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魔王と少女のヒロイック  作者: 瀬戸湊
第二部
150/227

61 一度整理したい

総集編的意味合いが強い回です。文字数が多いので流し読みで丁度いいかも。

スヴェートの背で風を感じつつ、一行は『アルケーソーン』の事務所を目指す。現在置かれている状況について、できる限り早く仲間達と情報を共有しておかなければならない。乗っている人間が粗方駄目になってしまうので、最高速度は出さずに飛行するスヴェート。それを操るはアレシャの母、フェオドラだ。しかし、何故彼女が助けにやって来れたのか、誰もが疑問に思っていた。というわけで、ヴェロニカが代表して尋ねる。


「フェオドラお姉様。どうしてここが?それに私たちが危ない状況にあったとどうして分かったのですか?」

「皇帝ルーグが死んだという話はまだ一般に公開されていないけれど、デカン帝国に潜り込ませているシバさんからランドルフさんに、その情報が回ってきたのよ。それできな臭いと思ったランドルフさんが、いざという時のサポート役として樹海近くで待機するよう、私に指示を出したというわけ。突然樹海で濃い魔力反応を感じて急いで飛び込んだんだけど、間に合って良かったわ」


 濃い魔力反応とは、おそらく『七色の魔物』を呼び出した転移魔法陣のことだろう。実際はその魔物自体は全く脅威となっていなかったのだが、結果としてフェオドラに助けられたのは間違いない。一同が口々に礼を述べ、フェオドラは気にするなと手を振る。スヴェートはどうしまして、と言いたいのか小さくギャオッと鳴いた。


「それじゃあ、今度は私から聞いてもいいかしら。一体、何があったの」

「話せば長くなる。事務所にいる奴らにも説明するから、その時に話すので構わないか?」

「……そうね。ここで中途半端に聞くより良いわね。それじゃあ、事務所に急ぐわよ」


 フェオドラがスヴェートの首を優しく撫でると、スヴェートのスピードが僅かに上がる。日が落ちかけた暗がりの景色だが、この速度ならば目的地まではそうかからないだろう。しかし、ダレイオスには今すぐに聞いておきたいことが一つだけあった。


「フェオドラ。お前が樹海に下りてきたとき、私たち以外の人間の姿を見たか?緑色のマントを纏った、近衛師団の女性だ」

「いえ、見ていないわ。スヴェートのブレス攻撃で吹き飛んでしまったんじゃないかしら」

「……そうか、ならいいんだ。吹き飛んだなら、すぐに追ってくることはできないだろう。それなりの猶予はありそうだな」


 ダレイオスの言葉にフェオドラは同意を返し、スヴェートへ指示を出すことに意識を戻した。何てこと無いやりとりであったが、確認はとれた。フェオドラは、『イナンナ』の姿を見ていない。


『……ダレイオスさん。また後で、二人だけで話がある。その、お姉ちゃんのことで。だから、ダレイオスさんも他の皆にお姉ちゃんのことについては、まだ言わないようにお願い』

「分かった」


 ダレイオスは小さく返事をする。フェオドラが気づいていないのなら、『イナンナ』の正体に気づいているのはアレシャだけだ。なら、今は自分の中だけに閉まっておこうとアレシャは思ったのだ。自分でも何が何だか分からない。あまりに突然で、現実のものだと認識するのも難しい。そんな自分の中ですら整理できていないことで、仲間をいたずらに混乱させたくなかった。ダレイオスも同じように思っていたようで、アレシャの頼みを快く承諾した。


 それから少し時間が流れ、日が完全に落ちた頃。一行は『アルケーソーン』事務所の館に到着した。スヴェートはゆっくりと下降して館の目の前に着地し、背中に乗っていた面々は次々に地面に下りたった。


「ドラゴンに乗るってのも悪くないもんだ。異常な速度を出さなきゃな」

「あの時は地獄だったな……」


 セイフとブケファロスが大きく伸びをしながら呟く。他の面々も、それに大きく同意していた。話を聞いていたスヴェートは、やればできるんだと言いたげに鼻を鳴らし、フェオドラに良い子だと撫でられていた。

