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『少女世界攻略記録』  作者: けゆの民
『少女世界攻略記録』<終章>
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827◇ミスディレクションの六十秒間劇場

「──■■全魔法『■■の■アストロール・マスィティス』」


「──『終章禁呪』開帳!」


『観測』君を60%まで引き上げ、ついでに世界で誰も知らないであろう宮廷魔術師筆頭様の全力がわかるとテンションがぶち上がってる現在です、対戦よろしくお願いします!


空間上に『眼』を6つ配置し、『眼』──情報収集端末を通じて、魔素の流れを具に感じ取れるようにする。

もう最悪肉眼の五感は潰れてもいいんじゃないかな、というか潰れたほうが間違いが少ないんじゃないか?というレベル。


まあここで潰したら後々アリスに激怒される未来が容易に予測出来るからしないけどね。


「本邦初公開、最新フォームの大公開!定義(ディフィニション)──決定論理と運命理論パラレル・オルトクラウン!」


天異境第四階層でリルトンにボコボコにされた腹いせに作った定義です!よろしくお願いします!

効果は単純、私の気に入らない異法の効力を全て1%まで下げます!


「……っ、『次元断層』」


私がたまに使う即興補完魔法『空間切断』のような斬撃。

あれをざっと数百回分、結界を張るように使用される。

多分本来はもっと長かったりするものなんだろうけど、如何せん『定義』君のおかげで特大デバフが入ってるので、どうとでもなる。


まあ『定義』なので、そうそう長時間続くものでもないんだけどね。いやまあ1分程度なら続けられるだろうけど、まあそれじゃあ面白くないし、多分使いっぱなしは後遺症が出る。


「──創造補完魔法『寂衰の風縛(ルインズ・ウィンド)』!」


「『空想花』、『第三自動制御機構』」


発動された魔法をちゃっちゃと観測し、分析していく。

前者の『空想花』は、簡単に言うならつよつよ障壁。セリアの『星壁創造プラネタリア・クレーター』みたいな汎用性はない──つまるところ、自分に対してしか使えないかわりにセリアのあれ以上を実現している障壁。


後者の『第三自動制御機構』は、魔法『魔導回路万象目録』に収蔵されている第参部までの魔法を自動で発動してくれる機構。まあ言い換えるなら、魔法のオート操縦だよね。


魔法の発動される予兆、もとい魔素の流動を視認することでそれらを回避する。

重力を以て押し潰そうとする空域を駆け抜け、五桁に触りそうな気温の空間を避け、清廉(クリーン)な爆発を謳える狙いを回避し、指向性を持ったギリシャ文字の名前が付きそうな光線を察知し、存在その物が停止させられる結界構築を見透かす。


「強き者には弱者への救済を、弱き者には強者への期待を。立場を変え、世界を交えどもそれは付き纏う。代償にと適応される罪を見よ!『叡知の図書(グリモワール)─『代償』─』」


