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お師匠はレベル2の大魔王!?  作者: はげぼうず
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第3話『強さの理由~よくある昔話~』

魔王さまがあたしのお師匠になったタイミングで、色々聞いてみることにした。


「お師匠、さっきの話の詳しい説明が欲しいのですが……」

「あぁ。レベルと年齢の話ね。」と返事すると、お師匠はお決まりの文句で話し始めた。



――昔、昔。今から1,400年くらい前。あれは、ちょうど10歳の誕生日だったか。一族の三男坊だった俺は、その日にとある"祝福"を与えられたんだ。俺の一族が長く研究していた"不老不死"。誕生日の日に、ちょうど実験が成功したらしく秘薬が完成した。お祝いということもあって、俺が秘薬を最初に飲むことになったんだ。


ただ本当は、実験は成功していなかったんだ。確かに、不老不死にはなったようで、5年10年経っても成長することはなかった。でも、同時に1つの失敗があったんだ。


このプロジェクトの目的は、高レベルな不老不死の戦士を多く作って軍事力を高めること。ただ、秘薬を飲んだ俺は不老不死にはなったものの、レベルは一切上がらなかったんだ。さらに、レベル3以上の人間が秘薬を飲むとその場で絶命してしまうことも分かった。


とんだ失敗作だ。祝福を受けるはずが、呪いを受けてしまった。そして、一族は研究が明るみにならないように、俺の存在を抹消しようとした。「いつまでも子どもの姿をした、バケモノが一族にいる」と周囲から思われないように。

ただ、殺しても死なないから、閉じ込めておくしかなかったんだ。


そのときに覚えていた魔法は今と同じ「反射」と「転移門ゲート」。「反射」は覚えるのが簡単だったし、「転移門ゲート」は移動が楽になると思ったら覚えた。


幸いにも、閉じ込められている間も食事は提供されていたし、仲が良かった監視員が本を持ってきてくれたから、一般的な知識とかは身に付けることはできた。ただ、この空間で凄す時間が無限に続くと思うと、流石に不安になった。


脱獄するんだったら「転移門ゲート」を効果的に使うしかない。

当時の俺は直径10cmくらいのゲートしか作れなかった。でも、それでも外に出るためには、ゲートでどうにかするしかない。だから、毎日毎日、魔力が底をつくまで何回もゲートを作った。


そんな日々が何十年も経って、担当の監視員が何人も変わったころ、ちょっとずつ、でも確かにゲートのサイズが徐々に大きくなっていることに気づいた。基本的に魔法のレベルは自分自身のレベル『パーソナルレベル』に比例して上がると思っていたけど、そうじゃなかった。


繰り返し繰り返し、誰にもできないくらい何回も魔法を使うことで、魔法のレベルは確実に上がっていく。閉じ込められてから80年が経とうとしていた頃、ちょうど自分の家族だった人間が全員死んだことを知った。ゲートのサイズは直径50cmを超えていた。


自分に親切だった監視員を裏切るのは気が引けたけど、自分の方が大事だったから普通に脱獄した。外の世界は、何というか、解放感が凄かった。「やっと自由になれた」というのがその時の素直な気持ち。


同時にこれからどうやって生活すれば良いのか分からなくて、かなり困った。だからユニの気持ちも分からなくもなかった。

レベル2以上にはならないから、冒険者になって稼ぐこともできない。


幸い、ゲートを使えば行ったことがある場所にはすぐ行けることが救いだった。10歳の子どもで、家族はいない。とりあえず、他の国に行って孤児院に拾ってもらうことにした。一応は、食事と寝床を確保できるからね。


それから日中はひたすら魔法の修行をして、反射を使って戦えるようにした。ゲートのレベルが上がったということは、反射も使い方・鍛え方次第で強くなると思ったんだ。でも、それにはかなりの時間がかかる。


当然、何年も見た目が変わらない子どもがいれば、孤児院の職員は気味悪がるから、3年くらいを目途に孤児院を変えていった。


生活圏内に出る獣や魔物が大体レベル3~4。たまに出る強いヤツがレベル5くらい。ようやくそいつらにも対応できるくらい反射が強化されたのは、さらに50年くらいたった後かな。


相手の力をより大きな力にして跳ね返す。これでレベル5以下の相手には負けなくなった。そこからは孤児院には頼らず、自分で獣や魔物を狩って食べたり、魔物の素材を集めて売ったりして生活をしていた。


このころに反射の力をアイテムに付与することができるようになって、自分から攻撃できるようになった。ただの木の棒でも折れることはないし、相手の力を利用して戦えるし、数倍の力を込めることもできた。


