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魔王と少女のヒロイック  作者: 瀬戸湊
第一部
35/227

34 お昼時

 席についたセイフが荷物を椅子の横に置き、アレシャに話しかけてくる。


「しかし、久しぶり……というほどでもないな。一月半くらいか」

「そうですね。で、なんでここにいるんですか?確かアレクサンドリアを拠点にしてたんじゃ……」

「拠点といっても一時的なものだからな。冒険者たる者、世界を巡ってなんぼだろう?で、パーティを組んでここまでフラフラとやってきたわけだ」


 そうしてセイフは横に座る四人の冒険者を示す。


「こいつらは昔からちょくちょく一緒に行動していた奴らだ。まあ、仲良くしてやってくれ」


 セイフに紹介された冒険者たちは皆、人の良さそうな笑みをみせた。アレシャはそれに対して会釈を返す。ヴェロニカは適当に料理を注文してから隣のペトラの頭をわしわしと撫でる。


「アレシャちゃんは勿論だけど、ペトラちゃんもよくやってくれているわよ。Cランクに推したあなたの目は間違ってなかったわ」

「そうか、そりゃ良かった。二人には期待してるからな、頑張ってくれ。うちのパーティの連中にも君らの話はよくしてるんだ」


 ペトラはヴェロニカの手を払いのけるが、褒められて悪い気はしていないようだった。

 それから、これまでどんな旅をしてきたかをヴェロニカが話し、それに対してセイフたちが自身の経験からのアドバイスを加えたりしながら会話が進む中、ヘルマンとメリッサはそれに参加できず、借りてきた犬のようにチョコンと座っていた。それを見かねたセイフが二人に声をかける。彼は空気が読める男だった。


「眼鏡のあんたは確かヘルマンだったか?新聞の記事で読んだぞ。ムセイオンの研究者だったんだってな。あそこは世の研究者の憧れの場所だってのに、やめちまうとはな」

「アレシャに興味がわいてしまってな。色々知りたいと思ったんだ」


 ヘルマンのその言葉にアレシャとペトラ以外の女性陣が反応する。色恋のことだと勘違いしたらしい。メリッサは敵意のこもった眼差しで、ヴェロニカは興味深げな眼差しでヘルマンを見つめていた。


「アレシャちゃんを狙う者がここにもう一人……」

「ああ、あなたそういうことだったの。頑張ってね。この子そういうことには疎そうだから」

「ん?あ、え、違う!違うぞ!別にそういう意味では……」


 慌てて訂正するヘルマンだが、こういった時は冷静になるべきである。更なる誤解を生むだけなのだから。当の本人であるアレシャはそのやりとりを全く聞いていなかった。ヘルマンがアレシャに興味がある、と言っていたのは嘘ではないだろうが、その裏の本音を知りたいと思っていたのだ。アレシャはヘルマンのことを信じたいと思っている。それはダレイオスも同じだ。だからこそ、彼の目的を知って本当の意味で信用したいのだ。アレシャは決めた。後でヘルマンに直接聞いてやろうと。


「ヘルマンさん、後で二人きりで話があるんだけどちょっといい?」

「あ、え、なに!?」


 ヘルマンが戸惑う。タイミングが悪い。周りから冷やかしの声がとんでくるが、アレシャは何のことか分かっておらず、ペトラとダレイオスがため息をついた。この空気を変えようと思い、セイフが別の話題を切り出す。彼は空気が読める男だった。


「ところで、ヴェロニカは情報収集にきたんだろう。お前らはこれからどこに向かうつもりなんだ?」

「ああ、そうだったわね。私たちはこれからガザへ行ってそのままセインツ・シルヴィアに向かうつもりよ。何かその辺りに関する情報はないかしら?」


 ヴェロニカが尋ね、セイフのパーティの面々は何かないかと思い出そうとする。


「そうだな……。最近話題のイケメン冒険者がAランクになったとか、最近話題のハンサム冒険者が魔物を討伐したとか……」

「ガザの商会の受付嬢がすげえ美人だって話題になってたな」

「話題が偏りすぎだろう、お前ら……。俺が気になったのは、最近のセインツ・シルヴィアを巡る動向が妙だということだな」


 ヴェロニカがその話に興味を持ち、ぜひ聞かせてくれと身を乗り出す。ダレイオスとペトラはどういう事かよく分かっていないようで、アレシャに説明を求めた。


「セインツ・シルヴィアはね、三大宗教の内の二つ、テオ教とアリア教が聖地として崇めている場所で、その二つの源流と言われるグラン教も同じように聖地としているの。その三つの中ではアリア教国家であるアルマスラ帝国が一番力を持っているから、セインツ・シルヴィアはアルマスラ領になってるんだけど、他の二つの宗教を掲げる国もその街を手に入れようと狙っているわけ」

『なるほど……宗教問題というのは面倒なものだな。私の時代にはそういうものはほぼなかったからな』


 ペトラもなるほど、と頷く。アレシャの説明が終わってから、セイフは話を続けた。


「どうやら、テオ教国家のベータ王国がセインツ・シルヴィアに手を出そうとしているらしい。アルマスラ帝国との力の差はベータ王国も知っているはずだが……」

「アリア教は他にも聖地を持ってるんですから、一個くらいあげてもいいんじゃないですか?」

「めちゃくちゃな理論ね……。それはともかく、妙な話ね。何か勝てるという確証があるということかしら?」


 ヴェロニカが首をひねるも、誰もその疑問に対する答えは持ち合わせていなかった。


「とにかく、セインツ・シルヴィアの方へ行くなら用心しておくんだな。それ関連のゴタゴタに巻き込まれないとも限らない」

「ありがとうございます。気をつけておきます……といってもどう気をつければいいのか分からないけど」


 アレシャが礼を言うと、セイフは笑って親指を立てた。丁度そこで店員が大量の料理をテーブルに運んできた。


「さ、小難しい話はここまでにしよう。ここは全部俺たちのおごりだ。たんと食べてくれ!」


 セイフがそう言うのが早いか、アレシャたちは目の前の料理にかぶりつく。空きっ腹を満たしながら、彼らは話を弾ませていった。それらの料理の会計は全てセイフが支払った。俺たちのおごりではなく、俺のおごりだった。

 店を出て、もう少しこの街に滞在するというセイフらに別れを告げ、アレシャたちは再び東へと向かう。

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