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魔王と少女のヒロイック  作者: 瀬戸湊
第二部
166/227

77 本格始動

 太陽は地上にうららかな光をもたらす。しかし、生憎と今日は雨だった。その光も地上へ届くことはなく、人々に暗い影をもたらす。

 とある屋敷の一室で、一人の少女が横たわっていた。ぴくりとも動かず、少女はただ横たわっていた。


「なんで……。どうして、こんな……!目を開けてください!アレシャちゃん!」


 黒髪の女性、メリッサがベッドにすがりつき悲しみの言葉を口にするが、それにアレシャが応えることはない。なぜなら彼女は既に目を開けているので。瞳がサヨナラして完全に白目をむいているが。


「アレシャちゃん、声をきかせて下さい!アレシャちゃ——

「うるさい」


 側頭部に直撃した手刀でメリッサがばーん!と横に倒れる。頭をおさえながらメリッサが視線を上げると、冷たい目のペトラがそこに立っていた。そして次に容赦なくアレシャの額へチョップを落とす。


「ぁあ痛い!」

「あんたも。やらかしたからって、いつまでも不貞寝してるんじゃないわよ。起きなさい」

「……ごめんなさい」

『全く、ワケのわからん茶番を見せられるこっちの身にもなってくれ』


 ダレイオスのため息を聞きながら、アレシャはモソモソとベッドから起き出す。雨はすっかり上がって晴れ間が刺していた。どうやら通り雨だったらしい。

 アレシャたちが精神世界から戻ってきて、今日で三日ほど経っていた。精神世界から戻ってくると、魂と肉体がなじむまで少しの間上手く動けなくなる。帰還した三人は今朝までベッドで寝たきりだったのだ。

 しかし、アレシャは精神世界で数少ない手がかりを消し飛ばすという失態を犯したことから、「起きたくない」と駄々をこねていたのだ。杭が消滅したときにヘルマンが見せた、口をポカンと開けて信じられないものを見るような視線が忘れられない。ヘルマンはそれからアレシャのことを全く責めもしなかったのだが、それが逆にアレシャを申し訳なさで一杯にしていた。そのヘルマンはすでに起きて活動を始めている。メリッサも何事も無く動けるのだが、アレシャとずっと一緒にいる。ただのサボりである。


「まあ、起きようとは思ってたんだけどね。ちょっと踏ん切りつかなかったっていうか」

「気持ちは分からないでもないけど、これでも切羽詰まった状況だからね」

「うん、ごめんなさい。ちゃんとするよ。後で皆にもちゃんと謝らなきゃ……」


 ベッドに腰掛けて着替えながらアレシャが呟く。ペトラはそれに少しばかり首をかしげるが、ここへ来た目的を果たそうとアレシャに一部の新聞を手渡した。


「今日の新聞。ここ数日動きはなかったけれど、今日になって新情報が出たみたいよ」

「み、見せて!」


 受け取った新聞にアレシャは素早く目を通していく。アレシャは寝ている間も届いた新聞は全て読んでいた。精神世界に行っている間にあった、ルーグの葬儀で起きた事件についても、仲間達からの報告と新聞の報道でしっかりと情報を得ている。

 そして、その数日の新聞の一面は全て『魔王』の話題が独占していた。寧ろ、一面どころか紙面の多くが『魔王』や『英雄』、それにまつわる伝承の話が埋め尽くしている。アレシャたちに知る機会はなかったが、世間の反響は思ったよりも大きいと見える。

 日に日に増えるそんな『英雄』関連の記事が、ルーグが新たな『英雄』に選ばれたと世間に受け入れられつつあることを物語っている。この上ないバッドニュースであった。

 そんな世間的には明るく、彼ら的には真っ暗な記事の中でアレシャが注目するのは当然、一面を飾る目玉記事だ。その見出しをアレシャが読み上げる。


「『ロマノフ王国、『英雄』への協力を宣言』って……ええ!?」


 アレシャが驚きを露わにする。ロマノフ現王アルカディー二世にはアレシャも面識があり、その人柄には信頼を置いていた。例え友好国であるデカン帝国とオル・オウルクスに被害が及んだとしても、自分で事の真偽を判断して行動できる男であると、ダレイオスまでもが思っていた。しかし、そのロマノフ王国が『英雄』、つまりルーグに対して協力を表明したのだ。それはつまり、アレシャたちと明確に敵対するということである。


