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『少女世界攻略記録』  作者: けゆの民
『少女世界攻略記録』<終章>
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824◇旧『幻想賢者』シルクエス・ヘキサルキア


「──第弐部(・・・)開帳」



その言葉が発された。それは此処からが第二部であらや、逆説的に此処までが第一部であることを証明する。


基本的にこのタイミングで開かれた第二部。その発展の方向は大まかに二種類に分かたれる。

一つは、技はそのままに密度が上昇するというパターン。

もう一つは、密度はそのままに技の鬼畜さが上昇するというパターン。


前者は、さっき細かな密度調整を披露してくれたあたりからあり得ないと判断が出来る。自在に調整が利くものに対して明確な命名はしないだろうからね。


1秒足らずの考察時間。この後に起こるだろうことをもう一つの観点から考察していく。

そうだ、シルクエスさんは何と自身の魔法を何と言った?



環境構築(・・・・)万能型魔法『魔導回路万象目録』。そう呟いたのを思い出したのと、その効果が発揮されたのは、ほとんど同時だった。


「『大嵐(テンペスト)』『熱砂(デザート)』『雷霆(ボルテックス)』」




──文字通り環境が構築される。

風速数十メートルの暴風の渦、その暴風に乗せられ狂気となる燃え盛る小石や砂利。渦巻とは関係なしに直接私を狙ってくる拡散電撃。


電撃には避雷針(呪祟の塔)で、熱砂と暴風は風上に風避けを創ることで初撃を耐えしのぐ。


急に難易度上がったなぁ……!『舞踏城(タンゼンシュラウス)』の行動速度と『観測』による反応速度上昇がなかったら、普通にそのまま削られてた。


まだ耐久戦は続けられる。『舞踏城(タンゼンシュラウス)』の時間は十分過ぎるくらいに設定してあるから、第二部になったことで落ちた継戦能力は風避け作成・修復だけ。


攻撃しようとしないならば、かなり長時間耐えられるけれど……


「炎旋風──ここから『雷霆(ボルテックス)』を除いたものの改良版は、第二王女様も使えますからね。ただ、持続時間が短いことと発動までに2,3秒程度有するのは改善点だと思いますが」


まあ確かに2,3秒ってのは『舞踏城(タンゼンシュラウス)』だの何だのでaglがインフレした世界では致命的な隙にはなるんだけど、そんなにつつくところかなぁ。


少なくとも、戦闘でバリバリ前線に出ます!みたいな感じじゃない限りいらないものだとは思う。


あと単純に直線で飛んでくる電撃と、弧を描くように飛んでくる熱砂の組み合わせがかなり害悪性能高いんでやめてもらっていいですか?


「意外と余裕がありそうですね。なら……『山峰(レッカー)』」


その言葉と共に、私の足元へ魔素が集約していくのが感じ取れる。

数瞬の後、地面から突き出てくるのは鋼鉄にすら見える岩の(とげ)。針山顕現と呼んでも違和感はないほどの攻撃。


横に飛んでくる熱砂、目の前から流れてくる電撃、それに下からの剣山。

なるほどよく考えられた全方位攻撃だ、と感心しながらも真面目な対応を余儀なくされる。前や横、というのは単品で障害物を置くなりすればどうとでもなる。対して下からの攻撃、というのは──ただでさえ見えにくいというのに加えて──明確に足を動かして回避する必要が出てくる。


未だに私のネックレスとしての機能以外、一切何も果たしていないラスティとかなら浮遊って手段を用いて回避出来るんだろうけど……残念ながら人類に浮遊機能ってのは標準搭載されてない。使おうとすると、mpの消費分量的な観点で継戦能力がかなり落ちる。


──と、いうわけで。


今もシルクエスさんの周りで馬鹿の考えた台風の模式図かの如く渦巻き続けている魔素をどうにかしないと不味い。


岩山剣山生成攻撃に対処出来るとはいえ、逆にこっちまでmp使用禁止で対処しようとしてると、他との兼ね合いで詰む。相手だけ1ターンに4回行動してるもんだからしょうがないんだけど、詰みまで持ってかれる速度がえげつない。


そんなわけで立ち返って魔素をどうにかしたいわけなんだけど。まあ、これくらいは手札公開枠として許してくれるでしょう。


「回帰せよ、ほどけよ、崩れよ──創造補完魔法『元壊の魔縛(マジック・ルーラー)』!」


切った手札は魔素の流れの硬化。見ている限りシルクエスさんの継戦能力及び魔術使用はアリスタイプじゃない。

つまり、膨大なmpを元手にそれを削って使うタイプではなく──最大量自体は多くはないものの、使った側から補給していくタイプ。放出される一方ではなく、魔素が渦巻いているという点から予測出来るその事実を糧に、「継戦」を奪いに行く。