 そう会話をしていると、玄関の戸が開く。中から出てきたのはライラだ。一行の姿を見ると、僅かに驚いてから深々と頭を下げる。


「皆様、お帰りなさいませ。突然のお帰りですが、オル・オウルクスの依頼はもうよろしいので?」

「それについて話がある。急ぎだ。全員いるか?」

「はい。クリームヒルデ様もつい先日お戻りになられました」

「そうか、それは嬉しい知らせかもしれんな。全員会議室に集めてくれ」

「食堂にでございますね。かしこまりました」


 ダレイオスの言葉を丁寧に訂正してから、ライラはパタパタと駆けていった。この事務所に会議室はなく、食堂で代用しているのだ。これは一度ちゃんとした会議室を設けたほうがいいのではないかとダレイオスは思いつつ、全員を食堂へ入るよう促した。フェオドラが人数分の紅茶を用意していると、ライラが残りの六人を連れて部屋へ入ってくる。皆、戸惑いの表情を浮かべながらも席についた。おそらくライラが夕食の準備をしていたのだろう。食堂内には空腹を誘う香りが充満していた。つい気が抜けてしまうが、今回ばかりは無理にでも気を入れて貰わねば困る。


『ダレイオスさん、悪いけど会議の進行は任せてもいい?ちょっと考え事したいんだ。大丈夫、変に悩んだりしてるわけじゃないから』

「ああ、わかった」


 小さく頷いたダレイオスは椅子から立ち上がり、全員を見渡す。


「事務所にいた者にも分かるよう、まず置かれている状況を簡潔に述べさせて貰う。今、私たちは追われている。相手はデカン帝国。そして、オル・オウルクスのエルフたちだ」


 いきなり放り込まれた爆弾に、事情を知らなかった者は驚愕を露わにする。ということもなく、ほとんど無反応だった。彼らの頭の中は一様に「何言ってんだこいつ」状態である。その事情を知らなかった者代表として、ヘルマンが頭を押さえながら問う。


「……あまりに簡潔すぎて全く分からない。デカン帝国はともかく、なぜエルフにまで追われているんだ。順を追って説明してくれ」

「勿論、そのつもりだ。話すべきは、ルーグ引き連れた一行が樹海にまでやってきたときからだな」


 ダレイオスが一度椅子に座り直し、オル・オウルクスで起きた事件について腰を据えて話し始めた。話は長くなるが、全員が状況について正確に理解しておくのは最重要事項なのだ。ダレイオスは一番最初の事件から、時系列順に語る。


「事の発端は、デカン帝国一行がオル・オウルクス周辺の樹海に到着したとき。樹海で突然、謎の爆発が起きたのだ。私とペトラ、セイフがエルフたちと共に調査へ向かったんだ。そこでは爆発によって全滅したデカン帝国の者達がいた。そしてそこで私たちはあろう事か、ルーグの死を目撃することになった」

「……いや、待て。今、ルーグが死んだとか言ったか?」

「アステリオス、とりあえず今は話を聞こう。……俺もどうしようもなく質問したいのだが」


 ヘルマンによって話の続きが促され。ダレイオスはそれに応える。


「私はその死も怪しいとみているのだが、今はそれについては確認できていないので割愛する。だが、この事件でルーグに同行していた『イナンナ』が行方不明になっていることが判明した。更にオル・オウルクスとの手打ちのために、デカン帝国の宰相クーが来た」

「宰相が来ての手打ちか……。嫌な予感がするな……」

「それが、そうでもないのよ。クーはオル・オウルクスとの対等な国交を申し入れてきたわ」


 ヴェロニカの言葉に、居残り組は一様に首をかしげた。その反応も当然だ。当事者たちも最初は理解できなかったのだから。


「で、そこからどうしたんだ?」

「その国交も、『イナンナ』が行方不明なのも、デカン帝国の襲撃事件も、どうにもきな臭い。だからデカン帝国の目的を知るために私たちは調査を開始したんだ。ヴェロニカとブケファロスは大樹内を、ペトラとメリッサは樹海内を調べ始めた」