『可能性としてないわけではないと思っていたが、現実になるとは』

「でもさ、前にも話したけど、この事件の第一報が乗った新聞にはアルカディー陛下も分かる嘘がまじってたじゃん。モロクでの騒動が『魔王』の悪事だって話。それを無視して協力するって言ったの?」

『私たちの情報源はこの新聞だけだ。アルカディーがそのような旨を発表したことがさすがに真っ赤な嘘ということは有り得ないだろうが、その裏にある事実までは知りようが無い』

「……というと?」

『洗脳だろうな』


 話の途中からアレシャにも察しがつき始めていたが、やはりそうかとアレシャはがっくりと肩を落とす。イシュタルの洗脳は他国のトップにまで浸食していたようだ。アルカディー二世の戴冠式の時もそうだったが、ルーグはアルカディーと、いつでもロマノフ王国に気軽に訪れることができる程に良好な関係を築いている。洗脳の機会はいくらでもあったはずだ。


「しかし、これで敵に回ったのが四国目……。じわじわと包囲されていってる感じがするね」

「アルマスラ帝国も更に積極的にデカン帝国への協力を申し出ているわ。ルーグの『英雄』化が原因みたいね。アリア教国家の国はみんなデカン帝国にすりよっていっているみたいだわ。国家間でのパワーバランスが変わるのも時間の問題かも」

「家に『魔王』がいるから実感なかったですけど、『英雄』の影響力ってそこまで強いんですねぇ」


 暗い表情のアレシャ。しかし、ペトラとメリッサは事態をそれほど悲観しているようではなかった。アレシャはその態度を不思議に思う。


「何でそんな余裕な感じ?結構ヤバい状況だと思うんだけど……」

「そりゃ、このピンチが他でもないチャンスだからよ。相手の力がどんどん高くなっているからこそ、落とした時の反動は大きいものよ」


 アレシャの疑問にペトラがそう答えるが、アレシャは言っていることの意味がよく分からなかった。現状、その落とす策がないのだから。以前に立てた「洗脳の反魔術で敵の駒を減らしつつ、相手の信用を失墜させよう」作戦は既に失敗に終わっている。アレシャがリリの精神世界で洗脳の魔術の根源を溶かしちゃったからだ。それが反魔術研究を進める上での唯一の手がかりであった以上、もはやその作戦を遂行するための手立てが無い。

 改めてそう思うとアレシャの気分が再び落ち込んでくる。アレシャはベッドに倒れた。


「落とすことができればよかったんだけどね……。わたしが全部溶かしちゃったからね……。既に詰みなんだよね……わたしのせいで……」

「「は?」」


 ボソボソと自虐的に話すアレシャだったが、ペトラとメリッサは、コイツは何を言っているんだという表情でアレシャの事を見下ろしていた。アレシャはそんな二人を、コイツらは何故コイツは何を言っているんだという表情をしているんだという表情で見つめ返す。


「何で、コイツは何を言っているんだという表情でわたしを見るの?」


 言葉にもしてみた。しかし、二人の表情は変わらない。

 ペトラは大きくため息をついて、何も理解していないらしいアレシャへ語りかける。


「いい?アレシャ。あんたは確かに精神世界でやらかしたわ。でも、そのやらかしたおかげで一つ分かったこともあるのよ。大事なことがね」

「え、そ、そうなの?それって何さ」

「あなたが「溶かしてしまった」と言って、さっきから後悔してる物だけど、それはそもそも人を苦しめる洗脳の魔術の根源だったわけでしょ?それが跡形も無く溶けたの。それってつまり?」

