5◇八百屋案内すら満足にさせてもらえない世界とは
◇
──1時間位かかって八百屋の案内が終わった。
長かったなぁ…後はセリア様と別れるだけ…それにしても疲れた。
慣れないことはそうそうするものじゃないなぁ……
「今日は案内して下さりありがとうございます、ハナさん」
「こちらこそ、セリア様と会えて光栄でし──
セリア様が感謝の言葉を述べようとした、その時だった。
急に、私の真横から大きな音がしたと思ったら、目と鼻の先の道に大きな穴が開いて──
「─────ッ!」
そこから、大量の「人」を組み合わせて一つにしたような、ようなおぞましい……
───つまり、異形の存在が出てきた。
『秘匿の出現!』
『避難勧告!危険度───Euclides』
『討伐対象───』
『──融合人形エフェミルドール!!』
何か聞こえた気がするけどそれどころじゃない!
運良く穴が空いた周辺に人は居なく、直接的な被害はなかったようだけど、皆怯えて腰を抜かしたのか動けなさそうだ。
……ってその前に───
「セリア様!速く逃げてください!」
私の声が届いたからかセリア様は急いで離れてくれた。
私の事を案じてくれたのか、セリア様が逃げてと言ってくれたけど、もう怪物の近くにいる人は私しかいない……もう逃げられないだろう。
それに逃げたら周りの人に迷惑がかかる。
なら、時間を稼いで救援が来るまで避け続けるしかないかな……
クレルモンにはmpが271貯まってるし、mpも全回復してる…つまり合計925ある…どうにかなるかな?
まあどうにかならなかったら死ぬだけなんだけど……何分で援軍っていうか助けがくるかな?
30分あればさすがに来るよね。
なら…『舞踏城』を30分間dexとaglを30倍で使う!
mpを900使うしほぼ攻撃も出来なくなるけど…逃げるだけなら十分でしょ!
それじゃあ不本意な戦闘開始!
「『舞踏城』!!」
これでaglは実質900になった。
改めて敵を見ると本当に気持ち悪い。
それに理不尽にこっちを見て憎む様な……呪う様な、何とも形容し難い、とても不快な視線を向けてくる……
顔が3つある上、胴体が潰れていて、そこから足や手が沢山生えている。
四本だけ他のより長い…あれが普段使ってる腕かな?
普段腕を何に使うかは知らないけど。
後見た目的に魔術は使ってこなさそう……
どっちかというと物理型っぽいし、何でここにこんなのが…って怪物が突進してきた!
それに割りと速い!
でも大量のドーピングを重ねた私より少し遅い位かな。
…って言ってもそんなに状況が良い訳じゃない。
今でギリギリってことは30分経ったら終わりだし、30分経たなくても私が対処をミスっても終わり。それにこっち側には攻撃手段もない。
だから攻撃してとめる系の技みたいのがもしあったら私の詰みだ。
とは言ってもここに飛ばされて2日目。
こんな見ず知らずの地で死んでたまるかってね。
「………っと!」
近づいてきたからに横に避けようとしたら、二本の腕で既に包囲されていた。
上に跳んで敵の向こうに、着地っと。
すぐに余ってる足で蹴ろうとして来たので急いで後ろに下がる。
一拍時間を置いて長い腕が勢いを付けて振るわれる!
もう一回跳んで……不味い!
予め相手の醜悪な腕が跳ぶ場所に置かれてる!
少し無理な体勢になるけど無理矢理後ろに跳ぶ。
「……痛っ、」
無理な体勢で跳んだからか、背中から思いっきり地面にぶつかった。
急いで起き上がると目の前に怪物がいた。
少しくらい落ち着く時間が欲しいなぁ……急いで腕の攻撃を横に避ける。
さて、仕切り直しだ。
これホントに30分間も続けられる自信がないなぁ…
◇
──あれから10分経った。
所々でミスが出てきて、その度に「ウォール」で相手の視界を一瞬塞いだり、「ファイヤーボール」で気を逸らしたり、「ウィンド」で1秒だけagl上げてリカバリーしてるけど…そんな小手先の逃げもmpがもう3しか残ってないからあんまり使えない。
本格的にまずい…どうしよ。
こうして考えてる今も怪物は私を攻撃するわけで…
「……っと!」
危な!もう少し反応が遅れてたら吹き飛ばされてた。
っていうかあれ?今私こいつより速いし逃げられね?
