80 黒の大蛇
明らかにヘルマンとヴェロニカのことを狙っているこの黒い大蛇は、触れただけで生命エネルギーを吸収する特製をもっている。先ほどの球体が姿を変えたものなのだから間違いないだろう。触ればアウトという明らかに反則じみている存在にも関わらず、ヘルマンの対禁術魔術も通用しない。逃げようにも、地下通路への道は瓦礫に埋もれてしまった。あまりに出来過ぎた絶体絶命である。
黒い大蛇、というワードでヘルマンはムセイオンでの事件のことを思い起こしてしまう。あのとき、大蛇に歯が立たなかったヘルマンを助けたのはダレイオスだった。しかし、今回はそのダレイオスの助けに期待することなどできない。正真正銘、自分たちだけで何とかするしかないのだ。薄れ行く意識を引き戻し、ヘルマンは気合いを入れ直す。
「ヘルマンさん、実のところ、魔力の残りはどれくらいあるのかしら」
ヴェロニカに尋ねられ、ヘルマンは自分の現状を冷静に分析する。
「アングイスとの戦いで結構使ってしまいました。まだある程度の余裕はありますが……」
「そうね……。とりあえず私の魔術で攻めてみるわ。通用するかは試してみないことには分からないもの。ヘルマンさんは援護をお願いできるかしら」
「わかりました」
ヴェロニカが再び自らの肌に魔法陣を浮かび上がらせる。それを戦闘の意志と判断したのか、大蛇は口をガパリと開き二人へ突進してきた。
巨体故にそれほど早い攻撃ではない。ヘルマンが白く輝く壁を出現させる。先ほどはヘルマンが直接触れたから通用しなかったという可能性を検証するつもりのようだ。しかし、壁は大蛇に触れた箇所からみるみる黒く染まっていく。ヘルマンは残念な検証結果に舌打ちするが、ヴェロニカによる攻めの隙は作ることができた。
大蛇の側面に回っていたヴェロニカが多数の火球を浮かばせ、それは『隕火』と叫ぶ声とともに大蛇へ向けて殺到する。頭や胴のいたるところへ着弾するが、大蛇にダメージのようなものは一切見られなかった。
「生物じゃないのは明らかだし、予想していたところではあるけど、やっぱりこうなるのね……」
ヴェロニカがため息をつき、ヘルマンは思考をめぐらせる。
「生物じゃない、確かにそうだ……。だが、ある程度の意志を持って動いている以上、何かしらの行動理念があるはず……」
ヘルマンがそう呟く。生物なら自分が生きるためということを理念としていることが多い。こいつが生物でない以上、それには当てはまらないことになる。しかし、ヘルマンはそこに引っかかりを覚えていた。
そこに大蛇が突っ込んできた。ヘルマンは氷の壁でその勢いをゆるめ攻撃をかわす。ヴェロニカがそこに多数の火炎弾を打ち込み、大蛇の気を自らに引きつけた。ヘルマンが何か考えているのだと察し、その隙を作ろうとしているのだ。ヘルマンはそれに応えるために必死に頭を回転させる。
大前提としてこの大蛇は生物ではない。しかし、獲物の人間二人に食らいつこうとするその行動は普通の生物と何も変わらないように見える。生物が獲物を食らうのは生きるため、活動のエネルギーを得るためだ。それと同様の考え方をすれば、この大蛇も活動のエネルギーを欲しているということになる。ならば活動のエネルギーとは何か。
そのとき何気なく触れたポケットの中身、それがヘルマンに答えを与える。
「ヴェロニカさん!」
ヘルマンがヴェロニカを呼びつける。大蛇の攻撃をヒラリとかわしながらヴェロニカはヘルマンの元へ駆けよってきた。
「何か分かったのかしら」
「何も分かってません。けど、これから分かるはずです」