「え?それってつまり……洗脳していた物がなくなったってワケでしょ?あれ、そうなったら洗脳が……解ける?」

「当たり前でしょ。で、あたしたちのそもそもの目的は洗脳を解く方法を探すことだったわけでしょ?だから手段は変われど、目的は達してるのよ。十分にね。あんたの持つ“溶ける”力の魔力があれば、洗脳を解くことができるのよ」


 やれやれと肩をすくめるペトラをアレシャはしばし呆けたまま見つめていた。そしてバッと両手を天に突きだした。


「や、やった!」

「そうね、やったのよ」

「そうですよ!アレシャちゃんは凄いんですよ!」

「やった!やったぞ!」


 突きだした手は万歳のつもりだったらしい。満面の笑みでアレシャは喜びを露わにした。ヘルマンが信じられないような顔をしていたのは、アレシャの力がこれほどに巨大な杭を溶かしてしまうからに驚いたから。責めたりしなかったのは、それが他ならぬ解決策だったら。分かってしまえばアレシャが悩む必要は微塵もなかったわけだ。うじうじモードから無事に復活したようで何よりである。それでも、勢い余って杭の魔法陣を解読すること無く溶かしてしまったことは大いに反省すべきなのだが、ペトラは今は言わないことにした。今は。後でたっぷり言い聞かせるつもりである。


「で、復活したところで早速なんだけど、研究に協力してほしいんだって。一緒に来てくれる?」

「勿論!行こ行こ!」


 元気よく立ち上がり、アレシャはペトラとメリッサとともに意気揚々と部屋を飛び出した。向かうのはもはやお決まりの研究場所になった庭園の小屋である。


「ここ数日はダリラさんとヴェロニカとクリームヒルデの三人で研究を進めていたみたいね。今朝からはヘルマンも加わったみたい」

『私も参加できれば良かったんだが、身体の持ち主があんな具合だったからな』

「め、面目ない……」


 ダレイオスの皮肉で少し悄げてしまったことで通常営業のテンションに戻ったアレシャは目的の小屋の扉を開く。

 するとその中では、いつも座っていた円テーブルをついにどかして大きな紙を床いっぱいに広げている研究担当四人の姿があった。紙には魔術の理論と魔法陣が長々と書き記されている。それを見たメリッサがふらりとよろめく。どうしたのかとアレシャが問うと、「魔術の理論を見ると軽い目眩がするようになった」とのこと。ヘルマンのとの徹夜の猛勉強は、彼女の心にそれなりの傷を残したらしい。情けないことに。

 そこで研究に集中していた四人が小屋へ入ってきた三人の姿に気づいて顔を上げる。


「おはよう。何かわたしに協力して欲——」


 アレシャが言い終わる前にクリームヒルデによってアレシャが取り押さえられた。そのまま無言で床に押さえつけられる。ヴェロニカがどこからか取り出した大きな硝子瓶をゴトリと置き、ダリラがその硝子瓶から伸びる、先端に鋭い針のついた管をアレシャの首へ押し当てる。終始無言で。


「大丈夫。ちょっと吸い取るだけ。痛いけど、すぐに終わります。すぐに、楽になるわ……」

「ストオォォップ!」


 真顔でアレシャに針を突き刺そうとしていたダリラをペトラが慌てて制止した。四人の首がぐるりと回り、ペトラの方へ向く。


「い、いきなり何しようとしてるのよ四人とも」

「勿論、研究に決まっている」

「いや、それは分かってるけど、順序ってものがあるでしょ。それに、ほら、アレシャ泣いてるし」


 ペトラが指さしたアレシャは床に大の字で横たわったまま虚空を見つめていたが、その目尻からは、ほろほろと涙が流れ落ちていた。


「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさぃひ」


 口から謝罪の言葉を垂れ流し続けるアレシャを見て四人も冷静になった。アレシャをその場に寝かせたまま優しく毛布をかけると、円テーブルを起こして話をすることにした。冷静に。アレシャの横にはメリッサがしゃがみこんでずっと頭を撫でている。


