パートB エルフ
「やっほ~、みんな元気してた~?」
「あっ、可憐おねえちゃんだ!」
「本当だぁ」
「おねえちゃん、いらっしゃい」
可憐が孤児院『あさひ園』に入るなり大きな声で挨拶する。
その声に反応して子供達が笑顔で出迎え、可憐のもとに集まる。
「絶斗お兄ちゃん、いらっしゃい」
「わーい、隼人お兄ちゃん遊ぼう」
「雪お姉ちゃん聞いてよー、太一が昨日ね~」
「供花姉ちゃん、絵本読んで~」
「おい祐! レインみせろよー!」
俺たちのもとにも子供が群がる。
抱きついたり、気を惹こうと腕を引いたり、と揉みくちゃにされる。
「おいこら離せって、というか何で俺だけ呼び捨てなんだよ」
祐の周りには、特に元気な男の子が群がって、パンチやらキックやらが飛び出している。まあ、毎度のことだ。
「みんなよく来たね、いらっしゃい」
子供達から遅れて、一人の女性が出迎えてくれた。
俺たちが孤児院にいた頃から面倒をみてくれていた先生だ。
年齢は60を超えているが、落ち着いた物腰と年齢を感じさせない背筋の良さが印象的で、俺たちのお母さんとも言うべき存在。
「先生こんにちは~。何か手伝うことはありますか?」
「ありがとう大丈夫よ供花ちゃん。それよりも子供達と遊んであげて」
「は~い。じゃあ―――あっちで遊ぼうか」
供花が女の子たちを引き連れて本棚へ移動する。
いつものように絵本を読んであげるのだろう。
隼人、可憐、雪も子供達と遊び始めた。
俺は先生に挨拶がてら気になっていたことを聞く。
「先生お邪魔します」
「絶斗くんいらっしゃい。みんなが来てくれて私もうれしいわ」
「ありがとうございます。ところで、ここに来る途中、やけに警察の数が多いように感じたのですが―――なにかあったのでしょうか?」
「ええ、それね……。なんでもフォースウルフがこの近くに潜伏してるらしくてね。それを探しているみたいなの」
「フォースウルフ……」
――――――――――
反政府組織『フォースウルフ』とは、20年ほど前から頭角を現してきたテロ組織だ。
新たな月とエルフ・オーク・ドワーフの3種族の出現により、世界の様相は一変した。
当初の混乱も収まり、3種族から提供された新しいテクノロジーは人々の生活を急速に向上させる。
医療の発達により病気のほとんどは完治可能となり、体の一部を失っても再生可能で、生まれながらに不自由な体であっても2~3歳までには5体満足な体になれる。
現在の医療で不可能な事は「蘇生」と「不老」だけだと言われるほどだ。
生産活動においても顕著な発達を遂げる。
短期間で安全な食料を生産可能となり、世界的な食料問題は解決した。
品種改良が進み、少量の日光と最低限の土があれば、短期間で安全かつ美味しい農作物が生産できる。
大都市の郊外には「クリアビル」という半透明の高層ビルが立ち並び、各階に畑が広がり野菜や穀物が全自動で生産されている。
工業分野に関しても、リサイクル技術と精製技術が飛躍的に進み、環境を破壊する事なく安価であらゆるものが生産可能となった。
仮に環境が破壊されたり、既に破壊されていたとしても、環境再生用ナノマシンのお陰で短期的に再生される。
大気汚染や地球温暖化も過去のものとなり、今や歴史の教科書で人類が克服した問題として語られるのみだ。
人々が生きるために必要な生産活動のほとんどが自動化され、かつて存在した職業の多くが消滅したが、なにも問題はない。
そもそも食べる物に困らず、生活する上で必要な物が無料で供給されるので、働く必要がないからだ。
それでも、やることは山ほどある。
生命や生活を維持するため以外の分野に、目を向ければいいのだ。
音楽・文学・美術・工芸・スポーツなどの趣味に時間の多くが割かれ、それらの分野が大いに発展した。
そんな現在を「理想的な共産主義社会」とか「ユートピア」と表現されるようになったが、問題点もいくつか残った。
1つには、生活が安定したことで、各個人の主義主張が活発に議論されるようになり、それらの行き着く先は愛国心だったり帰属意識へと向かう。
自国の安全のためとか経済の発展のためといった理由ではなく、人種の違いとか生まれた場所の違い、または宗教の違いなどを理由にして、人々は争うようになった。