何も分かってない顔のヴェロニカにヘルマンが簡潔に方針を伝える。ヴェロニカはその策に快く乗った。
「他に手もないもの。あなたを信じることにするわ」
「はい、絶対になんとかしてみせます」
ヘルマンが決意を露わにしたところに大蛇がつっこんできたことを皮切りに二人は走る。そこは部屋の壁だ。そこへ向けてヴェロニカが炎弾を放ち、穴を開けた。そこには独房のような部屋が数多く並んでいた。ファーティマにもあった、実験台を閉じ込めておくための場所だろう。
だが、ここじゃないと呟き、二人は部屋を駆け抜ける。壁をつきやぶりなおも追ってくる大蛇から逃げつつ、ヴェロニカはあちこちの壁へ向けて魔術を放つ。その一つが壁に着弾したそのとき、空いた穴から大量の紙が飛び出し宙を舞った。
「見つけた、あそこだ!」
ヘルマンが一目散にそこへ飛び込む。そこはかなり閉鎖的な小さな部屋だった。机に積まれた大量の紙や棚にある、いかにも怪しげな魔術書から見てアングイスの研究室に間違いない。アングイスのことだから、研究室は隠し部屋にしているだろうというヘルマンの予測は間違っていなかった。ヘルマンが探す可能性はここにあるはずだ。これまで研究者として働いてきた中で最も速いスピードでヘルマンは書類の束に目を通していく。
部屋の外からは轟音が聞こえ続けている。ヴェロニカが一人で大蛇と戦っているのだ。いくら大蛇の攻撃が見切れる速度だからといって、一人で戦い続けるのは体力的にも魔力的にも厳しい。故に、ヘルマンは目が乾くのも気にせずお目当ての資料を探す。
そしてそれは見つかった。ざっと目を通してからそれを懐にしまい込み、ヴェロニカの元へ走る。
ヴェロニカの頭上からかぶりつこうとする大蛇の頭がヴェロニカの大火力魔術で押し戻された。大蛇はそこから姿勢を低くし攻めようとするが、ヴェロニカに回避され壁に激突する。
一見余裕のありそうな立ち回りであるが、ヴェロニカの息はあがっていた。彼女は魔術師だ。本来なら相手の攻撃を引きつけたり、防御したりする仲間がいてこそ真価を発揮するのだ。こうして前線で戦うことは本職ではない。長時間一対一で立ち回るのにも限界があった。
故に気づけなかった。大蛇が頭を壁から引き抜こうとしているとき、その尾が大きく振られ自らに迫っていることに。
彼女がそれに気づいたときにはもう回避ができる間合いでは無かった。彼女は迫る黒に終わりを覚悟する。しかし、尾はヴェロニカにあたる直前で何かにあたり軌道が僅かに変わった。それは、まぎれもなくヘルマンだった。彼はその場にガクリと膝をつく。
「ちょっと、ヘルマンさん!」
「大丈夫です。身体強化はかけておきましたから」
そう言ってヘルマンは自分の右腕を押さえる。破れた服から、どす黒く染まった彼の腕が見えた。右腕ではじいたときに生命エネルギーを吸い取られてしまったのだ。この様子では、もう右腕は全く動かなくなってしまっているはずだ。
ヴェロニカが辛そうな顔で口を開くが、ヘルマンがそれを止める。
「今は俺のことより大蛇の始末です。言っていた資料は見つけました。これならなんとかなるはずです」
「……わかったわ。私はどうすればいい?指示をちょうだい」
続けて突っ込んできた蛇の頭をかわし、ヘルマンがヴェロニカへ指示を出す。 二人は再び大蛇から逃げながら先ほどとは反対側の部屋の壁を目指し、ヴェロニカが魔術で穴を開けた。
