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魔王と少女のヒロイック  作者: 瀬戸湊
第二部
178/227

89 空を巡る戦い

 それぞれがそれぞれの相手を見つけ、戦いは熾烈を極める。障壁を盾に戦っていたアルノーの私兵たちも、今では障壁の外に出て連合軍の兵と直に剣を交えていた。少しでも危ないと感じたら障壁の中に引っ込んで体勢を立て直す徹底したヒットアンドアウェイ戦法だ。障壁は術者であるサーラが身内と認識した相手には機能しないという、これ以上なく頼りがいのある守りであった。

 それでも互いの実力差は顕著だ。私兵たちは連合軍の兵一人に対して二、三人で対処しなければならない。ただでさえ大きく開いた戦力差が更なる重荷になっている。

 そんな中でも、アルノーはブロンドの長髪をなびかせながら一人で複数の兵を相手にしていた。右から迫る剣を弾いて一太刀浴びせ、左で振りかぶった剣が振られる前に相手の胸を突く。アルノーの剣は極めて正確に堅実に相手に傷を負わせていく。『アルケーソーン』のメンバーと比べれば実力は見劣りするのだが、日々の鍛錬の末に身につけられた型通りの美しい剣はさすがの一言だった。

見事三人の兵を切り伏せたアルノーは一度障壁の中へ戻り息を整える。


「ふぅ……。さすがに疲れてきたな。これだけ長い間斬り合いを続けたのは初めてだ。精神をすり減らす」

「アルノー様、ご無事ですか」

「ああ、心配ない。ありがとう、アルフレッド」


 彼に仕える優秀な使用人、アルフレッドが主へ入れ物に入った水を手渡す。アルノーが連れてきたのは私兵だけではない。家に仕えている使用人たちを救護班として同行させたのだ。志願した者だけであるのだが、ほとんどの使用人がこうして戦場にまでやって来てくれた。彼らは安全な障壁の内で怪我人の治療を懸命に行っている。初歩的な治療魔術を扱える者もいるので、今のところ死人はゼロだ。だが、長引けばどうなるかは分からない。


「サーラの障壁は今の時点では何の問題もないようだが、どれだけ持つかも分からない。先ほど何か強力な攻撃が飛んできたからな。もし障壁が消えれば、私もお前達も全員終わりだ。……すまないな、こんな場所に連れてきてしまって」

「今更何をおっしゃいますか。全て私供の意志でございます。敬愛する主人、そしてその大恩人の皆様の役に立つことこそ、我々の本意なのです」

「本当に、お前達には礼を言わねばならない。ありがとう。だが、お前達は兵士ではない。もし本当に危険になったらすぐに壁の内まで戻るんだ。いいな?」

「かしこまりました」


 アルフレッドが深々と頭を下げる。しかしそうは言いつつも、この男の性格ならまず間違いなく最後までこの場所で自分たちのサポートを続けることだろう。アルノーは咎めるような視線をアルフレッドへ向けてみる。


「嘘つきめ」

「何の事でしょうかな」


 首を傾げる使用人へ向けて小さく笑みを向けると、アルノーは立ち上がって剣を持ち直した。疲れはあるが、気力は回復していた。この戦いは勝つための戦いではなく、守るための戦いである。それを胸に留め直し、アルノーは再び障壁の外へと、敵兵の軍勢の中へと飛び出した。


 そんな戦場らしい光景が繰り広げられている一方で、これといった緊張感の無い戦いもまた存在していた。身内同士で絶賛試合中の二組のことである。

 ヤスケとコーディの斬り合いがその一つだ。ヤスケが右の剣を振り下ろすと、対するコーディが槍の柄でそれを防ぐ。ならばと、ヤスケは左の長斧を脇腹めがけて振るう。コーディは後ろに下がってそれを避けると同時に、槍を前へ突きだした。その突きがヤスケの胸を捉えたかに見えたが、ヤスケは咄嗟に武器を手放して両手を胸の前まで引き戻し、左の掌から盾を出現させた。それにコーディの槍は阻まれ、同時にヤスケは咥えていたナイフを右手で取り投擲する。コーディは屈んで躱し、槍を引き戻す。そこにヤスケが走り距離を詰める。その手には太刀が握られている。スピードを乗せた切り上げがコーディへ襲いかかるが、またしても槍の柄によってガードされた。

