3◇職業選択の自由と思想の自由が欲しい今日このごろ
ここのところ十数分のあらすじ。
ロンラさんと数分間雑談する。ギルドに戻って依頼達成の報告と報酬をもらう。
ついでに金貨を銀貨10枚に両替してもらう。
言葉にまとめるとたったそれだけだけど……実際問題としてかなり疲れた。
といっても、精神的なものがメイン。
別に肉体労働はほとんど移動だけだからね。流石にそこまで脆弱な肉体してないのでね……
さて、それはそれとしてこっからどうしよう。
色々踏まえるとレベルは上げたいけど、今街の外にでてもゴブリンにすら勝てる気がしないんだよなぁ……
一応武器としてクレルモンはあるんだけど、残念ながら武器があろうと人型生物を容易に殺傷出来るだけの腕力はない。
「そういえば……ハナの職業って何だ?似合ってねぇがお偉いさんの嬢だったりすんのか?」
なんか流れるように罵倒されてない?え?もしかして喧嘩売られてる?
ふと気付くとそこにいたギルマスに職業を聞かれる。
まあギルマスには素直に言うべきだろうなぁ……何かオススメの職業とか教えてくれるかもしれないし。
「まだ無職。一般引きニート。何かオススメある?」
個人的には頭脳労働系のが性に合ってるから、願わくば研究系……叶わないなら後方支援系がいいよね。
後ろからバーン!って魔法撃っていく感じの役職のがいい。
「ニート?何だそれ?バカだから難しい語彙を使うなよ。それにしても無職とは意外だな」
あ、やっぱり?気品オーラが零れ出ちゃってたか……
これが中学というミニミニ社会縮図を経験した経験の賜物、ってことよ。
「昨日の動きから何らかの職業についてると思ったんだが。まあオススメって言われてもハナが何の職業に就けるか判らんから何ともいえないなぁ……」
……昨日の動きって何だろう。
別に学校の授業以外で本格的に武道とかやった経験はないんだけどな……
もしかして秘められた才能が開花しちゃった……ってこと!?
「無職ってことは就任可能職もわからないんだろう?ここで見てみるか?」
……多分あれだ。
ギルマスが『昨日の動きが凄い』って評してくれたけど、アニメとかゲームとかの影響かもしれない。
あと後ろ見るやつ。
えーと……『限定空間制御』って名前のやつ。
「ん、お願いする」
──就職可能職業。
もしかして生まれながらに職業が決められてるタイプの国家体制だったりするのかな?と思ったけど、どうやらそういう意味じゃないらしい。
ファンタジーである『戦士』とか『魔法使い』みたいな職業の方らしい。
そう言ってギルマスに連れられてきたのがギルドの3階にある部屋。
「この水晶に触れてくれ。そしたら何に就けるかでてくるはずだからそっから自由に選んどけ。一応個人情報だから俺は出とくな」
そう言ってギルマスは部屋から出ていく。
中世ヨーロッパって個人情報観念とかそこまでギチギチじゃなさそうなのに、気にしてくれるのはありがたい。
ああいや、別に魔法のある世界を中世ヨーロッパって限定してるわけじゃないけど。
部屋の中心にある水晶は何処か科学的で幾何学的雰囲気を出しながら……色んな所に魔法っぽい装飾や紋様がある。
名状し難き水晶に恐る恐る触れると、表示が浮かび上がってくる。
──選択可能職業一覧、か。
──────────
選択可能主職業一覧表
・魔術師
・軽戦士
・料理人
・重戦士
・女優
・予測者
・既死者
・不思議之住人
・異界者
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……該当項目「異界者の検知」達成を確認。
「才能計測機器」の隠蔽録音を再生。
経年劣化による音声の欠損を確認。再生します。
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もし、これを見ている人がいるならば君は地球の人……いや、ここの世界の人ではないのだろう。
私も日本人……いや、元日本人と言った方が正しいだろうがそんな感じだ。
あまり時間がないので、簡潔にだけ説明するとしよう。
私はいわゆる転生者というやつで、これでもここで■年以上生きてきたが一回も日本人……いや転生者にすら会ったことがない。
だから正直この機能が使わ■るとは思ってない上、もし使われたとしてもこれを録音してから何百いや、何千年後になってるかもしれない。
だが、これは最早私が転生者と通じ会える最後■希望でもある。
本当は直接会って話したいんだがそ■そろ■■がな……
おっと、そんな事を話すために録音してるわけではない。時間があまりないんだ。
おそらく君は見知らぬ世界に来■とても困惑してるだろう。
