43◇呪域よ!神域よ!双域を合わせ、神をも呪え!
私の懸念は正しく、最初からこの予定だったと言わんばかりの演出が起こる。
「騎士の選りすぐり…我が国の防衛の要…つまり各騎士団の団長の登場だ!」
そうして(ビルの残骸で)荒れ果てた闘技場に入ってきたのは…4人だった。何か一人だけ凄い強そうなんだけど。
シルクエスさんとメルケルトさんは知ってる…他二人は…まあこの流れ的にわかるけれども。
「第四軍団筆頭のメルケルトです」
「ご存知の通り私はシルクエスです」
「俺は第二軍団筆頭のセルトスだ!」
「そして私が…近衛騎士団筆頭のアルカトスだ」
やっぱり騎士団トップの方々か…
とてもじゃないけど本気で勝てるとは思ってない。
…見た感じ、アルカトスさん以外は魔銅の影響下かな。
忘れてたけど、初対面の人もいるし自己紹介しなきゃ。
「私は宮廷魔術師第六席のハナです」
軽く礼をしてから少し離れて待つ。
…うん、近距離戦は死以外考えられないからね。
「それでは!第2ラウンドの開始です!」
アリスの合図と共に私は先手をとるために急いで動く。
急いでビル群を再形成。
勿論相手も先手を取ろうと動いてくる。
つまり、私と同時に─────
「『戦闘結界』…『短期決戦仕様』!」
シルクエスさんの声が聞こえ…
「喰らえ!『斬撃飛翔』!」
セルトスさんの声が聞こえて…ビルを突き破って来た。
いや、えぇ…
いくら中身が軽いとはいえそれあり?
人辞めてない?
…予想外に人外の動きをしている団長様達に困惑しつつも、待ち惚けているわけにはいかない。
私はすかさず右手をセルトスさんに向けて、目の前に巨大な鉄の塊…鉄骨を大量に落とした。
ちなみに右手を向けたのはそっちの方がイメージしやすいから。
下手に何も指さずにやって消費mpが増えるのも嫌だしね。
そして後ろから忍び寄るメルケルトさんに対して左手で持った拳銃で牽制しつつ土砂崩れを起こして対応する。
そしてシルクエスさんの上空にビルを生成し──
「『袈裟断』!」
気付いたら、アルカトスさんが目の前に迫っていた。
慌てて『純白の十字教会』を取り出し…aglの暴力で応戦しようとするけど…あっちの方が速い!?
一応10000は越えてる筈なのに…そこまでやらないと近衛騎士は務まらないのか。
そんな感慨と驚嘆と共に剣技で吹っ飛ばされ──
え?吹っ飛ばされている?
その事実に気付いた私は急いで地面にクレルモンを突き立てて減速する。
…腕にかなりの負担がかかるけど我慢。
そして何もしないと確実に『反撃』が飛んでくるので、アルカトスさんの付近に大量に栓の抜けた手榴弾を作成。爆発の煙で見えなくなっている間に上空にビルを生成。これで行ったでしょ!
「…『近衛の掟』」
煙が晴れて見えるのはかすり傷がついたかどうかすら怪しいアルカトスさんの姿。
近距離で手榴弾が複数個爆発して、ビルが直撃したのにほぼ無傷ってマジ?
ほぼ確実に『近衛の掟』ってやつのせいだろうけど…
────許せない。
『近衛の掟』なんて非科学的なものはこの場に存在しちゃいけない。
ここは、私の世界だ!
鉄骨を速度を付与した状態で生成。これで時速80~120kmで飛ぶ鉄骨を量産。
でも全部避けられることは知ってた。
だから…私の目の前に来たタイミングで…狙った様にビルを発射!
流石のアルカトスさんも巻き込まれて時間を稼げている。
…いや、何で倒れないの?