あとは約1,000年間、試行錯誤を繰り返しながら反射とゲートの反復、反復。ただひたすらに2つの魔法を極めた。結果、地上最強の存在こいつの攻撃も反射できるようになった。ゲートは移動手段だけでなく、攻撃手段にも使えるようになったのは大きかった。


――とまぁ、こんな感じで同じ種類の魔法を繰り返し使うことで極めることができる。これが年齢とレベルと強さの理由だ。絶対的なレベル差も、魔法単体であればひっくり返せる可能性がある。


ただね、魔法レベルを上げるのはもの凄いコスパが悪いんだ。パーソナルレベルで1相当の魔法レベルを上げるためには数十年かかる。昔はどうやら魔法レベルの概念があって、レベルを上げようとしていた人もいたようだけど、何せ努力が実るのは死ぬ直前という、何とも報われない研究だったんだ。普通に頑張ってパーソナルレベルを上げた方が割が良い。


だから俺みたいな不死身の人間か、アルちゃんのように膨大な寿命を持つ長命種じゃないと極められない。


「マルコの魔法レベルは、世界で一番高いと思う。さすがに最大威力の星魔法を跳ね返されたのは普通にびびった。」昔を懐かしむ感じで魔王さまはつぶやく。


「あのときは、自分よりも強い存在はいるはずないと思っていた。『あたしが負けるわけない』って。でも、負けた。それほどにもコイツの反射とゲートは厄介なんだ。」


「でも、弟子ぃ。真似すんなよ。というか真似できないからな。どう頑張っても時間が足りなすぎる。」


「じゃあ、どうやって強くなるんですか?」純粋な疑問をぶつけてみる。


「大事なことは、魔法の使い方。技術と工夫だ。同じレベル、同じステータスの人間がいたとき、勝つのは戦いが上手い方。それに関しては、俺は何も役に立たん。だから、この魔王さまにお願いしたいわけさ。


魔王さまはレベルが高くて魔法が強力なだけでなく、戦いのセンスや技術も全世界でトップなんだ。普通なら誰も勝てない。


基本的な方針はさっき話した通り。俺と一緒に冒険して強い相手を倒してレベル上げ。魔法や戦いの技術はアルちゃんに仕込んでもらうって感じ。」


お師匠はこのプランをいつ考えたのだろうか?何もかも最初から決まっていたかのようにスラスラと話をしていた。


「魔王さまはやっぱりレベルは13なんですか?」


「まぁ、人間界の基準では一応レベル13になるのかな。実質のレベルは21だよ。」

「え?どういうことですか?」"レベル21"という言葉を初めて耳にした。


「人間界ではレベルが15だろうが20だろうが、みんな13扱いになるんだ。そこまでしか測定できないから。

実際に、国王連中にもレベル13以上はいるよ。例えば、"戦の国"アテナの『ダビデ王』はレベル18。あれは結構なバケモノだぞ。人間であそこまで強いのは凄い。」


はへー。知らないことばっかだ。


正直、全然実感が湧かない。だって今のレベルは2なのに、レベル21とか18とか。全然イメージできないというか……

と。当たり前のことを思ってみる。だって、数時間前までせっせと薪拾いとかしてたんだから。


「いきなり、『キングの首を獲れ!』って話でもないんだ。正直、俺やアルちゃんにとって10年・20年は大した年月ではない。しっかりと準備をして、満を持して革命を起こす!

まずは、冒険者になるための"魔法学校"に入学できる14歳まで、できるだけレベルを上げておこう!ってわけよ。」


「はい!頑張ります!」と気合いを入れて返事をした。


そのとき、「ぐ~~っ」という音が鳴ってしまった。2人の空気に慣れたのか、安心したのか、そういえば今までずっとお腹が減っていたことに気づく。


「す、すすすみませんっ!」今までのちょっとシリアスな空気を見事に破壊した快音で2人は爆笑している。


「アルちゃん!何か食べるもの!」

「はいはい。ちょっと待っててねー。」会話が完全に姉弟なんだよなぁ。


今思うと、こんなに人と会話をしたのは初めてかもしれない。少し前まで、家の人とまともに話した記憶がない。少しは人間らしくなった気がする。ここ魔界なのに人間らしいというのは、何か皮肉みたいだけど。


3人で食事をしているときは、まるで家族のようだった。2人とも今日会ったばかりだけど、何か安心する。



「あ、あと、俺たちしばらくここを拠点にするから。で、今から風呂入るから。ヨロシクー☆」


「ちょっと待てーい!」


この2人はなかなかいいコンビな気がする。


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