「折角だからあたしにも聞かせて欲しいんだけど、具体的にどうやって洗脳を解くつもりなの?」

「勿論アレシャちゃんの魔力を使うつもりだというのは分かってるわよね。アレシャちゃんの魔力を洗脳された人間に注入する。そうすればその人間に働く魔力の作用をアレシャちゃんの魔力が溶かして、洗脳が溶ける。そういう仕組みね」


 ヴェロニカがそのように説明する。それはペトラも理解できたし、知っていることだった。問題は、その対象へアレシャの魔力をどうやって注入するのかということだ。ペトラがそれを尋ねると、ダリラが一枚のカードを手渡した。ペトラがそれを手に取る。


「これって……通信用魔法陣よね」

「そう。私たちはこれを通して相手へ魔力を送るという手法を研究しているわ」


 現在使用されている通信魔法陣は、事前に連結させた魔法陣同士での通話を可能にするというものである。送り手側で発生した音声を魔法陣が魔力に変換する。それを転移魔法陣の要領で受け手側へ送り、再び音声に変換して受け手へ届くというわけだ。転移魔法陣よりもかなり簡易な仕組みでできているため、転移魔法陣のように場所を完全に固定しなくても送ることができるようになっている。つまり、通信魔法陣を一言で表せば、魔力専用転移魔法陣というわけだ。


「アレシャの魔力をそれと同じ要領で遠隔地の相手へ送り届けます。それを受けた相手はアレシャの魔力を受けて洗脳が溶ける、と簡単に言えばこんな具合ですわ」

「聞く限りじゃ、よくできた案じゃない。通信魔法陣の片割れを相手へ渡す必要があるけど、直接対面しなくていいのはいいわね」

「でも、その感じじゃ何か問題があるんだよね」


 アレシャがむくりと起き上がって問いかける。話は聞かせて貰っていたらしい。復活したのなら何よりだ。ここからはアレシャ、ついでにメリッサを加えて話を進める。アレシャに襲いかかった四人は謝罪くらいすべきなのかもしれないが、そのようなアレは一切なかった。誰も気にしていないので、ペトラは構わないことにする。


「で、問題があるの?」

「そうね。一番大きな問題は、送った魔力を如何にして受け手へ注入するか。相手の家にある魔力へ、アレシャちゃんの魔力を到達させる方法が確立していないのよ」

「言われてみれば確かにそうね。ただ魔力をぶっかけるだけじゃ、受け手がどろどろに溶けて終わりだもの」


 ペトラは納得しつつも、うーんと唸ってしまう。問題の部分はこの手法の根幹ともいえる部分であり、その注入方法が確立していないとなるとコレは研究が進んでいないのと同義であると言える。

 ペトラが指摘すると、研究していた四人の顔が一瞬でどんよりと曇る。


「一応手がかりというか、大まかな方針は立ちつつあるんだが、まだ時間がかりそうでな……。それに実験相手がいないというのも由々しき問題だ。もし理論が完成したとしても、それが本当に正しく機能するかの試しようがない」

「し、進行の度合いとしてはどれくらい?」

「十パーセントくらいですわ」


 クリームヒルデの分析に研究組が頷く。どうやら先はまだまだ長いようだ。全員、思わずため息が漏れる。


「ん?何々?えっと……『そういや、あの策については考えてくれたか?』ってダレイオスさんが聞いてるんだけど。ダリラおばさんとヴェロニカさんとヒルデの三人に。何のこと?」


 話を割ってアレシャが問いかけると、問いかけられた三人が顔を上げて首を横に振る。どうやら、その策とやらには手をつけていないようだ。その返答を聞いて、ダレイオスは考える。そして次にヘルマンへと問う。


「次、ヘルマンさんなんだけど、『精神世界で、アレシャが溶かしてしまう前に洗脳魔術の解析は行うことができたのか』って。そういや、私が穴の中を調べに行ってたとき、何か色々やってたよね。どうだったの?」

「全貌を解き明かすことはできていない。だが、読むことができた範囲のことはある程度分かった。まだ読み解けていない部分もあるが、例の杭に書いてあった内容は暗記してきている。後で手をつけるつもりだ」