その結果、国家という枠組みは無くならず、むしろより強化され今日にまで至る。
2つ目は、エルフ・オーク・ドワーフという宇宙人の取り扱いについてだ。
3種族のおかげで人類が発展し生活が向上したことから、彼らを神格化する傾向が生まれ、それと相反して敵視する者が現れた。
自分たちより高い文明を持ち、その気になれば人類を滅ぼせるのではないか? という危機感は、実際多くの人間が潜在的に感じているのも事実だ。
各国政府は3種族との友好関係を重視し、他国以上に便宜を図ってもらうことを望んでいる。
たしかに、国家間の緊張が増す現在では、そのパワーバランスを変化させる要因は、「レイン」と「3種族との友好度」だからだ。
話を戻すが、反政府組織『フォースウルフ』は3種族を敵視しており、その排除を目的としている。
よって、3種族と友好関係を築いている現政権に対してテロ活動をしているらしい。
また、こうした手合いに対抗するため、警察官の数は年々増加している。
生活が安定した現在では、人々の欲は金銭欲ではなく、権力欲や名声欲に向かう。
学校での成績評価はレインの実力を重視しており、レインの腕を認められ優秀な成績で卒業し、警察官になる。これが一般的なエリートコースだ。
そのため警察官を目指す若者は多く、人気の職業である。
ちなみに現在の警察は国の軍隊を兼ねており、国家の実力を世間に示す指標でもある。
だが、よくよく考えてみると、フォースウルフという組織は実態がよく分からない。なぜなら、フォースウルフが起こした事件というのを聞いたことが無いからだ。
例えば要人を殺害したとか、なにかしらの施設を破壊したとか―――。そういった話を知らない。
ただそれでも、フォースウルフがテロ計画を実行しようとして、それが達成される前に、警察がフォースウルフの構成員を追い詰め、華麗なレイン捌きで敵を打ち倒すシーンはテレビやネットで時々流れている。
これは、ある種のヒーロー劇のような構図を見せ、警察の人気上昇に一役買っていた。
――――――――――
「こんな近くで事件なんて起こったら嫌ね。はやく捕まらないかしら」
話を聞いていた供花が、心配そうな顔をして言う。
「そうだな。そもそもなぜこんな平和な世の中でテロ活動をしようとするのか、俺には理解できない」
「……そうね」
先生が悲しそうな顔で相槌を打つ。この人は誰にでも優しい。
もしかしたら、フォースウルフの構成員にすら同情しているのかもしれない。
俺が幼い頃、まだこの孤児院に馴染めずに、玩具を壊したりして散々迷惑を掛けていた時期がある。
そんな時も、先生は叱らずに優しく抱きしめてくれて、親の愛に恵まれなかった俺に寄り添ってくれた。
あの時の先生の顔が今でも忘れられない。
「!!」
ゴオオオオンと、雷が落ちたかのような轟音が鳴り響く。
建物が大きく揺れ、俺は倒れないようにその場で踏み留まる。
部屋の中が一瞬静まり返る。その後、1人の子供が泣きだすと、それに連鎖して他の子供達も泣き始めた。
この状況で真っ先に動いたのは、祐だ。
「可憐、雪、供花、先生とみんなを頼む。絶斗、隼人、行くぞ!」
祐の指示に従い、可憐たちは先生と子供達を一箇所に集め、パニックに陥っている子供達をなだめはじめた。
俺と隼人は互いに頷くと、祐に続いて外に出る。
建物を出ると、ここから50mくらい先の道路で、車両が炎上しているのを発見した。
片側3車線の車道は、普段はそれなりに車の往来があるはずなのに、今は炎上している車と、その前後に1台ずつの黒塗りの車が停止しているのみだった。
「あの前後の車は護衛車か?」
隼人が呟く。確かにそんな風に見える。
となると、炎上している車に政府の要人でも乗っていたのだろうか―――。
炎上を続ける車両に、10人近くの集団が近づいていくのが見える。そして、車両を取り囲んだ。
その集団は全員同じパーカーを着ており、フードを被っているため顔は見えない。
その中から野太い大きな声が聞こえてきた。
「駄目だ! これでは殺せていない。全員レインを展開しろ!」
その言葉を受けて、取り囲む集団は次々とレインを展開して戦闘態勢に入る。