「大樹?」

「オル・オウルクスの街の中心にそびえる巨大な木よ。あたしたちエルフの守り神って言われてるわ」

「私とセイフは会談に出席していたのだが、最初の事件はそこで起こった。エルフの長、ラース=オルフ。その部下である男バート。そいつが長を突然殺したのだ。しかもそいつは殺しをした後、私の方を見ながら『魔王』様などと口にしたんだ。急いで取り押さえたんだが、そいつは『『魔王』ダレイオス様の命令で行ったことだ』と言い残して自ら腹を裂いた」

「…………なんだって?」


 思わずヘルマンが問い返した。他の居残り組も戸惑いの表情を浮かべていたが、当事者六人は黙って頷く。残念ながら本当のことであるのだ。


「そのせいで長暗殺の疑いは私に集まってしまって、デカン帝国の近衛師団とエルフたちに追われながら私とセイフは逃げ出した。そこでヴェロニカたちと合流するわけだが、そっちの説明を頼む。私も詳しく知りたいんでな」

「分かったわ。私とブケファロスくんは二人で大樹内を調べて回ったわ。あと、リットゥにも手伝って貰ってね」

『剣使いの荒いことだ』

「まあ、それはいいとして。俺たちはデカン帝国がオル・オウルクスに接近してきた理由を探してた。そんで調査の結果、“大樹の秘密”とかいうものの存在を知ったわけだ」


 二人は得た情報から、それが樹海内に隠されていて近衛師団が探しているのではないかと推測を立てたが、樹海内では手が出せないと言うこともあり、大樹内の調査に専念することにした。そこで浮上した一つの部屋へ向かったところで、事件が起きた。


「いきなり大樹全体が緑色の光を放ち始めたのよ。更に緑色の管みたいなのも大樹から生え始めて、そこからまた、緑色の霧が吐き出されはじめたわ。私のスギライトのペンダントの反応から、それは多分生命エネルギーだと思う」

「しかも、その霧が生まれ初めてから、大樹はみるみる内に枯れていっちまった。そこから見ても、あれは大樹の生命エネルギーだと思うぜ」

「それはまた、不思議な話ですわね。大樹が自らの命を突然削り始めたということですか?」

「そういうことになるわね。私たちはそれが“大樹の秘密”なんだろうって結論づけたわ。でも、問題はこれからで……」


 ヴェロニカの言うとおり、大樹の秘密が突然姿を現したということは、それには何かしらの要因があるのだ。その秘密を手にしようとしていた何者かの。


「大樹の目の前で、生命エネルギーを集めていた輩がいたんだよ。デカン帝国の連中だった。やつらの持つ銀色の球体が霧をどんどん吸い込んでいたんだよ。しかもそいつら、『『魔王』様復活が〜』とか抜かしてやがった」

「それは、ダレイオスに罪をかぶせようとしてるということか?先ほどのバートという男の時と同じではないか」


 アステリオスの言う通り、両方の事件の裏にいる者は同じだとダレイオスたちも考えていた。その裏にいる者とやらには心当たりがあるわけだが、それは言うまでもないのでヴェロニカは割愛した。


「さすがに放っておくワケにもいかなくて私とブケファロスくんはその人達のところへ飛び込んだんだけど、そしたら今度は私たちが『魔王』の使徒とやらにされてしまったわ」

「それも会談の場であったことと同じ、か。ヴェロニカさんがそんなものじゃないってことが、一目見て分からんのか!これだからデカン帝国は……!」


 ヘルマンの静かな怒りは放って置きつつブケファロスは、そこにダレイオスとセイフが乱入してきて無事に合流することが出来たと説明した。そしてその四人は、樹海調査組であるペトラとメリッサとの合流を図ることになるわけだ。