その先にある部屋は、先ほどまでいた円形の部屋とよく似た形の部屋だった。寧ろ先ほどの部屋よりも多くの実験が行われたような形跡が残っていた。抵抗する実験台を大人しくさせた時のものか、血痕がそこら中に生々しく残っている。部屋の中央には赤黒い何かで書かれた魔法陣が鎮座していた。ヘルマンが手元の資料と照合し、頷く。
背後から大蛇が迫り、二人は大きく跳躍し距離をとった。
「ヴェロニカさん、中央の魔法陣の上まであの大蛇を誘導します。そうすれば俺があの大蛇を無力化、せめて弱体化させてみせます。ヴェロニカさんはそこに全力の攻撃を放ってください。それであの大蛇を倒せるかも、いえ、倒せます」
ヴェロニカはそれに微笑みを返し頷いた。「ポジティブなのは好きよ」と呟き、ヴェロニカは大蛇へ炎弾を放つ。「好き」という言葉を過剰に捉えないように自分の心を落ち着けてからヘルマンも駆け出す。大蛇はヴェロニカへ向けて頭を伸ばし、食らいつく。それをかわしてヴェロニカは魔法陣の方へ走った。ヴェロニカに狙いを定めている大蛇はその後を追う。そして魔法陣の上に大蛇が来たところでヴェロニカは振り返り手をかざす。すると、魔法陣の周囲に幾本もの火柱が上がった。その先端は一つに集束し、大蛇を捕らえる檻となる。だが、大蛇が火柱へ体当たりすると檻がグラリと揺らいだ。あまり長い時間は持ちそうに無かった。だが、少しでもその場に足止めできれば問題ない。ヘルマンがすぐさま魔法陣を起動した。
ヘルマンが考えた策は実にシンプル。大蛇が活動に必要とするエネルギーを奪うことだ。この大蛇が禁術の成れの果てならば、そのエネルギーが何かは容易に見当が付く。生命エネルギー、それが大蛇の活動の源だ。それは、大蛇が生命エネルギーをヘルマンから吸収したことからも明らかだ。
「上手くいくかどうかはアングイスの研究資料の完成度次第か。なんだかな……」
ヘルマンの持ち出したアングイスの研究資料は、アングイスの扱っていた実戦用『冥界術式』とその発動に必要とするエネルギーの確保について書かれたものだ。
以前ファーティマで戦ったとき、アングイスは妖しい輝きを放つ珠を自慢げに見せつけ、その珠には生命エネルギーが大量につめられていると語っていた。ヘルマンはそこに目をつけた。その珠を制作する過程には必ず、生命エネルギーを人間から吸い出す行程があるはずであり、それを大蛇へ用いれば大蛇の生命エネルギーを吸い出せるのではないかと考えたのだ。
この部屋の魔法陣がまさにそれだ。魔法陣は妖しげな光を発しながら動き始める。そして光が走ったかと思うと、幾本もの管のようなものが魔法陣から伸び大蛇の身に突き刺さっていったのだ。管がどくどくと脈打てば、大蛇は雄叫びを上げ身悶える。資料に寄れば、吸い出したエネルギーは隣室に集まっているという。ヘルマンは、それを用いれば自分の腕を元に戻すことができるのではないかとも踏んでいた。
「これは、上手くいっているの?」
「はい。これなら行けます!」
ヘルマンが確かな手答えを感じたそのとき、大蛇が大きくのたうつ。暴れる尾が炎の檻を揺らすと、ついに耐えきれなくなった檻が砕け散った。
「檻が……!だが、ここまでくれば!」
ヘルマンがそう身構えるが、追い詰められた者の力は底が知れないものである。大蛇は最期の抵抗とばかりにのたうち回った。巨体は見境無く暴れ、部屋の壁を、天井を叩き崩していく。
「マズいわ……。このままじゃ、こいつごと生き埋めになる!」