もしくはここが異世界だ■信じてないのかもしれない。
どちらにしても安心し■くれ……と言いたい所だが残念ながら言うことは出来ない。
この世界にはあの■■■■■■■■■のせいでそこらじ■うににモンスターがでてくる上、モンスターも基本的に元の世界のアスリート達と比べ■もだいぶ素早い。
さらにライトノベルであるような「魔法」の様な便利な物はなく、現代日本のよう■科学技術が発達していて──それが生活の主軸となっている。
ルナエン王国宮廷科学研究者筆頭として国民のために、一転生者として後続の転生者のために、色々な物を遺してき■つもりだが……君が現れたその時まで残っているかわからない。
一応全て言っておく■機能はともかく、場所は信用しないでくれ。
まずは一番■自信作、『第■種永久原■間力生成機』……通称「小型発電機」。
機能としては名前の通■半永久的にエネルギーを作り出す機■で、ルナエン王国を始めとする大国に保管させて■る。
王城に入れるようになるまでは……まあ、頑張ってくれ。
後、小型発■機に向かって「ナポレオン」というと、それの管理■権限を入手できるから■ってくれ。
次に……元の世界に帰る手がかりになる──おっと他の機能のことも考えると録音できる限界時間か。
そうだな……この機械は大量生産済であるが故に、後世まで残っているだろうし……よし、すまない。
続きは小型発電機に同じようにいれておく。
それでは、これが誰かに伝わることを信じて。
天整統霧生より、後続者へ。
─────────
……後半の情報は重すぎるからまた今度考えるとして。
っていうか忘れてたけど職業もやばいやつあったなぁ……
個人的には『不思議之住人』か『予測者』、それか職業を明かさない前提で『異界者』らへんかなぁと思ってはいる。
職業によって覚えられる技能が違うんだとしたら、『既死者』は便利そうな雰囲気もある……
でもなぁ……既に死んだ者って名前がなぁ……!
なんか女子として、いやいや生きている人間としてイヤでしょ。
どうせ変更できるだろうし『不思議之住人』にしようっと。
《職業:不思議之住人により称号を獲得、mpに上昇補正、ボーナスポイントの増加》
~~~~~
『不可思議之秘密』
効果:他者からの自分に対しての鑑定を阻害する(鑑定阻害・特)
~~~~
あれ?この職業優秀じゃない?
只でさえ隠さなきゃいけない、もとい隠したいことが多い私のステータスがバレる心配が減るってのがまず大きい。
更に考えると、もしバレたとしたら逆説的にその人の鑑定能力が信用できるわけだし……いや一応バレたら色々不味いんだけど。
その上mpを大量消費するタイプの絶望的燃費を誇る私の特殊技能とも相性が滅茶苦茶良さそうなのよね。
「うーん、いや……違う?」
あの特殊技能のおかげで、この職業が出たと考えたら相性良いのは当たり前なのかもしれない。
まあどっちでもいっか、優秀なのには変わらないし。
とりあえず重そうな話はまとめて夜とかに考えるかな……
とは言っても、これから寝るまでやること無いのもまた事実。言っちゃえばアルティメット暇なのよね。
……まあ、取り敢えずギルマスの所に戻るとしますか。
「どうした?5分以上かかってたが……何かあったのか?」
そりゃあ職業選ぶだけで5分も10分もかけてたら怪しまれるよね、知ってた。
ギルマスには何処まで話したものか考えないといけないんだけど……まず転生者のことは話さないとして、職業は素直に言おうかな?
一応少しは濁しておくか。
「持ってる技能に関連した職業になった」
「わざわざそう言う言い回しをするってことは、職業の名前は言うつもりないんだな?」
「もちろん……襲われるかもしれないから」
「いや、襲わねぇよ。で、ハナはこの後どうするんだ?」
「んー、そうね。特に決まってないけど……」
「じゃあ近場の森に俺と一緒に行かないか?」
「えっ?会って2日目の人をデートに誘うのはちょっと……」
「勝手に勘違いするな。そんな意図はない!それに俺には妻子がいるんだが……」
あら意外。いないかと思ってた。
冒険者稼業ってどうしても安定って概念から離れてる職業だし……
「それならいいけど。もしかしてギルマスって暇人?」
「……まあな。王都のギルマスが忙しかったらその国大丈夫か?って話になるだろ?」
「それもそうね。じゃあその森とやらに行きましょう」
◇
そんなこんなでギルマス同伴で最初の森──正式名称はモル森林って言うらしい──に向かうことになった。
うん、名前とか色々突っ込みたいところはあるんだけど……それはそれとして。
良く良く思い出してみれば私、あのゴブリンから逃げた時からmp以外基本変わってなくない?