 しかし、ヤスケは防がれたと分かった瞬間に得物を手放していた。ヤスケの両手はコーディの頭上へ。そこでヤスケの掌の魔法陣が光り、彼の手には巨大な斧が出現していた。


「うわ、それは、ちょっと!」


 頭上に現れた鉄の塊にコーディが慌てふためくが、大斧は大地に引かれて落下した。破砕音と土煙が巻き上がる。相当な重量を持つ代物だったようで、斧の半ばまでもが地面に埋まっている。


「本当に、とんでもない戦い方をしますね。全く手の内が分からない」

「お前ほどの槍の使い手に褒められるとは、光栄だな」

「……正直なところ本当に分からないのは、あなたが何でそんなに嬉しそうなのかということなんですけど」

「え?」


 じっとりとした目で見つめられてヤスケは自分の顔をぺたぺたと触ってみると、口角が凄まじく持ち上がっていた。この一連の攻防、ヤスケは終始満面の笑みでこなしていた。

 初対面であり敵同士という立ち位置であるのだが、二人は『魔王』に与し『英雄』に敵対する同士である。この戦いも本来必要のないものであり、そんな身内同士の戦いに、普通の人間なら心を痛める。というのにこの男、素敵な笑みである。


「悪い、少し楽しくてな。俺はずっと一人で技を磨いてきたんだが、実戦でその技を試す機会がまるで無かったんだ。仲間と手合わせすることもあったが、こうやって本気で戦うワケにもいかないからな。だから、全力を出し切れる相手がいることが楽しいんだ」


 いや、初対面だが自分も一応仲間なんだが。本気を出してうっかり殺してしまっては駄目なのだが。そう言葉にしたいがコーディは何とか飲み込む。周りの目がある以上、あまり迂闊なことは口に出来ない。悲しいことに。だからコーディは表情で伝えることを試みる。自分の目を見てくれと。こんなに悲しい目をしているんだ、察してくれと。


「そうだ、前から試してみたいことがあったんだ。よし、良い機会だ。やろう」

「え」


 思い届かず。ヤスケは手に再び武器を出現させ始めた。殺意に満ちているようにしか見えない。ヤスケに殺意など無いはずなのだが。無いはずなのだが、そう見えてしまう。コーディが観念して槍を構える。と、その時。


「うおおおおおおおおお!」


 叫び声と共に、二人の間に何かが飛んできた。地面に落ちてゴロゴロと転がる。周りの注目を浴びながら、それはむくりと起き上がった。


「はあ、やっぱり単純なパワーじゃ勝てないな。さすがだ」

「し、師団長!どうしたんですか!?」


 コーディが驚きを露わにする。勢いよく飛んできた物体は彼の上司であるタイタスその人であったからだ。そして、タイタスの飛んできた方向から漆黒の巨体がゆらりと姿を現す。


「わたしにフルパワーを出させた時点で、お前のパワーは十分過ぎるほどだと思うが」

「ん、アステリオスか」


 筋肉が限界まで膨張、というより最早巨大化したアステリオスが拳を固めて立っていた。鎧は脱ぎ捨てられ、まさに筋肉の塊と化していた。アステリオスのシャッルの能力を解放しきった姿である。ヤスケはその姿を目にしたことがあるが、初めて見るコーディは強烈な迫力の前に、言葉に詰まってしまう。