創造補完魔法『元壊の魔縛(マジック・ルーラー)』は、端的に言うならば魔素の流れを硬くする魔法。

正確には、空間上にある魔素を私の支配下に置くことで相手の魔素使用を阻害する「魔法」。

その性質上、体内に貯蓄して身体強化する魔法とかには大した効果は上げられないけど……シルクエスさんみたいに、循環させ循環させのある種の自転車操業をして魔素のやりくりをしてる戦闘スタイルにはバッチリ噛み合う。


ちなみにさっきから何かしら使おうとするたびに詠唱を挟んでいるのはmp節約って意味以外にも、相手に戦闘能力を過小評価して貰うためにやっている節はある。いざという時に無詠唱で行動すれば意表がつけるでしょ、って戦法ね。

まあやらないよりはマシ、程度のおまけだからきつそうなら速攻で切り捨てるけど。


「『魔素回復機構』を壊された……?違いますね、こっちの術式の不備ではありません。循環する魔素側に不備(・・)を発生させたのですか」


そして、我らが王国一の魔法使いは私が何をやったかなど爆速で看破するらしい。

普通の人なら、「どうしてかわからないけど、魔術・魔法が使えなくなった」って認識しか持てないはずなのになぁ。切られてない手札ならまだしも、切られた手札に対して模範解答を返すことくらいは造作もないってことかな?


「術式不全なんて高度な技巧、私は得意じゃないからね。そういうのは第二王女(アリス)様に任せるのよ」


実際アリスなら、他人の魔法陣に干渉して発動不可能にします、とか暴発させます、とか出来てもおかしくない。そして同時にシルクエスさんがそれを出来てもおかしくない、ということでもある。


生憎『追憶の世界(ロスト・ワールド)』は魔法陣式ではない。完全に私の脳内と『観測』の力だけで──所謂暗算で使われている魔法だからね。

というか私の魔法は全てそう。『観測』とかいう一種の演算分析装置に全てを押し付けて、普通の人が魔法陣なしじゃあ発動出来ない魔術や魔法をガンガンに使ってる。


といっても、私のパーティーメンバーだとアリス以外そんな感じだけど。ラスティはあれだし、セリアは多分奇跡の類い。ジャンル違いかな?って感じ。

リルトンはそもそもの前提が魔法じゃないから、魔法陣にはならないしね。


「それに、世の中には魔法陣を使わない魔法のほうが多い。そうじゃない?」


固有魔術ならまだしも、と付け加える。

この世界における魔法陣というのは、そもそもが不必要なものとして定義されている。魔法というのは、魔素を代償に願望をそのままの形で叶える──いわば、現実改変の一つの方法。


だから、想いと魔素さえガンガンに投入すれば、基本的にどんな魔法でも発動出来る以上──魔法陣なんて概念が介入する余地はない。

そもそも、想いなんてよくわからないものを魔法陣として図式化するのは根本が不可能なこと。それ、感情論を因数分解やら微分やらしようって言ってるのと変わらないよね?的ニュアンス。


じゃあ、アリスやシルクエスさんが使う魔法陣とは何か。

それはイメージ(りょく)の強化である。

願望の力を明確にすればするほど発動しやすくなる魔法という概念を発動させるための補助。そして魔法発動時に、わざわざ「想い」というものを考えずに戦闘に集中し続けるためのもの。


だから、「大魔法です!」みたいな雰囲気を醸し出してる魔法を使う時──つまり、同時に想像する(かんがえる)ことが多い魔法を使う時には、魔法陣というのは重宝したりする、多分。


だからアリスも大技を使う時は魔法陣を出してることが多いわけだしね。


「確かに魔法陣を使用しない魔法は多いです。しかし、魔法継承という観点から見ると──どうしても、歴史ある魔法は、魔法陣を用いることが多くなるのです」


……なるほどね。

歴史ある魔法、言い換えれば後世に残すほどの価値ある強力な魔法。それは世代を下って継承していく都合上、魔法陣という共通概念(教科書)を用いて伝えられることが多い、と。

そして継承されてる強い魔法なんて、大抵切り札だからそこさえ「どうにか」出来れば魔法使い同士の戦闘ではどうにかなることが多い、みたいなところかな。


「でも魔法使いの中でも更に上澄みはそうじゃない。とかでしょう?」


「当然です。自ら新しい魔法を開発していたり、継承した魔法を完全に自分のものにして、魔法陣を必要としなくなっていたりするものですから」


魔素の流れを硬化させたからか、少しだけ穏やかになった諸攻撃を雑にいなしながら会話を続ける。


「なら私はその“上澄み”に入るのかな。魔法陣なんて使ったことない──『異次元の魔法使い(夢幻空間)』だからね」


 

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