もしかしてまた逃げることになる?
……そういえば不思議之住人になった時に『ボーナスポイントの増加』って言ってたなぁ。今の内に見ておこうっと。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv1(ボーナスポイント:+10)
職業:不思議之住人lv1
hp…10/10
mp…25/220
str…5
vit…5
dex…5
agl…15(+10)
luc…2
「番外技能」
…【重複魔術】lv1
「特殊技能」
…【御伽之城主】lv2
…【■■■■】lv1
称号
『唯一之取得者』
『廻遡宙の観測者』
『不可思議之秘密』
「固有魔術」
『限定空間制御』lv1
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(4/1000)
~~~~
さて、とりあえずボーナスポイントを全てaglに使って…
……
あっ!そういえば私って攻撃手段0じゃんどうしよ。
aglが25になったのはいいけど、これじゃあゴブリンより速いけどどうしようもなくない?
何なら特殊技能使っても攻撃できるようなものないし、八方塞がりでは?
っていうかそもそも【重複魔術】も録な魔術覚えてないからつかえないじゃん。
「ホントどうしよ。はぁ……ミスったかなぁ」
「そんなに俺と行動するの嫌だったか?」
「あ、声に出てた?……ってそう言うため息じゃなくて、ゴブリンに対して攻撃手段がないなぁって」
「え、クレルモン渡したろ?」
「え、でもあれ攻撃力素手並でしょ?」
「もしかしてハナってstrかなり低い?」
低いも何も5なんて口が裂けても言えない。もし言おうものならレベルがだいたいバレる。
別にそれはバレて困る物ではないけど。もっとヤバい秘密ごとが幾つか出来ちゃったしね。
それはそれとしてほら、弱みってなるべく隠したいじゃん?
「うん、かなり低い。どうする?帰る?」
「なんでそう帰ろうとするんだよ……しょうがない、帰るまではこの武器を貸してやる。そんな強くないがゴブリン程度なら十分だろ。」
そう言って渡されたのは強い武器……ではなく普通の鉄の剣だった。
って言っても普通の鉄の剣見たことないし、どんな感じなのかは知らないんだけどね……
よし、『舞踏城』を効果時間1分に効果はagl、dexは2倍で発動しよう!
丁度いいし、実験がてらクレルモンの貯蓄魔力を使うとして……
「『舞踏城』発動!」
何かギルマスに変な目で見られた様な気がするけど、効果時間が惜しいから急いで行こう!
「……」
──ゴブリンが視界に入る。
ゴブリンがギルドでの体験通り真っ直ぐ突っ込んでくる。
容易に予測出来る場所に鉄の剣を置いとくだけで勝手に当たってくれるけど……圧倒的str不足が原因なのかかすり傷的ダメージしか入らない。
……そんなことを繰り返しながら、どうしようか考えてる内に『舞踏城』の効果時間が切れそうな時間──つまり1分が経過する。
その瞬間、轟音が響き渡る。あたり一帯が捲れるような轟音。
《レベルが上昇しました》
《職業レベルが上昇しました》
目の前にいたはずのゴブリンがいなくなっていた。
驚いて後ろを振り向くと、ギルマスが丁度大剣を仕舞うところだった。
も、もしかしてギルマスってあんな扱いしてるけどめちゃくちゃ強い……?
「すまない!まさかゴブリンに軽傷を負わせる程度しかstrがないとは思わなかった。あの様子だとstrは20いってないだろ?」
もしかして煽られてる?確かに事実だけど煽られてる?
「お前が帰りたがってた理由がようやくわかったよ。暫くはギルドの訓練所のマシンで訓練しような」
う、うぐぐぐ……なんか舐められてる。
でも悲しいことに事実だし何の反論も出来ない……!