さっきの爆発音を聞きつけ、周りに人が集まりはじめているが、その異様な光景に誰も近寄ろうとはしない。
「おいおい、あれがフォースウルフか? 孤児院の近くでテロ事件なんて―――」
「ここは大丈夫か? どうする?」
「どうするって言ったって……」
思わずどうするかと聞いたが、祐だって判断できるわけがない。
別にここが狙われているわけではないが、孤児院のすぐ近くでテロ事件が起きてしまうとは……。
当然、正義の味方を気取って、あの中に介入するなんて考えられない。
俺たちは、固唾を呑んで見守るしかなかった。
炎上する車両を取り囲む集団。
レインを展開し、臨戦態勢を維持したまま1歩ずつ歩みを進める。
次第に取り囲む輪が小さくなっていくなか、状況が変化した。
炎上していた車両が、突然爆発したのだ。
爆発音とともに、爆風がこちらにまで届いてくる。
車両には、不自然にも思えるほどの大きな火柱が上がった。
やがて火柱はおさまり、瞬く間に炎が消える。そこには、黒焦げの車両が残されていた。
そして、その車両の前には―――――1人の女性が立っていた。
灰色がベースで黒のストライプが入るスーツを身に付け、髪は透き通る様に光り輝やく金色。それが腰に届くまで長く伸びている。
そして遠くからでも確認できる、長く尖った耳―――。
「エルフ―――」
テレビなどで見たことはあったが、直接見るのは初めてだ。
その神秘的な美しさに、目が離せない。
取り囲んでいた集団も、遠巻きに伺っていた群衆も、そして俺たちさえも―――――世界が一瞬停止したような感覚を覚え、動けないでいる。
そんななかで、当のエルフが時計の針を進める。
エルフがおもむろに腕を上げ、指をパチンと鳴らす。
「ぐあ……はっ……」
取り囲む集団の中で、先程号令を掛けていたリーダーと思われる男の足元から、『緑色の棘』が生えていた。
その棘は、地面から天に向かうように生えていて、リーダーらしき男のお腹を貫通している。
あれは―――エルフの『レイン』だ。
直後、棘は形状を崩して流体金属の水溜りへと戻る。
そして、次の標的へと向かう。
男が崩れ落ちると同時に、その隣に狙いを定めて地を走る。
次に狙われた者は、慌てた様子で自身のレインを操作する。
レインを、盾の形状へと変化させた。
『シールド』と呼ばれる防御形態だ。
しかしエルフの操作するレインは、速度を上げて、立ちはだかるシールドを迂回する。
そして次の瞬間、先程と同様に、レインの棘が体を貫いていた。
「速い―――」
最初にリーダー格の男を倒した時もそうだったが、エルフが扱うレインのスピードは桁違いだった。
2番目に倒された人のシールド展開だって、少なくても俺より速い。
にもかかわらず、まるで赤子の手をひねるように、容易くシールドを迂回して攻撃を成功させたのだ。
エルフを取り囲んでいた集団のうち、2人があっという間に倒された。
浮き足立つ面々の中で、1人が叫ぶ。
「くそっ、全員同時にランスだ! いくぞ!」
その焦りと恐怖を含んだ叫びに、周りの者が呼応する。
「はっ」「せいやっ」「ランス」「死ねぇ」「いけぇ」
呼応に遅れた2名を残し、残りの5人が同時にエルフに攻撃する。
エルフに向かって、四方八方からレインの槍を突き刺そうとした。
レインを馬上槍のような形状にして突き出す型が『ランス』だ。
ブレードが刀剣を振る斬撃で「線の攻撃」とするなら、ランスは槍を突き刺す「点の攻撃」。
ランスは高い貫通力を持っているが点による攻撃であるため、避けられ易いという欠点を持つ。
しかし、周りを囲んでの同時攻撃なら、避けるのが困難であり、人数差がある状況では、ランスによる同時攻撃が必勝戦術だ。
5人によるランスの同時攻撃がエルフに襲い掛かかる刹那、エルフは微かに笑う。
まるで―――子供の悪戯を、親が笑って咎めるように。
エルフは再び指を鳴らした、パチンと。
エルフのレインが、その形状を変化させ、エルフ自身を内包する円錐形へと形成される。
ガキィィィン
金属同士が衝突し合い、いくつもの金属音が激しく鳴り響く。
5つのランスが、エルフの展開した円錐型のシールドに阻まれて、動きを止める。シールドは無傷だ。
「なん…だ…と……」
