9◇現の呪い、又は胡蝶の夢で
今回は少し暗い話になります、苦手な方は注意です。
…といってもこんな所まで辿り着けたなろう読者様達なら既に馴れているかもしれませんが。
「セリアって戦えるの?」
「魔術なら少しは…私は水属性が得意なのであまり攻撃は出来ないんですけどね。後方支援は任せて下さい」
それは心強い。
一応、私も水属性使えるとは言えまだ一回も使ったことないからね…攻撃は私の役目かぁ…
おっ、丁度ゴブリンが出てきた……いや、出てきてしまった…って、あれ?どう見てもゴブリンじゃない!
明らかに何かゴブリンの上位種類っぽいじゃん色とか大きさとか……私ってもしかしてめちゃくちゃ運悪い?
もしかして、ボーナスポイントでlucも上げたほうがいいの?
まあとりあえず信頼と安心の『舞踏城』を使って…まあaglを10倍に5分でいいかな……ってそういえばこれって味方にも使えるんじゃん。
じゃあセリアにも使って…
「『舞踏城』(小声)」
「ハナさん?急に体が軽く成ったんですけど何かしました?(小声)」
「ちょっとした魔術。aglが5分間10倍に成るの」
「それって、メチャクチャ強くないですか?」
「その話は今は置いといて目の前のゴブリンの上位種らしき奴をどうするか…」
「そうですね…あれはイリーガルゴブリンという上位種です。hpが他のゴブリンより高い上にレベルが高く成りやすいので有名です。……申し訳ありませんが、私はハナさんの迷惑にならないように後ろから回復に努めます」
…あ、やっぱり私が戦闘するのか、ホントにどうしようかな。ゴブリンとかでも人型だし殴るのも抵抗あるからな…ここの世界の人は強いなぁ…っていうかそういう生活に慣れているだけか。
元の世界でも縄文時代とかはそんな感じだったんだろうし。弱音吐いても仕方な…痛いッ!
「……ッ!!」
ゴブリンに殴られた。痛い。でも体がすくんで抵抗できない。
間近に迫る死の恐怖に脳からの指令が体へと届かない。
私がおかしいのかな?こないだはあの化け物相手に立ち回れたのに……痛ッ!
「……っ!!」
やっぱり、痛い、すごくいたい。
hpも減っていってる。もう110/1070しかない、あっ、このまま行くと次でhpが全損する。
何で私がこんな目に遭わなきゃいけないの?
私は何もしてないのに…
私は覚悟して…諦めて……目を瞑って………
…
…
…?痛みが来ない?目をあけるとセリアがたおれている。
なんで?うしろにいたはずじゃないの?オカシイよね。
なんでワタシのまえで血を流して、倒れてるの?私を……庇ったの?セリアが倒れたのはワタシのせい?私があれを…イリーガルなんたらを殴れ…殺せなかったからセリアが…セリアが犠牲になったの?
────
当時の私は貴族令嬢に怪我をさせたことをどう対処しようとか、セリアが本当に死んでいるかどうか確かめようとか、とっさに【水属性魔術】で回復してみようとか考えてなかった。
唯、前日に初めて会ったとはいえ、『親しい人』が倒れている状況に動揺していたのとまだこの世界に…元の世界とは違って人の命が軽い世界に慣れていなかったのかもしれない。
今回に限っては運が良かったとしか言い様がないけど…私がある意味での異世界の洗礼を受けた日だった。
────
セリアが、私の…私のせいで…
「ファイヤーボールを…ダメージ…2000で…」
燃え盛る根源よ…我が意のままに従いて、敵を穿て…ファイヤーボール…」
異常な熱量を含んだ火球は、真っ直ぐにイリーガルゴブリンに向かっていき…それを焼きつくした。
原型がなくなるほど…生物を…人型生物を殺した…燃やしたけど何も感じなかった。
それよりも…そんなことよりも重要なことがある。
残りのmpを全て使って私はとある魔術…「ヒール」を使う。
「押し流す根源よ…我が意のままに従いて、此の者を癒せ…ヒール!!!」
mpがなくなったのは頭では理解できているけど。
「押し流す根源よ…我が意のままに従いて、此の者を癒せ…ヒール、押し流す根源よ…我が意のままに従いて、此の者を癒せ…ヒール、押し流す根源よ…我が意のままに従いて、此の者を癒せ…ヒール」
感情はそれを許さずに、
私は同じ事を只繰り返す機械となっていた。幸運にも私の願い、想いが通じたのかそれとも運命の気紛れか、
「……ハナさん、どうしたんですか?」
「セ、セリア…良かった…生きてた…ごめんなさい。本当にごめんなさい。私のせいで…大怪我を…危うく死んじゃう位の大怪我をさせてしまって、ごめんなさい。セリアは私の事嫌いになったよね。だから…」
私は混乱と焦燥でまともな言葉を紡げなくなっていた。