どうせ周りの人は逃げてるだろうし……周りを見渡すと少し離れた場所から見てる……
え?なんでこの人達は逃げないの?「あの女の子なら大丈夫そうね。」じゃないよ!
そこの婦人!私、攻撃手段、ない、集中力、切れそう、ヤバい。
こんな状況で逃げ出せないなぁ。すごい恨まれそう。どうしよ──
「大丈夫か!」
援軍来た!めっちゃありがたい!
「大丈夫じゃないです!助けてください!」
「王国第四軍団団長メルケルトが来たから安心しろ!」
その頼もしい援軍のトップに従って、私は安心しつつ後ろに下がる。
──それにしてもメルケルトさん超強い。
速度は多分今の私以下ではあるけど、物理も魔術もどっちも使いこなして相手どって翻弄してる。
それに速度だって、まだ本気を出してない感がある。
「第一小隊到着しました!」
「こいつの特徴は不死性だ!他の能力は私1人でも対応できるから、その対策を準備しろ!」
え?本当?
あれであの怪物の特徴が、不死性とか私に攻撃手段があっても倒せなかったじゃん。
…っていうかむしろ攻撃にmp使ってmp枯渇してた可能性すらあるなぁ…自分の無能さに助けられたわぁ。
「団長!用意出来ました!」
「私が深手を負わせて動きを止めるからその隙にやれ!」
「今だ!『不死生物抹滅魔術式』!!」
『討伐対象の討伐を確認──避難勧告解除』
《レベルが上昇しました》
《職業レベルが上昇しました》
凄っ!本当に倒せたよ。どうしよ、今の内に一般人の振りをして帰れ……
「君、ちょっといいかい?」
ダメですよね分かってました。
これ、どうなるんだろ。
戦闘能力について聞かれる分には問題ないけど、出身とか聞かれたらめんどくさいなぁ。
「エフェミルドールについてだが」
「エフェミルドール?」
「ああ、すまない今回の『エネステラ』、あのアンデットの名前だ。それで、あれが落としたD.E.Iについてだが」
「ストップです、『エネステラ』とD.E.Iって何ですか?」
「もしかして君今回みたいな地下暴走に巻き込まれるのは初めてか?」
「多分そうです。地下暴走っていうのが私の予想通りならばですが。」
「地下暴走って言うのは王国というかここら一帯全体で2ヶ月に1度程度、長い時は半年起こらない時もあるが、そのくらいの頻度で起こる自然災害みたいなものだ。今回みたいに王都で起こることは滅多にないがな。それで強いやつ…つまり『エネステラ』が地下から今回の様に出てくる」
「この国の地下どうなってるんですか?」
「それが20m位掘ると急に掘れなくなるんだ。だから放置されてる。それで、それで出てくる『エネステラ』を倒すとD.E.Iって言われる物を落とすんだ」
ほうほう?MMOでいうMVP報酬的なやつかな?
それとも汎用orレアドロップ的なもの?
「そのD.E.Iは良くわからないが倒した時に生きていた人でかつ一番活躍した人しか扱えなくてな」
なるほど……MVP報酬か。
ゲームチックな異世界だなぁ。
「でもD.E.Iは未知の鉱石だったり、武具だったり色んなパターンがあるからそれを狙って『エネステラ』を倒そうするやつもいるが…そういう奴に限って街の被害を考えなかったりするんだよなぁ」
あ、愚痴っぽくなってきた。
メルケルトさん、王国云々隊長とか言ってたし、そういう苦労もありそうだよね。
「すまない、愚痴みたいになってしまったが、要はD.E.Iの所有権は君にあるそうだから持ってってくれっていうことだ。因みに今回は防具だったぞ」
愚痴だなんてオモッテマセンヨ?
……まあともかく、そう言い残してメルケルトさんは帰って行った。
私、一番活躍したっけ?
どんな基準なんだろ?
まあいいや、貰えるんなら貰っておこ。
えーと多分これだな、って以外と軽い。
これ防具として使えるの?どっちかっていうと上着では?まあいいや着やすいし、見た目も変じゃないし。ある意味お洒落?ってね。
これぞ中世風ファッション術?