ヴェロニカは焦りの表情を浮かべる。ヘルマンもこの状況を厳しいものと見ていた。大蛇の生命エネルギーを吸い取るにはまだ少し時間がかかる。何とかこの狂乱を収めなければヴェロニカの言う通り、大蛇とヴェロニカとヘルマンで三者仲良く心中することになってしまう。そのために少しでも大蛇の気を引きつけることができれば、とヘルマンは考える。そして、一つ手が思いついた。先ほどヘルマンに答えを示してくれたポケットの中身だ。
ヘルマンは左の手でそれを取り出し、大蛇に見えるように掲げた。
「見ろ!お前の欲している生命エネルギーはここにあるぞ!」
ヘルマンが握りしめているのはアングイスが持っていた、生命エネルギーがこめられた珠だった。ヘルマンは、ファーティマでアングイスが取り落としたそれを研究のために拾っていたのだ。
大蛇は自らの身体から失われていく生命エネルギーをなんとか補充しようと、ヘルマンの持つ珠に目をつける。そして、それを求めてヘルマンへ食らいついた。
ヘルマンはそれを回避するが、自分の生死がかかっている大蛇がそれを諦めるわけがない。逃げるヘルマンを大蛇は追いかける。
大蛇が惹かれて寄ってくるのを見たヘルマンは、“死人”がエルフの眼を誤魔化したのも、この珠を用いたのだろうと思った。精霊は生命エネルギーによってくるのだから、生命エネルギーの塊であるこの珠があれば“死人”であっても精霊が取り憑いているように見せかけられるというわけだ。
突然こんなことを思ったのは一種の現実逃避かもしれない。ヘルマンはとにかく時間をかせぐのために蛇を引きつけ続けるが、彼も魔術師だ。敵と直接張り合うことを得意としていない。魔力を消耗した彼の身体では長く持ちこたえることはできない。彼の息はずっと上がりっぱなしだった。それでも足を休めるわけにはいかず、ヘルマンは気力で走り続ける。
その姿を見てヴェロニカがサポートに回ろうとするが、ヘルマンが止める。ヴェロニカには大蛇のとどめを刺すという役割があるのだ。彼女が余計な体力、魔力を消費するわけにも、まして傷を負うわけにもいかない。
そして、ヘルマンの気力さえも限界へ迫りつつあったそのとき、待ちに待った時が訪れた。大蛇に繋がれた管が大きくドクンと脈打ち、大蛇が一際大きくのたうつと大蛇の額から何かが露出した。それはヘルマンが持っているのと同じ、生命エネルギーがこめられた珠だった。激しく明滅するそれが、大蛇の核に違いなかった。
「あれを狙えば良いのね!待ってたわ!」
ヴェロニカが自らの体中に魔力を巡らせる。するとヴェロニカに刻まれた魔法陣が更に広がり彼女の肌を覆い尽くし、彼女の全身が赤い輝きを帯びた。まさに魔法陣そのものとなったヴェロニカが頭上に巨大な魔法陣を描いていく。
そこに集中していく魔力の大きさに大蛇は恐れおののく。少なくともヘルマンにはそう見えた。もう大蛇には後が無い。大蛇がこの攻撃をしのぎきるための道は、生命エネルギーを得る他になかった。大蛇は最後の望みをかけてヘルマンの持つ珠を食らおうと飛びつく。その動きは簡単に見切れるものだった。ヘルマンも余裕を持って避けようとする。しかしそのとき、彼の脚がガクリと折れた。この瞬間に限界が来たのか、それとも余裕が生まれたことで緊張の糸が切れてしまったからなのか、ヘルマンの反応が大きく遅れてしまう。魔術の発動準備に入っているヴェロニカはそれを見ていることしかできない。大蛇の頭が迫る。ヘルマンは左手で自らの脚を殴りつけ無理矢理動かした。そして、左へ転がるように回避する。次の瞬間、大蛇の突進はヘルマンの僅かに右側を通過した。
そして、ヘルマンは叫ぶ。
「ヴェロニカさん!今だ!」
