭も倒せば、レベルも上がりやすい。けど、ぶっちゃけレベルが上がった実感はない。


「良かったな!ユニ!あんな方法でもレベルちゃんと上がるぞ!一旦明日からはレベル上げを中断して魔法を2つ覚えよう。


アルちゃんと戦闘訓練をしておこうか。というわけで明日からヨロシクー。」

まーた勝手に決めて!と魔王さまはぼやいているけど、その顔は楽しそうだった。


「ユニ。レベルアップのお祝いって訳じゃないけど、ユニの部屋も作ってもらったぞ!一人でヒマだったからな!」


開いた口が塞がらないほど、豪華な作りだった。村の中でも一番の金持ちが暮らしているような……

部屋はかなり広く、必要な家具は揃っていた。一人暮らしなんて余裕でできるほどに。


「ほら、ベッドもいい感じにしてもらったぞ!フッカフカだぞ!」

自分にはもったいないぐらい高級な感じのベッドだ。でも、少し心残りがある。


「え?……今日寝る場所は昨日と違うんですか?」

あたしの部屋もかなり豪華だが、魔王さまベッドのクオリティは本当にヤバい。あんなん離れられない。



「……よーしっ!じゃあ、今日も一緒に寝ようか!」


と顔を赤くしながらニコニコしながら魔王さまは言った。それからしばらくの間、魔王さまと一緒に寝ている。


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