「ともかく、これで勝負はついただろう」

「ああ、力比べの決着はな。勝負はこれからだ」


 タイタスが拳を構えてアステリオスと向かい合う。あれだけ吹っ飛ばされてピンピンしているのはさすがとしか言いようがないが、アステリオスとしてはたまったものではない。タイタスはアルマスラ帝国軍の中でもトップクラスの実力の持ち主なのだ。パワーは勝っているものの、そこに技を加えればタイタスの方が間違いなく強い。しかも、本気で戦う必要も無いのにタイタスは全力でぶつかってくる。そんな相手とまともに戦っていられるか。力のリソースは他のところにつぎ込みたい。そう思ったアステリオス、隣に立っていた仲間に目をつける。


「ヤスケ、手を貸してくれ。正直、この男の相手をするのは限界に近い。精神的に」

「そんなにか。よし、手伝おう。ただ、俺の相手もいるからな。二対二ってことになるな」

「お、コーディ。お前もやるか。折角の機会だしな!」

「え、私もやるのですか」


 ここはタイタスに二人を相手して貰って、自分はヤスケとかいう戦闘狂からさっさと離れようと考えていたコーディもタイタスに捕まり、参戦を余儀なくされた。静かに項垂れる。そして二対一の構造にして楽をしようとしていたアステリオスも項垂れた。そして顔を上げた二人の視線が交差する。互いに、静かに頷いた。二人の間で何かが通じ合ったらしい。

 こうして、アルマスラ帝国軍のツートップと『魔王』の使徒による戦いは二対二の乱戦に突入する。後に綴られる、このアウザー渓谷の戦いを記した書物には、この乱戦は両者の意志と意志がぶつかり合う壮絶な死闘と記されるのだが、実体は巻きこんだ側と巻き込まれた側の悲しいぶつかり合いでしかなかった。


 その彼らの頭上で閃光がまき散らされる。そして唸り声が聞こえたかと思うと、煙の中から二つの影が飛び出した。白と黒。激しくぶつかり合いながら飛翔する。黒がその太い腕を振り上げると、白がその懐に飛び込んで体当たりを食らわせる。しかし分厚い鎧のような鱗に覆われた黒は、相手をがっしりと受け止めた。左の腕で白の腕を掴み、そのまま右の腕を白の頭めがけて振り下ろす。

 しかし、白——スヴェートは一人で戦っているわけではない。その背に跨がっていた銀髪の女性、フェオドラが展開した障壁がその攻撃を受け止めた。両者は拮抗するが、僅かに黒——ベヘモスのパワーの方が上回っていた。徐々に押されていくフェオドラだったが、多少時間が稼げれば問題ない。生まれた隙の間にスヴェートは口にエネルギーを充填していく。そして、放出した。光がベヘモスの腹で弾け、苦悶の雄叫びを上げる。そこでスヴェートは解放され、後ろに飛んで距離を取る。ベヘモスの腹を見ると、その部分の鱗に亀裂が入っていた。


「よくやったわ、スヴェート。さすが私の相棒」


 フェオドラが優しく頭を撫でると、スヴェートは誇らしげに高く鳴いた。ベヘモスは低く唸り、主であるルクソーとともにフェオドラを睨みつける。


「さすがは『白龍』のフェオドラというところか。ベヘモスが傷を付けられたのは初めてだ」


 褒めてくれてはいるが、その目は敵意むき出しだ。フェオドラはその目を冷静に見返す。これまでの攻防で、相手についてある程度の情報を得ることができた。

 ルクソーの従える空飛ぶ獣ベヘモスの最大の特徴は圧倒的な防御力だ。スヴェートのブレス攻撃でさえ、直撃してもまるで効いていない。何度か体当たりもしてみたが、効果はなかった。しかし先ほどの超至近距離の攻撃では、その防御を破ることが出来た。攻撃が一切通じないというわけでもないようだ。

 そしてベヘモスの戦闘スタイルについて。スヴェートが距離を取って攻撃しかけてきても、ベヘモスは一切反撃をしてこなかった。これまでの相手の攻撃は全て、巨大な腕を振り回したり、巨体を活かして突進してきたりという近接攻撃ばかりだ。つまり、ベヘモスは遠距離攻撃の手段を持ち合わせていないということ。