◇
森から帰ってきた後訓練をし、ギルマスと別れて宿に戻ってきた。今度は肉体的に疲れたな……
さて、後回ししていたことについて考えとしますか。
あんまり気が乗らない……わけじゃないけど、なんかなぁ。
まず最初にあの伝言について。
まあ話を聞いた限り「ルナエン王国」っていうとこの王城──そこに何か凄い機械があるらしいから、取り敢えず行っておきたいのはある。そこそこ優先すべき目標だね。
ちなみに「ルナエン王国」が何処にあるのか~みたいなことを私の0に等しいコミュ力を振り絞って女将さんに聞いたら、この国の神話での名前だって言ってた。
神話の時代に行けと……?
参考までに、その代償に私の今日の人と会話出来るゲージが0になった。
というか、神話になるほど昔の時代の人だったのかあの人。
……ってことはもしその「ルナエン王国」の時代から城が変わってないなら……この国の王城にあるってことだよね。
なら王城に入れる位にならなきゃだめかぁ……
まあ冒険者としてランクを上げれば行けるでしょ。異世界ファンタジーのテンプレ的に。
最悪行けなかったとしてもギルマスに頼み込めば行けそうな気がしなくもないし……
はいじゃあ次。
あの伝言で「魔法」がなく「科学技術」が発展してたって言っていた件についてだけど……いや、どうみてもあるし、何なら私も普通に使ってるし、どういうこと?
魔法バリバリあるし、使われてるように見えるが……
「神話の時代」と今では状況がかなり違うのかな?
王城にある次の伝言で何か聞けるかもしれないし、これも放置でいいか……放置するしか出来ない、って感じだけど。
三つめにギルマスにはバレないようにしてたけど私、生き物殺せない気がする。
確かにかすり傷しか与えられなかったけど、やろうと思えば目とかを剣でさせばダメージ入るはずだった。
それを思いつくのにできないってことは多分殺せないよなぁ……心持ちとかそういう問題で。
ギルドの機械でやってみれば慣れられるかな?
それとも、VRゲーム気分でやればいけたりしないかな。
まあVRゲームなんてあんまなかったし、自由度無限!みたいなのはやった事ないけど。
まあこれも後回しで。何も解決してない気がする……
はい、最後。
……とりあえず、お風呂が切実に欲しい!
今は水?お湯?浴びを桶でしてるだけだから正直気持ち悪い!
お金ためたら買えるよね?小説とかだと貴族なら持ってるみたいなことも多いし。
あれ?要は冒険者として大成しなくちゃ何もできないのでは?
大したチートもなさそうな私にそれ出来るの?
あ、というわけでレベルアップしたわたしのステータスがこちら。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv2(ボーナスポイント:+20)
職業:不思議之住人lv2
hp…15/20
mp…146/250
str…10
vit…10
dex…10
agl…30(+20)
luc…2
「番外技能」
…【重複魔術】lv1
「特殊技能」
…【御伽之城主】lv2
…【■■■■】lv1
称号
『唯一之取得者』
『廻遡宙の観測者』
『不可思議之秘密』
「固有魔術」
『限定空間制御』lv1
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(0/1000)
~~~~
ところで名前はいつまで「?」で押し通すのかな?
いい加減に片瀬花奈って名前を公的に認めて欲しいんだけど。
…………ボーナスポイントどうしよっかな。
aglは大分増えてきたし……よし、mpにしよう!
mpに全部使ってっと……
何々?
mpが……650!?1割り振るごとに20もmp増えるの?
これも職業効果だろうなぁ……こ、これまでもmpに割り振るのが正解だったのでは?
「…………」
きょ、今日もお疲れ様でした、お休みなさい……
追記11/7:表現の微細な訂正。文の形を整えただけです。
作者と本編のQ&Aと裏事情
Q1:展開が突然過ぎ、意味わからんぬ。
A1:これを書いてる当時の作者もそう思ってました。
そういうわけなので、突然展開も許してくれませんか……?
Q2:1話3000文字にする。(6000文字超)
A2:ステータスとか除けばそれくらいに…なりませんか。
まあ区切りの問題です。区切りって言っとけば良い感じになるって言ってました。
Q3:ステータス表記多すぎ
A3:ステータスがすぐに変わる花奈が悪いのです。
……嘘です、作者の責任です。
次の次の次位からは多分減ります。
というかステータス変動の機会が減れば自然と消えますね。
裏事情3
ロンラさんは当初別の名前でした。
何で変わったかと言われれば後の登場人物と名前が被りました。
じゃあ何でこっちを変えたのか、ですって?
…話に出てくる度合いが原因ですね。
まだそんなに人が出てきてないのに名前が被る作者の脳内が悲しいのです。