『なるほど……大体分かった』


 一通りの話を聞いたダレイオスはそれらを頭の中で整理していき、アレシャに交代するよう頼んだ。そして、交代するなり彼は立ち上がる。


「よし!これからの方針を決めた。聞いてくれ」


 ダレイオスの言葉でその場にいた全員の視線が集中する。聞く体勢に入ったことを確認してから、ダレイオスは発表する。


「ダリラ、ヴェロニカ、クリームヒルデの三名は引き続き研究に励んでくれ。方針が立っているなら、それを元にとにかく試験段階のものまで作ってくれたらいい」

「了解。できる限りやってみるわ」


 代表してヴェロニカが答え、残りの二人も了承して頷く。それを受け取ってからダレイオスは次にヘルマンへ視線を移す。


「ヘルマン。そしてメリッサ!お前達は私と一緒に一つの魔術の研究に協力してもらいたい」

「それは先ほどダリラさんたちに聞いていた“策”とやらか?」

「ああ、そうだ。お前達の持っている情報が必要になるだろうからな。頼めるか?」

「勿論だ」

「私でお役に立てるか分かりませんけど、ダレイオスちゃんの頼みならオッケーです!」


 快い返事にダレイオスは満足げに頷く。アレシャはダレイオスの口にしている策がどういったものなのか知らないので反応しづらかったが、とりあえず『よっしゃ!』と気合いの入った声を出してみる。


「それと、相手が動きをみせるまで、もう少しありそうだが、だからといって時間が無限にあるわけでは当然ない。だから研究に期間を設けたいと思う。その期日に間に合うように各人頑張って貰いたい」

「その期間というのは、どれくらいなのでしょうか?」

「そうだな……。今日より七日と決めよう。それまでに、それぞれの目的の研究を完成、あるいは試験段階だとしても実用可能なレベルにまで完成させておこう」


 七日。ダリラたちの研究の進度が三日で十パーセントだったということを考えると、かなり短いように思える。しかし、これからはアレシャの魔力という重要な研究サンプルも扱える。方針も一応は立った。七日ならば不可能ではないとダリラは判断した。しかし、それは研究者であり、元から研究大好きおばさんである彼女だからそう思えること。ヴェロニカとクリームヒルデは先行きの過酷さに魂が離脱していた。徹夜は必須であると思われるので。

 ヘルマンとメリッサの班の研究に関しては、まだ何も始まっていない。しかし、それを取り仕切るつもりのダレイオスの頭の中には、ある程度の理論が存在している。これをヘルマンと相談して詰めていくだけで何とかなるのではないかと、ダレイオスは脳内で計画を立てるのだった。


「えっと、あ、あたしはどうすればいい?何か役に立てることとか……」

「そうだな……。ペトラ、あと他のメンバーたちにはできる限り私たちのサポートに徹して欲しい。それと、情報収集と整理だな。私たちはこちらにかかり切りになるだろうし、情勢にはしっかりと目を向けていて貰えるか」

「分かったわ。任せといて!」


 彼らの研究は重要なことであるが、もし敵が迫ってきていれば、当然そちらを優先することになる。そのためにもこれまでと同じように情報収集の徹底が必要だ。いや、相手の体勢が整いつつある今、これまで以上に重要であるかもしれない。

 ペトラもそれを理解しているようで、彼女は自信満々にまな板……違った、胸を叩いた。


「一先ず私の立てた方針はこんなところだ。異議はあるか?」


 誰も何も言わずにダレイオスを真っ直ぐに見つめ返す。それを同意と受け取ったダレイオスは円テーブルに拳を叩きつけて叫ぶ。


「よし!それじゃあ、早速行動開始だ!解散!」


 こうして『アルケーソーン』+αによる、引きこもり魔術研究が動き始めたのだ。自分たちを取り囲む敵を打ち倒すための逆転の一手を手に入れるために。

 そして今、これまで何度も研究準備のための会議の場を提供してきた円テーブルは、叩きつけたダレイオスの拳によってグシャリと潰れ静かに息を引き取った。お疲れ様でした。

サブタイトルの話数がズレていたので修正しました(3/22)

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