 しかし、ベヘモスの背にはルクソーが乗っている。彼が魔術での遠距離攻撃をしかけ、ベヘモスの攻めの穴を埋めてくる可能性がある。いや、スヴェートが積極的に距離をとろうとすれば、間違いなく魔術で応戦してくるだろう。それに、遠距離からちまちまとブレスを撃ったところでベヘモスには通用しない。距離を取れば、寧ろフェオドラの方が不利になるまである。


「なら、危険は承知で接近するしかないわね。あいつの装甲を破ることが出来れば勝ち。スヴェート、行けそう?」


 フェオドラの問いに、白龍は気合いの入った鳴き声で答える。フェオドラはそれに「よし」と頷くと、スヴェートの首に身を寄せこそこそと話し始める。頭のいいスヴェートは、相棒の考えを正確に理解する。

 そしてフェオドラが相棒の背をポンと叩くと、スヴェートはバサリと翼を羽ばたかせ、ベヘモスへ向けて矢のように飛んだ。ベヘモスは腹に多少の傷を負いはしたものの、消耗としては軽微なものだ。少しも怯むことなく、近づいてくるスヴェートを迎え撃とうとする。ベヘモスの豪腕から鉄拳が飛ぶ。しかしスヴェートは身体を捻り右方向へ避け、そのままベヘモスの背後へと旋回した。


「隙ありよ!」


 フェオドラの両手にはいつの間にか青の魔法陣が展開している。そしてその一方から氷の礫が連射された。拳大の無数の氷の塊は正確に対象を狙い撃とうとする。その的はベヘモスではなく、その背に乗るルクソーであった。ベヘモスに攻撃が通らないのなら、その騎手を先に倒してしまおうという考えである。


「やはり、そう来るか。だが、無駄だ!」


 ルクソーはあらかじめ準備していた魔術を発動させて壁を生み出す。障壁のように見えるが、中央が沈み込むように渦巻いていた。フェオドラの放った礫はそれに吸い込まれ消滅した。しかし、ルクソーの術はそれで終わりではなかった。ルクソーの手にある壁と同じものが、フェオドラの背後にも出現したのだ。咄嗟の判断でスヴェートを上昇させると、間髪入れずにその壁から先ほどフェオドラが放った礫が勢いよく吐き出された。


「相手の攻撃を攻め手に変える術だ。ワタシを先に討とうと思ったのなら無駄だぞ」

「厄介な術ね。不用意に手を出せないわ」


 ベヘモスの周囲をゆっくりと旋回しつつ、フェオドラはため息を吐く。しかし、これまでベヘモスに対して行ってきた攻撃には今の術を一切使ってこなかった。この術の効果範囲はあまり広くないと見える。おそらく自分に向けて放たれた遠距離攻撃にのみ対応できる術であるとフェオドラは当たりをつける。見慣れない術を使われたのなら、まずはその術の効果範囲を推測し、その外から攻める。彼女の経験則から来る定石である。


「なら、これはどうかしら」


 フェオドラは左手の魔法陣は展開したまま、スヴェートの飛ぶスピードを上げさせる。ベヘモスの強みが防御力であるなら、スヴェートの強みはそのスピードだ。ベヘモスは巨体の割りに機動性は悪くない。攻撃は大ぶりながらも素早く、易々と避け続けることができるものではない。しかし、スヴェートの飛行スピードはそれを上回っていた。ベヘモスの突進もパンチも相手には届かない。捉えたと思った次の瞬間には、スヴェートは既にその場にいないのだ。