「…『不屈の守護者』」
そう聞こえた瞬間。
地面が空に、空が地面に、世界が反転する。
つまり、私の視界が180°回転し…私の頭と体が別たれる。
痛 さ、痛み、苦痛……その類いの感情や感覚が襲ってくることを予見していたけど、こなかった。
恐らく神経が働いてないんだろう。
さて、私は思いっ切り首から下と上が別れて…
やっぱり使うことになっちゃったか…hp残しの道具の機能が不安定になるから使いたくなかったんだけど…
「『死帯享楽』」
まあ追い詰められたから…というか使っちゃったものはしょうがない。
hpは5%しかないが満タンだろうとどうせ一発喰らえば死だ。
変わらない。そして…魔銅への負の感情を利用して…アルカトスさんが反応する前に…
「呪域『非科学体系の崩壊』!」
からの…
まだ誰にも披露していない組み合わせをこの場に晒す。
全てを呪い溶かし落とす領域と、
「神域『科学式論理体系の世界』!」
神をも凌駕する世界の一端をここで合わせる。
さて、周りが見たことない位の地獄絵図になっている。
ビルが腐り落ちていると思ったら未知の力で浮遊し…空気中には黒い粒子と白い粒子が漂い…世界が白黒に見え…生きている者だけが色が付いている。
私も体感したことない地獄絵図でもアルカトスさんは何故か耐えられるらしくこちらに向かって先程よりは圧倒的に遅く…aglが加算されてる私と同じ速度か少し遅い位で突撃してくる。
私はそこらに浮遊してるビルに干渉しアルカトスさんに向けて動かす。なるべく近寄らせない様に立ち回り…その時間でアルカトスさんの回りのオーラが腐食されるのを待つ。
しかしそんな私の作戦は功を奏さず…遂に近づかれてしまった。
あの腐食されてる部分に触れるとどうなるかわからないので仕方なく呪域『非科学体系の崩壊』を解除し…代わりに
「神域『科学支配世界』!!」
私の全力。神ですら一度は倒せた力を使う。
その光景は圧巻だった。あれだけ周りを漂っていた粒子もビルもアルカトスさんのオーラも…全て消し去り…
残ったのは空に浮かべた月と…私、
そして…満身創痍のアルカトスさんだった。
体の至るところから出血し様々な所の骨がひしゃげて皮膚から飛び出ている。
…まだ動けるのか。
折角だからたった今思い付いた事を披露しよう。
呪域『非科学体系の崩壊』を再展開し…神域『科学支配世界』の様に圧縮していく。名付けて…
「呪域『絶対腐食領域』!」
そしてこれで私の周り半径3m程は白なんだか黒なんだかわからないカオスな色合いになってるだろうし私の目からはもはや何も見えない。
だから試しがてらにこう宣言して試合を終わらせる。
「神呪『絶対混沌世界』!」
神域と呪域、2つの世界を合わせた私だけの矛盾世界。
非科学と科学と魔法と呪いと…それら全てが詰まった私だけの世界を一瞬だけ展開する。
そしてその集まった粒子を全て外側に向けるよう発散し…そして解除する。
それと共に作られた満月を破壊する。
そうすることで客席からは白と黒の粒子が散らばり…
…
この戦いの始まりを告げた月が砕け散ったことでこの戦闘の終わりを感じ取れるだろう。
そして最後に口上を述べて去る(逃げ帰る)ことにする。
さて、私もぼろぼろだけど最後位は格好つけさせてもらおう。
「今宵の奇跡はこれにて終演である!」
「改めて自己紹介しよう!」
「私が新宮廷魔術師第六席!」
「片瀬花奈である!」
そう言って私は足早に出口に向かう。
mpが足りないのと地味に開始と同時に消費するhpのせいか、今更痛みが出できたので耐えながら歩く。
端から見れば圧勝かもしれないけど実戦なら私はもう使い物にならない。
全ステータス半減にmpは更にそこから半減。その上【御伽之城主】関係の魔術も使えないし…何なら普通の魔術も使えない。
今出来ることは…精々神域と呪域位?
…なら以外と出来ることあるのでは?まあステータス半減やら何やらで相手の不意打ちで一撃死するけど。
会場の横でシルクエスさん達に挨拶しつつこっそり帰る。
…私以外は手加減してたってことだね。
この話は後々修正をかけるかもしれません…
といっても内容を変えるわけではなく、表現とかですが。