ヘルマンが左手に握っていた珠を天井めがけて放り投げる。大蛇はそれを手にしようと珠の後を追い空中へ頭を伸ばす。空中には一切の障害物がない。魔術で狙い撃ちするには最適な場所だ。ヴェロニカは魔法陣の標準を素早く大蛇の頭へと定めた。
「これで、終わりよ!『隕炎』!」
ヴェロニカの前に炎弾が浮かぶ。その一つ一つの大きさが人一人分ほどもある巨大な火炎弾だ。その全てが、大蛇の頭へめがけて放たれた。着弾すると凄まじい炸裂音とともに爆発する。それが、十、二十と放たれ、大蛇の頭は、もはや視認できないほどに火炎に包まれ続ける。
その全てを打ち終えたヴェロニカは荒く息をしながらその場に膝をつく。彼女の肌からは赤い光が引き、もとの白い肌に戻った。
大蛇は、頭を高く掲げた姿勢で制止し、ピクリとも動かない。ヘルマンとヴェロニカは、祈るような心持ちでそれを見つめる。
そして、何かが砕けるような高い音が響くと、大蛇の首がボトリと落ちた。そこから堰を切ったように大蛇の身体はボロボロと崩れ始め、二人を脅威にさらしたそれは、ものの数瞬の間に跡形も無く消滅した。大蛇がいた場所には、砕け散り一切の光を失った二つの珠だけが残った。
一瞬の静寂。そして、ヴェロニカが大きく息を吐き出した。
「はあああああぁぁぁぁ……。なんとかなったわね……。これも、ヘルマンさんのおかげよ。あなたがいなかったらどうなってたことか……。ありがとう」
「いえ、それえほどでもありませんよ。俺は、自分の知識をなんとか生かそう、と、しただけですから……」
そう話すヘルマンの声は消え入るように小さくなり、彼はその場に倒れた。ヴェロニカが急いで駆けよるが、ヘルマンの姿を見て言葉を失う。
ヘルマンには、右腕がなかったのだ。無理矢理引きちぎられたように、肩から全て無くなっていた。痛々しい傷口は止血されてはいたが、周囲の血痕からかなりの出血があったのは間違いない。
ヴェロニカが慌ててヘルマンを抱き起こす。
「どうして、いつ!?」
「最後に大蛇の攻撃をよけたとき、俺の身体は無事だったんですが、言うことを聞かない右腕だけ逃げ遅れてしまいまして。でも、大丈夫ですよ。元々動かなかったんですから、あっても無くても一緒です」
ヘルマンはそう言って笑うが、ヴェロニカは胸が締め付けられる。ヘルマンの右腕が動かなくなったのはヴェロニカを助けたからだ。バディを組んで戦っている以上、一方がもう一方を助けるのは当然のことである。ヘルマンが自分のことをどう思っているのかも知っている。それでもヴェロニカは、なぜこんなに自分を犠牲にできるのか、尋ねずにはいられなかった。
すると、ヘルマンは照れくさそうな顔で答える。
「ヴェロニカさんは知らなかったかも知れませんが、俺、ヴェロニカさんのファンなんですよ。いつも元気をもらっているんですから、これくらいはさせてください」
ヘルマンは自分がファンであると気づかれていることに気づいていなかった。寧ろ、なぜ気づかれていないと思ったのか。それに少し呆れるように笑いながら、ヴェロニカはヘルマンを優しく抱き寄せた。
「ヴェ、ヴェロニカさん、ここここここれは……」
「そうね……美しい魔術を見せてくれたお礼ってところかしらね。今回だけ特別よ」
ヘルマンはその柔らかな感触に極上の快感を得る。ずっとこれを感じていたいとそう思ったが、彼の意志に反してヘルマンの意識は少しずつ薄れていった。やめろ、まだ意識を失いたくない、この感触をもっと味わっていたいんだ、そうヘルマンは自らに訴えるも、人間どうしても抗えないものはあるのだ。ヘルマンの瞼は緩やかに落ちていった。