駆け抜けながら、されど13.2秒後に見える“詰み”を回避するために。

私はこの世の地獄、魔法の大嵐を駆け抜けながら詠唱をする。


効果は単純、全ステータス12分間5倍。

これ以上倍率を高くすると、その後の回復が面倒臭くなるので5倍でステイ。

と、いってもよ。

元々が100倍とかいう倍率がかかっているところに、更に追加で5倍を追加すると単純に500倍という数値が出てくる。

実は、なんて前置きを入れるまでもなくわかることではあるのだけど、500倍という数値は世間一般においてはクソ性能と唾棄されるレベルでぶっ壊れの数値ではある。


まあ本当に全力を出しすぎると、空気抵抗とかいう素晴らしい物理法則の影響で体ごと破損したりするんだけど。



さて、折角の機会だし『追憶の世界(ロスト・ワールド)』の新しい使い方でも考えてみようか。

『追憶の世界』という魔法は、端的に表現すれば「ルール創造魔法」になる。


mpっていう代償さえ支払えば、任意の事象を引き起こせる。しかもそれは数値的な強さではなく、言葉上の強さすらも例外ではない。

mpさえ潤沢にあれば「私の周囲半径5m以内に気体は存在出来ない」だとか「原子番号2,000番までの元素が出現する」とかでも可能だろうってこと。

残念ながらmpが多めに見積もっても(アリスから借りても)数十万しかないので、そこまでの暴虐は出来ないんだけどね。


なら次の問題。ある種の「魔法の魔法」とすら表現してもいい『追憶の世界(ロスト・ワールド)』君。

つまり、魔法という概念が帯びている性質を利用すれば今よりも無法ムーブ出来るんじゃないか?ってこと。


要は、自分で勝手に制限をつけて威力を上げるとか。

実際一回二回とそんな感じのことは無意識的にやったけど、意識してやった記憶はあんまりない。


さあ、いよいよインフレ小説特有の魔法文字概念バトルになってきました!と脳内の実況・解説がほざき始めているのを無視しながら、私は縛りを増やしていく。


「『この戦闘中、私はHPを減少させない』『この戦闘を、10分以内に終了させる』」


当然と言えば当然なんだけど、自動的に達成されやすい縛りだと威力やら何やらの上昇率は低い。

それが許されてると、『この戦闘中、私は呼吸をする』とかでも成立しちゃうからね。

じゃあ誰がその難易度を決めてるんだ、ってことになるけど……まあそこら辺の分析は後回し。


今回はその戦法で真面目にバフかけよう、ってわけじゃない。要はいつものパターンよ、いつものパターン。

何か怪しげなことをして、警戒させるという『夢幻空間』のお決まりパターン。


何をしてくるかわからない、何をしでかしてもおかしくないという信頼/疑心を利用した、性格の悪い戦法。


事実として、さっきの宣言で何がどう変わったのかというと、多分消費mpが1とか2減った?みたいな話になるわけで。


というかそもそも、魔法という概念は何かしらを代償に願望を叶えるという性質を極限まで追求している。

その代償が記憶だったり時間だったりmpだったりするわけで。


「意味はなさそうですが……」


そう、魔法に長けているシルクエスさんであればこれが本来的に意味ないことなんてわかるはず。

その上で、呪祟という未知の手札が私にあったことから──“なにか”があるんじゃないかと疑惑が走る。


いやぁ、アリスやリルトンが上手く使う戦法だけど使いやすいね。特に『観測』や呪祟とのシナジーが良い感じ。


──なんか最近の花奈(マスター)、メスガキ感が出てません?


流石にその発言は看過できないが……いやいや、冗談だよね?そんな行動してないって。普通の女子高生やってるって。

年代的には女子高生だから!私!


「『彗星流』」


シルクエスさんの背後に幾何学的紋様の描かれた魔法陣が出現し、そこから流星……まあ光を帯びた岩が飛び出してくる。

それ自体はどうとでも対処出来るから、まあ雑に処理するとして──


「《三点再臨》!」


はいはい、と雑に魔銅の槍で串刺し流星を作ろうとして、すり抜ける。


「っ、非実在?」


全てではないとはいえ、『観測』を使っていたのに分析力ミスが発生する。その事態に改めて意識を集中させ、魔銅剣ことグラウンドを生成しておく。



──魔法『彗星流』を観測、分析開始。


自動追尾機能搭載を確認、射撃対象以外の物質透過機能を確認。使用魔素は1,000、移動魔素は2,000。

魔法としての等価交換に不足を確認。魔素以外の要因が……異常素粒子が異法構築に関与していると分析。



なるほどね?私でいう花素みたいな摩訶不思議存在を扱えるってことか。

で、それをまだ私は見たことがない。だから推定出来なかったわけで。


予想以上にシルクエスさん、強いな。

現在状況をちゃんと描写するなら第一部の魔術槍に、第二部の環境変化、そして第三部の高火力全体攻撃。

その三つが絶え間なく襲い来てる現状にプラスして、『終章禁呪』の畳み掛け。


『観測』がなければ分析力不足で“詰み”に持っていかれた自信しかないし、『舞踏城(タンゼンシュラウス)』と『叡知の図書(グリモワール)』の組み合わせによるagl強化がなくても、それはそれで“詰み”に持っていかれた自信しかない。


というかシルクエスさん、相手に攻撃させない戦い方が上手い。この魔法地獄の中、相手を攻撃しようとする演算リソース……魔法構築を出来るか、って言われたらまあキツイ。

それに加えてシルクエスさんはちゃんと強い防壁を持ってるから話が悪化していく。


ある程度以下の格下相手には圧倒的な環境変化能力で威力重視型の魔術師に見せかけてるんだろうけど、この人の本当の戦い方は明らかに「相手を土俵に立たせない」タイプの戦い方。

徹底的に相手の「得意」を使わせず、自分の環境を押し付ける謀略型。


この人、どんだけ実力を過小評価させれば気が済むのよ。というか何処でそんな魔法・異法の技能を身に付けたのかが気になってきた


「……攻めきれませんね。流石にここまで魔法を連発していると、回復速度より消費速度のほうが早いのですけれど」


本当かよ、って思うのも許して欲しい。

仮に本当だとしても切れるまで数時間かかります、とか全然言いそう。というかアリスがそれをやる人筆頭なので、多分この人もやってくる。


「尽きるまで数年かかります、とか言うんでしょ?」


「まさかまさか、高々数ヶ月ですよ」


ほら見たことか。数ヶ月も継続して戦闘出来る人類、そうそう転がっててたまるかよ。

それに比肩しうるの、それこそラスティぐらいじゃない?


──まあ数十年とか稼働出来ますからね。


インフレが進んでいくわ、と吐き捨てながら指で円を描く。

魔法の嵐。業火の熱戦に絶死の暴風が吹き荒れる中、静寂を作るように描かれたただの「円形」。


指差し銀河の正円(フィンガー・サークル)!」


再度の透かし。『「何もない」がある』を作り、いい加減にひとつくらいは何かあるだろうという疑念を作らせる。

万が一に備えさせ、それに思考リソースを奪わせる。


「……」


そして時間はゆっくりゆっくりと流れていき、制限時間までを(はか)る時計の長針は一周を迎える。


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