呆然とする5人。いや、当事者だけじゃない。この光景を目にした全ての者が、息をするのを忘れるほどに驚いていた。
レインの強度は、意思の力に左右される。
呆気に取られた5人は、気を緩めてしまう。あるいは、絶望して諦めたか。その事実を示すように、彼らのレインが形状を崩して地面に落ちる。
そして―――3度目の指が鳴る、パチンと。
エルフのレインが、鞭の形状へと変化する。
その鞭は、まるで意思を持っているかのようだった。
呆然と立ち竦む5人に対して、螺旋階段を連想させる軌道を描きながら、一蹴する。
それは巨大な刃物のように研ぎ澄まされ、周囲の5人を一振りで両断した。
残酷で無慈悲ながらも、どこか美しさを感じさせるその光景に、俺たちは驚きと恐怖を覚えていた。
「強すぎる……」
「ああ、そもそもシールドでランスを守れるのか? しかも5人分のランスだぞ!」
「そうだな、信じられん……」
――――――――――
日本のレイン操作は、ブレード・ランス・シールドを基本の型として教えている。
この3つの型はジャンケンと同じだ。
ブレードはランスに強く、
シールドはブレードに強く、
ランスはシールドに強い。
一点突破を図ってくるランスに対しては、ブレードで迎撃するのがいい。なぜなら、ブレードでランスの軌道を逸らす事ができるからだ。
ブレードに対しては、シールドが有効だ。
ブレードの斬撃線は避けにくいが、シールドで防げる。「線」の攻撃を「面」で防ぐイメージだ。不用意なブレードはシールドで簡単に防がれ、反撃を受け易い。
シールドに対しては、ランスが有効となる。
「面」で守るシールドは、「線」で攻撃するブレードは防げるが、「点」で攻撃するランスは防げない。一点集中した攻撃に突き破られる。
つまり、ランスに対してシールドで防御する事は困難であり、先程のエルフの行動は、本来なら愚策と言えるものだった。
だが、これはそもそも「同等程度の力量差」を前提とした話だ。
エルフの展開した全方位型の円錐シールドは、広範囲に展開するシールドであり、より一点突破され易い。
にもかかわらず、本来相性の悪いはずの5人分のランスを完璧に防ぎきった。
その圧倒的な力量差。このエルフは、次元が違うレベルの強さをまざまざと見せつけたのだ。
――――――――――
残すは2人。仲間が一瞬のうちに倒され、理解が追い付かずに立ち竦んでいる。
「り、里香退却だ」
「……」
2人はエルフに背を向け、逃げ出した。
「お、おい、こっちにくるぞ」
「え―――?」
逃げる2人の先に、俺たちがいる。
「どけ! 邪魔するなら、殺すぞ!!」
逃げ先の直線上にいる俺たちに、怒鳴り声を上げてきた。
「絶斗、隼人、やるぞ!」
「お、おい。やるって、俺たちが戦うのか?」
「仕方ないだろ。相手はテロリストだぞ。やらなければ、やられる―――起動展開」
祐はレインを解放し、迎撃体勢を取る。
「くっ、くそっ、起動展開」
「や、やるんだな……わかった、起動展開」
相手がレインを展開したまま、こちらに向かって来る。
やむをえず、俺もレインを解放する。
隼人も続いてレインを解放して構える。
相手との距離が段々と縮む――20m、――10m、――5m、来る。
残り距離およそ3m。お互いの顔まではっきりと見える位置になると、祐が先に仕掛けた。
祐が右手を左から右に、大きく振り切る。
手の振りに合わせて、レインが左から右に向かって半円を描く。
「ブレード!!」
先頭にいる男が、シールドを展開して祐のブレードを防ごうとする。
金属の刃物と板を強く擦り合わせた、嫌な音が響く。
「ぐっ、てめぇ」
相手はシールドで守ったものの、祐のブレードの威力に押されて、後ろへよろめく。
2人の開いた距離を、もう一人の小柄な敵が割り込んできた。
祐の目の前に迫ると、その場でジャンプして、空中で体を1回転させる。
その動きに合わせて、敵のレインが、本人を中心とした円の外周をなぞるような軌道で攻撃してきた。
その素早くトリッキーな動きに、祐の対応が遅れる。
辛うじて上体を後ろに反らして直撃を避けたが、左腕を掠めてしまう。
「がっはっ」
左腕から血を噴き出しながら、後ろへ倒れる祐。
祐がやられた? あのクラストップの祐が?