「何言ってるんですか?私が死にかけていたとしても、私が私の意思でハナさんを護ろうと思って行動したことです!だからハナさんは悪くありません。むしろ私が回復してもらった事を感謝しなきゃいけません!だから謝罪は受け取りません!」
「え……でも、私がイリーガルゴブリンと戦わなかったから…」
「でも…じゃないです!ハナさんがなんでイリーガルゴブリンの前で何も出来なかったかなんて分かりませんが、とにかく、今、私が生きていて、ハナさんに回復してもらったのは紛れもない事実です!だからそんなに気負わないでください!」
「………」
「……うん、わかった。もうだいじょうぶ……本当に大丈夫」
私は少しだけ覚悟を決めて話す。
「セリアに話したいことがある…」
「何ですか?謝罪なら聞きませんよ」
「違う…何で私がイリーガルゴブリンに対して何もできなかったか、その理由」
「言いたくない事情があるなら言わなくていいんですよ」
「…ううん、言う。全部は言えないから…理解されないかもだけど。何で私が何も出来なかったかというと、私が一回も、一回たりとも人型の生物を殺したことがないし殺意を向けられる事がなかったから」
「…?やっぱりハナさんは貴族だったんですか?そうでもなければゴブリンにすら遭ったことないって…それにあの『エネステラ』の時はあんなに…」
「あの時は気が動転していてそんな事考える余裕がなかった。それに私は貴族じゃない。一般人だし平民。だからこそゴブリンにも遭ったことはなかった。それは本当。ていうかそもそも4日前に初めて魔術を使った」
セリアが意味がわからなそうな顔をしてるけどそりゃあ意味がわからないだろう。
こっちの世界ではゴブリンみたいな存在が当たり前になってるから……けどいまだに私は転移してきたことをセリアに明かすかどうか決めかねている…けど、今決めた。
「それ以上の話は今は言えないけど…いつか絶対に言う」
「色々わからないこともありますが…わかりました。私は待ちます。…取り敢えず今日は帰りましょうか」
そんな流れで帰る事になった。
幸いにもセリアには残るタイプの傷痕が出来なかったので何事もなかったことにしようと言われて、思わず頷いてしまったけど…いつかちゃんと言わなきゃな。
勿論転移のことも…それじゃあ今日もお疲れ様でした。
お休みなさい……
──朝になった。おっ、今日はまだ7時だ…まあ昨日色々あって早く寝たからね。
さて、今日はどうしようか。まあ一日位のんびりする日があってもいいか。
あんなこともあったしね。
──朝ごはんを食べて部屋に戻ってきた。
朝ごはんを食べながら思った事だけど、この世界って余りにもゲームっぽくない?
ステータス表示もそうだし勿論技能っていう概念もね。
よし!軽くだけど、この世界のゲームっぽい所を思い付くだけ並べて見よう。
①『ステータス』の表示方法(str、vitとかの書き方)
②技能の説明欄に説明用文字が入っていて数式っぽい。(a人にn分間~みたいなの)
③『エネステラ』という「ボス」を倒すと『D.E.I』が貰える。
④技能の上がりかたが回数で決まってる。
⑤『エネステラ』と遭遇した時になんか表示がでてきた。
パッと思い付くのを並べて見たけど意外と多いなぁ…そうだ、折角学院入ったんだし先生に原因…というか理由みたいの聞いてみればいいじゃん。
よし、忘れないようにメモして、明後日登校する日に持ってくか。
…って言っても私が疑問に思った理由って「ゲーム」っぽいからなんだよね。
ってことは先生に言ってもわからない?
まあ、聞いてみてから考えよ。
さて、次は何しようか…回数で技能のレベルが上がるんだから前の「ファイヤーボール」と同じように連発すればいいじゃん……
まずは「ファイヤーボール」を乱射してレベル10まで上げるか…勿論【重複魔術】を使って。
検証した結果1088回打った所でレベルが最大になった。
今までの事を併せて考えると、3025回でレベル1からレベル10まで上がるらしい。
ってことは恐らく対称的だから他の属性も多分3025回使ったら上がるでしょ。
問題はこれが全ての技能で使える法則かどうかって所。
少なくとも『舞踏城』の使用回数的に【御伽之城主】は違う。
てことは固有技能は違うのかな?後【火属性魔術】のレベルが上がったからmpの最大値が地味に増えた(144だけ)のと新しく使える魔術がある。
「ファイヤーウォール」
消費mp:(持続時間s)×(2耐えられるダメージ)
まあ言いたいことはわかるけど…パッと見私にとっては「ウォール」の下位互換かな?
