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お師匠はレベル2の大魔王!?  作者: はげぼうず
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第2話『世界最強と元世界最強』

今、"レベル2"って言った?あたしと同じ?最弱のレベルの?

1,464歳?キングの首を獲る?


シンプルなことなのにちょっと情報を正しく処理できなくて、名前しか把握できてないよ?



あたしのお師匠はレベル2?めちゃ弱じゃん!


いや、でも……

レベル8クラスの冒険者を一撃で倒しているところはこの目で見たし、村を滅ぼしたものも間違いなくお師匠だ……


で、

あたしがレベル13になって王の首を獲る?どんな冗談???


「えっと、あの、全然追いつけてないんですが……」

「何だ?どうした?情報量にして100文字くらいしか伝えてないぞ?」

と不思議そうな顔でこちらを見ている。お師匠はどこからか取り出したご飯を食べ始めた。


「お師匠のレベルは……?」

「俺のレベルは"2"だ。お前と一緒だな。お揃いだ。」

にっしししと笑ってる場合じゃなくて!


「どうして、レベル8クラスの冒険者に勝てたんですか?」

「あの火の玉のやつ?へぇ、レベル8もあったんかぁ。そんな手応えなかったけど。

まぁ、そこらへんの仕組みは後でちゃんと勉強してもらうけどさ、一言でいえば俺はこの世界で最強だからだ。レベル2であったとしても。

持っている魔法は『反射』と『転移門ゲート』の2つだ。

さっきのは、飛んできた火の玉を威力を高めた『反射』で、跳ね返しただけ。簡単だろ?」


「でも、反射ってそんな万能な魔法じゃないですよね?」

「まぁ、焦んなって。ちゃんと説明するから。とりあえず飯を食わせろよ。」


「あと、年齢も……1,400歳というのは聞き間違いですよね?」

「年齢が強さの秘訣ってのはあるよなぁ。間違いじゃないよ。確か今年で1,464歳。」


「お師匠は見た目人間ですけど、人間…大魔王…?」

「はっははは!まぁ一応、人間だけど。一応な。」一応って何だよ。冗談にしてはおもしろくねーぞ。すべってんぞ!


「で、最後のキングの首を獲って、革命で下剋上っていうのは?」

「え?何でもするって言ったから。ちょっと訳ありでね。やって欲しいんだ。革命。」ちょっとやって欲しい、というレベルの頼み事ではない。



ちなみにこの世界は4つの王国に分かれている。

愛の国『ユディト』

富の国『ラケル』

戦の国『アテナ』

知識の国『アルジーヌ』

それぞれの国には国王キングが支配していて、全員レベル13。このレベルは王になる条件でもあってレベル13は世界に4人しかいない。らしい。


「お前も何か食べるか?」と聞いてきたけど、空腹を感じないくらい混乱している。本当はいつもお腹減っているのに。


「あたしがレベル13ってちょっと無理があるんじゃ……」

「はぁ?今何つった?」

鋭い目つきでこちらを見るお師匠。ナチュラルに「ひぃっ」って声が出た。


いやいやいや。レベル13って歴代の国王しか存在してないんじゃ?


「やる前から諦めてんじゃねーよ。こっちにはちゃんと考えがあるってのによー。」

……すみません、と小さく謝った。この人を怒らしてはいけない。


「よし!飯も食ったし、あらかた説明したし。ちょっと移動すんべ!」

果たして、あれらを説明と呼ぶのでしょうか?この人、あれだ。結構テキトーだぞ。


「どこに行くん……えっ⁉」するとお師匠はどこからか大きな扉を取り出してその場に設置した。"どこからかドア"である。


「確かノック3回だったな。これやらねーとうるせーんだ。」とドアをノックして

「行くぞ」とあたしの手首を掴む。何コレ?めちゃくちゃ怖いんですけど?



「邪魔するぜー。っと。」と言いながら扉の奥へ引っ張られた。



扉の奥は何とも冷たくて暗い空間で、いるだけで凄い恐怖を感じる。何か氷に囲まれているみたいだ。



薄暗いその場所で、お師匠は呑気にも

「おーい!アルちゃん!ちょっとアルちゃん起きてよ!あーそーぼー!」

と大きな声で叫んだ。まるで子どもが近所の友達を遊びに誘うように。


「……うるさいなぁ。」という誰かの寝起きの声とともに、ゴゴゴゴと地響きのような轟音が響く。



その瞬間、そこには見たこともないくらい巨大なドラゴンが姿を現した。



ドラゴンの鋭い眼光がこちらに向けられている。

目が合った瞬間、「あ、死んだ。」と思った。

そして、あまりの怖さに派手にやってしまった。


実に4年ぶりのおもらしである。恐怖でまたしても涙が溢れてきた。もう自分の感情がね。上手くコントロールできないんだ。上から下からびしゃびしゃだ。


「わっ!何してんだお前!おーい!アルちゃん!その姿怖いって!

弟子が泣いて漏らしちまったじゃねぇか!あーあ泣かしたー!」


するとそのドラゴンは薄暗い光に包み込まれ、お師匠よりも少し年上……

12歳くらいの少女に姿を変えた。


「そんなん言ったって、こっちは寝起きなんじゃ!ボケー!」


ポカッ!とグーでお師匠の頭を小突いたものの、そのままバウンドする感じで跳ね返される。


「効きませーん!バーカ!バーカ!あっかんベー!」お師匠は少女に向かって分かりやすい挑発をした。


「あっ!テメー!あたしの方が2つ年上なんだぞ!少しは敬え!