「翻弄してくるな……。一撃当てるだけでも一苦労だ」


 だが、それで構わない。ルクソーはそう考える。自分に与えられた仕事は、白龍による上空からの支援攻撃を止めること。敵拠点の壁を破るまでの間、フェオドラの意識を引きつけていられれば、それで十分なのだ。ルクソーは相手の速さに攻めあぐねいているが、相手もまたルクソーらの守りを越えられずにいる。自分の役目は満足に果たせるはずだ。心中でほくそ笑みつつ、彼は必死さを出そうと、ベヘモスに当たらない攻撃を続けさせる。飛行に集中しているスヴェートに代わって、フェオドラが右手の魔法陣から攻撃を打ち続けるが、それもまた通らない。ルクソーの考え通り戦況は膠着していた。

 しかし、次第にルクソーは違和感を覚え始める。ベヘモスの動きが徐々に緩慢になってきているのだ。


「どうした。まだ疲れるほど動いていないはずだ」


 ベヘモスのスタミナの程をルクソーは熟知している。その気になれば三日三晩飛び続けることすら可能なこの獣が、疲弊してきているとは考えにくい。ならば何が原因であるのか。ルクソーはその答えを知ろうと目をこらし、魔力感知を発動させてみる。すると、気づいてしまった。


「なんだ、コレは!細い、糸か!?いつの間に!」


 肉眼では捉えにくい。注がれる魔力も微量故、魔力感知でも簡単には見つからない。そんな糸がベヘモスの身に幾重にも巻き付いていたのだ。複雑に絡み合ったそれが、ベヘモスの動きを制限していた要因だった。

 ルクソーがその糸に流れる魔力の元を辿ると、それは飛び回るスヴェートの背でニヤリと笑うフェオドラ、その左の手に続いていた。そこでようやく気づく。彼女は最初の氷の礫による攻撃の時から左の魔法陣をずっと展開したままだった。そこから糸はずっと紡がれ続け、スヴェートがベヘモスの周りを旋回し飛び回ることで少しずつ巻き付いていったのだ。


「私特製の“水糸”よ。常に魔力が循環し続けているから、その細さの割りには切れるにくい。それがこれだけ巻き付いてしまったら、力だけではどうにもならないでしょうね」


 その言葉の通り、ベヘモスが腕を振り回しても水糸は依然として纏わり付いたまま。寧ろ更に絡み合うことで状況を悪化させてすらいた。


「ちっ!なら力尽くでなけりゃいいのだろう!」


 ルクソーの手に緑の魔法陣。そこから風が逆巻く。風の魔術で全て断ち切ろうとしているようだ。そんな手を取れば糸が絡まっている本人も傷つけることになるのだが、ベヘモスにそんな気遣いは不要だ。対抗策としては上出来だ。

 ただ、フェオドラがそんなことを許しはしない。糸が続く左手を強く引っ張ると、するすると糸が締まっていき、ベヘモスの身体を直立の様な姿勢で拘束した。その巨体を宙に浮かせていた翼も自由を失い、ベヘモスの身体は重力のままに落下していく。魔術を放つ体勢に入っていたルクソーも、空中に放り出されないようにバランスを取り直す。致命的な隙であった。


「スヴェート!派手におやりなさい!」


 白が翼を羽ばたかせて黒の懐に飛び込むと、その身体に抱きつくようにしがみついた。大きく開いたその口にはエネルギーが満ちあふれていく。

 ルクソーの手から風が巻き起こった。ベヘモスの拘束が解かれる。

 しかし、もう遅い。

 白光が戦場一帯を照らしつけると、次いで耳をつんざく爆音が轟いた。慌てて退避する連合軍の兵たちの頭上に黒い巨体が不時着し、地面を転がる。頑強な黒い鎧は健在だが、その一点。土手っ腹の装甲だけは粉々に砕け散り、鱗の下の地肌には真っ黒な焦げ跡が残されていた。

 激闘を制し、空を手に入れたのは白だ。至近距離でのブレス攻撃は自身にも相応の反動があったようで、自慢の白い鱗は血で汚れてしまっていたが、その美しさは健在であった。白龍は歌うような高い声で勝ち鬨を上げ、フェオドラは相棒の頭を愛おしく撫でる。

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