~~~~
D.E.I『不死融壊の衣』
vit+100
《不死融合》
mpを10消費してhpを1%回復する
《不死衣装》
この防具は壊れても再生する
~~~~
単純だけど強い、んだろうなぁ。
私のhpが低すぎて現状《不死融合》の使い道がない。
あっ、vit+100と《不死衣装》は美味しいです。
普段使いしても可笑しくない服だから私のvitがずっと100上がってる様な物だし。
そして、あの戦闘でレベルの上がった私のステータスがこちら!
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv14(ボーナスポイント:+240)(+exp21)
職業:不思議之住人lv14
hp…70/70
mp…11/1014 (+20)
str…70
vit…170「+100」
dex…70
agl…90(+20)
luc…7
「技能」
…【火属性魔術】lv1
…【水属性魔術】lv1
…【風属性魔術】lv1
…【土属性魔術】lv1
「番外技能」
…【重複魔術】lv1
「特殊技能」
…【御伽之城主】lv2
…【◼️◼️◼️◼️】lv1
称号
『唯一之取得者』
『廻遡宙の観測者』
『不可思議之秘密』
「固有魔術」
『限定空間制御』lv1
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(0/1000)
所有防具:不死融壊の衣
vit+100
《不死融合》
《不死衣装》
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さて、ボーナスポイントはどこに振ろうか……そうね。
hpの少なさは不安だし、この服との相性を考えてhpに100、そして職業上mpに振るのが効率良さそうだし100、今回沢山お世話になったaglに40振ってちょうど良いかな。
これでステータスはどうなったかな。
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hp…1070/1070
mp…11/3014
agl…130
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めっちゃhp増えた。
戦闘前と比べて何と107倍!
やったね、《不死融合》の使い道が増えるよ。
これで殴られても即死はないんじゃないかな。
まあ殴られる予定ないけど。
……ないよね?
今回戦闘?
っていうか逃げ回ってて思った事は、予想以上に『舞踏城』が優秀だし、mpの燃費も最初の印象よりは大分良いってこと。
「ウィンド」とかの消費mp見ればわかるけど倍率の3乗とか書いてある上に持続時間秒単位だからね。
圧倒的燃費効率に感謝。
そんな感じで独り反省会を開いていると…
「ハナさん!助けて頂き有難うございます。怪我とかありませんか?」
「セリア様、私は全く問題ありません、何しろ殆どメルケルトさんが対処してくれたので。セリア様こそ大丈夫ですか?御怪我とかされてませんか?」
「私も大丈夫でしたわ。ハナさんが守って下さいましたから。そうだ!私の家でお礼しなくては。今から予定って空いていますか?」
どうしよ、貴族の家とか100%面倒くさい予感がするけど断るのも角が立つよね。
貴族の誘いを平民如きが断るなんて!無礼者だ!……みたいに。
お願いですから悪徳貴族でありませんように。
「はい。大丈夫ですが、御迷惑にならないですか?」
「命の恩人を無下に扱うなんてそんなことは出来ませんよ。我が家はこっちです。付いてきて下さい」
11/24追記:文章の軽微な修正です。
作者と本編のQ&Aと裏事情コーナー
Q1:この世界に八百屋ってあるんだ。
A1:ありますね。…というか箸もありますよ?
日本食はほぼありませんが…まあそれもこれも『設定上』必然です。
あ、日本食チートは多分しませんし出来ません。作者が料理出来ないんで。
Q2:エネステラってなんじゃい。
A2:後の重要設定だから拒否…は流石にあれなので簡単に。
『80%キメラ』
Q3:戦闘シーンしょぼくない?
A3:作者ぁぁ…ということです。生暖かく見守って下さい、多分成長するかもしれません。
裏事情
このコーナーについて。
このコーナーはこの小説の『設定』を垂れ流すもので決して必須のものではありません。
それに必要なものは適宜本編中で出しますしね。
じゃあ何でこんなコーナーがあるのかと言われると…
あれです。推理小説の『読者への挑戦状』みたいなものです。
こんな設定があるからどういう展開になるか予想してみたら?…的なものです。
まあ最悪『あ、この主人公こんな事してるの草』みたいに思うためのもの…という認識でも構いませんが。