っ!イタイ!イタイ!ちょっ、ふざけんな!それやめろー!」お師匠は少女を木の棒でポカポカと殴っている。


遠くから見ていると、失禁したのが馬鹿らしくなるくらい、どこまでも平和で仲が良い姉弟ケンカだった。2つ年上ってことは1,466歳。



「で、その人間の女の子は何だ?」少女はこちらをジト目で見ながらお師匠に尋ねている。


「こいつ?こいつは俺の弟子ぃ。」

「は?弟子なんていつ取ったんだ?」と驚きを隠せない少女。


「今日、というかさっき。30分くらい前かな。

ちょっと気になることもあるし、めんどくさいからアルちゃんに鑑定とかしてもらった方が早いかなって。」


「あのお師匠……こちらの方は?」と純粋な疑問をぶつけてみる。

「え?こいつ?こいつは魔王。魔王の"アルカナ"。」


ん?

ちょっと待って。



一度深呼吸して、無理矢理落ち着こうとしてみる。


「"魔王"って、あの"魔王さま"ですか?暴虐の限りを尽くしこの世界を破壊しようという、世界で最も恐れられている存在の?」

「そうだよー。」とお師匠が言った瞬間に、また「ひいっ」という声を漏らしながら、お師匠の後ろに隠れる。


「おーい!ちょっと待って!ちょっと待って!って!

えっ?あたし人間界ではそんな風に言われてんの?え?普通にショックなんですけど。」と今度は動揺を隠せない様子である。


「えーと、世界の常識です……」と伝えると、「まじか……」と頭を抱え始めた。結構落ち込んでいるみたいだ。「何がいけなかったんだ……」と。


「ほら、弟子よ。アルちゃんに自己紹介をしようか。」


「初めまして。魔王さま。あたしの名前はユニです。8歳です。レベルは2です。よろしくお願いします。」これ以上漏らさないように、棒読みでも我慢しながら必要事項をひたすら述べた。下手をしたら殺されるっ!


「そんなにビビんなくても大丈夫だぜ。アルちゃんは結構、多分優しいから。」お師匠はケラケラ笑っているけど、こっちはそんな余裕はない。


「どどどど、どのようなご関係なんですか?」恐る恐る聞いてみる。


「まぁ、"昔馴染み"ってやつかな。500年前くらいから。ちなみに、"大魔王"っていうのは、昔バトって勝ったから。俺の方が"魔王"よりも上だから"大魔王"ね。俺の方が上ね!」


ドヤァ!って何か聞こえてきた気がした。


頭の中を少し整理してみる。

目の前にいる少女は、世界で最も恐れられている"魔王"で、こちらの少年はその"魔王"よりも強い"大魔王"であり、あたしの"お師匠"。


……とにかく不安しか感じないんだけど。


「で?何でいまさら弟子を取ったんだ?」と少しきつめに尋ねる魔王さま。

キングを倒して国を乗っ取る。」


「はぁー。まじで言ってんの?うん。まぁ、昔から言ってたし。で、どうやってレベルを13まで上げていくんだ?」それはあたしもかなり気になる。


「俺と一緒に行動して、適当に戦ってレベル上げをする。

で、戦いの技術とか魔法については、この魔王さまが教えてくれるってわけよ。

良かったな。世界1位と2位が師匠なんだぜ。」わーい!やったー!ってなるかー!


「うん。初耳なんだけど?」少女は笑顔だけど、これ絶対怒ってる顔だ。


「だって、俺魔法2つしか使えないじゃん?

新しい魔法覚えるには、教えてもらう必要があるじゃん?

アルちゃんは魔法いっぱい使えんじゃん?教えてもらえばいーじゃん?」


「もー!あんたはいつも勝手なんだから!」激しく同意します。


「いいじゃん!いいじゃん!ケチケチすんなよ!」


「はぁーもう!なんであたしなのよ!」


「君にしかこんなこと頼めないし、この子にとって最適だと思ったからさ。

大魔王の弟子なんだぜ、人類最強くらいにはなってもらわないと。

いーじゃん!弟子みたいなのいっぱいいるだろ?」あたし、人類最強になるのか……


「あいつらは部下だ。弟子じゃない。」


「まぁ、記念にいいんじゃない?『魔王の弟子』って響き、ほらカッコ良いじゃん?

ユニもお願いしてよ!」


「お願いいたします!!」本日2回目。地面におでこを擦りつける。

よく分からないけど、夫婦喧嘩みたいなのを見せられた上に、いきなりこっちに振られても困る。そりゃあ対応も少しは簡素になりますよ。


「それに、弟子は"呪い"の魔法を持っているらしいんだ。」とお師匠は魔王さまに報告する。



「何だって!?」と魔王さまはかなり驚いた様子である。



「だから、ちゃんと鑑定して欲しいんだ。君も興味あるだろ?」


「そういうことね……分かった。やれやれ。

あたしは"アルカナ"。魔界、黒の国の夜の王。ダークドラゴン。

よろしくね。ユニ。」


こうして村に帰ってから1時間もしない内に、村が滅んで世界で一番強い人と二番目に強い人が師匠になった。



色々あり過ぎて、もうよく分からないけど、このときに1つ決めたことがある。

できるだけ反抗しないようにしよ……


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