こっちはもし触れてくれたら炎上しそうだけど多分弓とか貫通するだろうし…
そういえば今日、昨日と自分のステータス全部は見てなくない?
ということで久しぶりに自分のステータスを全部出してみた。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv14(ボーナスポイント:+0)(+exp321)
職業:不思議之住人lv14
hp…1070/1070
mp…3036/3244
str…70
vit…170「+100」
dex…70
agl…130(+60)
luc…7
「技能」
…【火属性魔術】lv10(max)
…【水属性魔術】lv1(1)
…【風属性魔術】lv1(1)
…【土属性魔術】lv1(1)
「番外技能」
…【重複魔術】lv1
「特殊技能」
…【御伽之城主】lv2(4)
…【◼️◼️◼️◼️】lv1
称号
『唯一之取得者』
『廻遡宙の観測者』
『不可思議之秘密』
「固有魔術」
『限定空間制御』lv1(1)
『お風呂メイカー』
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(0/1000)
所有防具:不死融壊の衣
vit+100
《不死融合》
《不死衣装》
~~~~
そういえばこのステータス表記って微妙に不親切だよね。
vitとかaglの後に付いてる( )って恐らくボーナスポイントで割り振った分なのと「 」は防具の分なんだろうけど、hpとmpはボーナスポイントの分の( )表記がないし。
さてはこの仕組みの作成者サボったな。
後地味に仕組み変わってるし。
アップデートでもしたのかな?
前は技能の後ろに( )表記なんて無かったし。多分そのレベルになってからの使用回数だけど…mp3025以上あるし一属性レベル上げられるじゃん。
それじゃあ【水属性魔術】上げるか。何かと役に立ったし。
……これから役に立つ機会があると困るけど。
3025回分の詠唱を1回で済ます【重複魔術】の優秀さを改めて実感しつつ使った。
まず新しく使える魔術はこちら。
「ウォータージェット」
消費mp:(飛距離m^2)×(2直撃ダメージ)×(直径÷10)
「ウォーターウォール」
消費mp:(持続時間s)×(3耐えられるダメージ)
ハイハイ下位互換、下位互換…なんでこんな適当なのかというとレベルを10に上げたときにこんなアナウンスが聞こえたからなんだけど何これ?
《【火属性魔術】と【水属性魔術】
のレベルが一定値に達し、かつその他の条件を満たしているため【氷属性魔術】が解放されました》
『【氷属性魔術】が一定レベルを越えたため
「アイスボール」
真っ直ぐ敵に向かい相手を凍らせダメージを与える
消費mp:(飛距離m^2)×(2直撃ダメージ)×(直径m÷10)×(速度m/s)
※効果:相手は凍化。(100-耐性%)
mpを10追加で払うと1%上昇
が使用可能になりました』
属性増えたんだけど…これ絶対【風属性魔術】と【土属性魔術】をlv10に上げたときも何か属性増えるでしょ。
後耐性とかいう未知の概念増やさないでくれない?
多分私それ0よ。
さて、mpもほぼ0になったことで本格的に暇になったな…セリアのとこは昨日が昨日だから行き難いし、そもそもセリアって貴族令嬢だからアポなしじゃ会えない気がする。
商店街はどうせ何かに巻き込まれるかでゆっくりできない気がするからパスで。
ギルドはそもそもmpないから行っても依頼もあの戦闘練習も受けられないし…よし、寝ましょう!※昼前
たまにはこういう日があってもいいでしょ。
それじゃあお疲れ様でした?
お休みなさい。
一言コメント
この作品は『こういう』展開が割と多くなる予定です。
今回の話を読んで少しでも不快感などを抱いた方はブラウザバックをおすすめします。
作者と本編の裏事情
Q1:セリアがいい人すぎない?
A1:はい、凄く『いい人』です。
理由…というか原因はセリアの過去編で。
Q2:花奈の回復速度はやくない?
A2:回復してないです。この主人公、かなり精神弱いんで。
Q3:魔術に確率表記あるの何で?
A3:設定上必然…この言い訳多すぎますね。
少し言うなら『そうした方が魔術設計上効率が良い』からです。
本当にどうでもいい裏事情9
この話を書く上で一番時間がかかったのはサブタイトル。