そんな馬鹿な―――思考が追い付かない。
祐を傷つけた相手は、倒れた祐を無視して、こちらを向いている。
―――――ま、まずい。
1歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。
残り2mくらいまで近づいた瞬間、視界から消えた。
「えっ―――」
「絶斗おおおおおおおおお」
目の前の視界が突然、何かに遮られる。
これは……金属の壁? ―――――シールドか!?
シールドの向こうで、ギィィンと金属音が響く。
その金属音と、シールドがガタガタと揺れる様子に圧倒され、その場で尻餅をついてしまう。
俺のすぐ隣に、隼人が立っているのに気づく。
そうか、隼人がシールドで守ってくれたんだ。
隼人は展開したシールドを解除すると、そのまま右手にレインを集める。
そして相手に向かって右手を突き出す。
隼人のレインが前方に向かって勢いよく伸びていく。
ランスで攻撃を仕掛けたのだ。
しかし、隼人のランスは敵にステップで回避される。
攻撃を避けられ隙を晒す隼人は、敵に蹴り飛ばされた。
「ぐっ」という声とともに、隼人も倒れる。
「くそっ」
俺は立ち上がり、不甲斐ない自分を恥じる。
ただの学生でしかない俺たちは、未だ実践経験も無く、為す術もない。
だから諦めるのか? ………いや違うだろ!
レインの強さとは―――意思の強さ。
負けると思っていては、絶対に勝てない。
弱気になるな、こんな所でやられてたまるかっ!
俺は中腰になって深く構え、右手を突き上げる。
速く! 鋭く! 力強く!
「ラアアアアアアアアンス!!」
俺のレインが、一瞬だけ、輝くように光った気がした。
後先考えず、ただひたすらに、全力のランスを放つ。
「くっ」
相手はその速度に驚いたのか、身を投げ出すように横に飛ぶ。
相手の脇腹を、ランスが掠め、血が飛び散った。
「こっ、この野郎!」
最初に祐の攻撃を防いだ男が、迫ってくる。
「ま、まずい」
全力でランスを放った直後で、すぐにレインを戻せない。
男のランスが迫り来る。
このままだと、防御も回避も間に合わない―――――。
「がっ、うぅ…………」
顔が血塗れになる。
い、いや、俺じゃない。『俺の血』じゃない。
目の前の男の胸から、血が噴き出している。
その血を浴びただけだ。
一体、何が起きたんだ……?
「大丈夫ですか、そこのアース。こうゆうのを、間一髪と言うんでしょ?」
目の前で絶命し倒れこむ男の後ろに、女神が立っていた。
女神―――いや天使かな。でもなんで天使なのに羽が生えていないんだろう?
そんなくだらないことが頭に浮かぶほど、その女性の美しさに、一瞬で魅了されていた。
ファンタジーの世界に登場する彼女らは、時には森の化け物として描かれ、時には絶世の美女として描かれる。
目の前の女性の髪は、本当に輝いている。
その顔は、彫像でも表現出来ないと思わせるほどに、整いすぎている。
その肌は、生まれたての赤子より透き通っている。
こんな人間が存在するとは思えない。
ああ、そりゃあそうだろう。
この女性はエルフで、宇宙人なのだから。
ここまで読んで下さいまして、本当にありがとうございます。
この作品は、自分にとって初めての小説で、思い入れのある作品です。
もし宜しければ、ページ下にある評価を押して下さると嬉しいです。
酷評でも構いませんので、感想なども頂けるとうれしいです。
ちょっとだけネタバレすると、この作品の主人公は『供花』です。
絶斗だと思って興味を持たれた方がいらっしいましたら、ごめんなさい。
今後も少しずつですが、手直しと続きを書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。