「なら、ここからがあたしの番ってことね。……あたしとメリッサはさっき言った通り樹海の調査をしていたわ。襲撃の事件現場に何か残っていないかと思ってね。結局何もなかったんだけど、帰ろうとしたときにメリッサが何かを察知したのよ」

「気になったので行ってみたんですけど、そしたらそこに、木に擬態した結界が張ってあったんですよ。精霊魔術で張られたやつです。私もペトラちゃんも解くことができなかったんですけど、突然、何かこう、ドロッと溶けるみたいに結界が無くなったんですよ」

「溶ける?何とも妙な表現だが、それじゃあその結界の中へは入れたのか?」

「そうよ。でも、そこからが問題で……」


 ペトラとメリッサの表情が曇る。結界の中には薄暗い地下通路が続いていたが、二人がそこで出会ったのは、どうしようもない大物だったのだ。


「通路歩いていたら、さっきのヴェロニカの話と同じように通路が緑色の光を発し始めたのよ。あたしもメリッサもそれに警戒してたんだけど、通路の奥からそれよりとんでもないものがやって来たわ……」

「とんでもないもの?」

「……『イナンナ』ですよ」


 居残り組はついに口をあんぐりと開けてしまった。当事者六人は既に『イナンナ』を目撃していたので、その気持ちは分かるというように、ただ頷いていた。


「はっきり言って、手も足も出なかったわ。今思い出しても、悔しくて仕方が無い。『自分はダレイオスよりも強い』とまで言ってたわよ」

「瞬間移動みたいなことまでしてましたし、一撃でやられてしまいました……」

「強いのか、『イナンナ』は。本当にダレイオスよりも強いなら、厄介だとかいうレベルの話ではないな。いや、『イナンナ』も気になるが、その緑の光も気になる。後はその通路の奥に何があったのかもだ」


 ヘルマンの言うことも最もである。『イナンナ』が確かに実在したのは重要なことであるが、先ほどの話と共通する緑色の光の話を聞いておきたいのだ。『イナンナ』に対する感情が先走ってしまったことをペトラは少し反省しつつ、ヘルマンの質問に答える。


「通路の先にあるのは“大樹の秘密”だって『イナンナ』は言ってたわ。それを作動させたともね。ヴェロニカの話と照らし合わせても、間違ってないと思うわ」

「やはり、そうなのか。……ん、そういえば『イナンナ』はどうやってその中に入ったんだ?結界が張ってあったんだろ?」

「そういえば、そうね……」


 ペトラがその理由を考え込む。あの結界はエルフが、“大樹の秘密”を守るために張ったものだと思われる。それを解除する方法がないかと考えてみる。


「そうだ、バートが言っていたな。長を殺したとき、『術者は消えた』とな。その結界を張っていた術者が消えた、ということじゃないのか?」

「なるほど、考えられる話だな。エルフの長が結界を張っていたということか。それで長の死とともに結界が解けた、か。バートの裏にいる人間は、やはり『イナンナ』だったか」

「あれ、じゃあなんで私たちが行ったときは結界が復活してたんですか?」

「別のエルフがまた結界を張り直したのではないか?いや、それならペトラたちが来たときにどうして結界が解けたのか……」


 ヘルマンは腕を組み、考え込み始めてしまった。ペトラもどうしてだろうと考えていると、そこにヤスケが声をかけてきた。


「しかし、『イナンナ』と戦ったってのに、よく無事だったな。殺されてもおかしくなかったんじゃないか?」

「それが、『イナンナ』は元々あたしたちを殺す気じゃなかったみたいなのよね。あたしたちを逃がすわけにはいかないって言ってたんだけど……」

「そうなのか……。そういや、『イナンナ』には負けたんだったな。それからどうなったんだ?」

「私たちが負けてから少しした時、何か通信が入ってから消えてしまいました。あれ?樹海じゃ通信は使えないんじゃ……?いや、それはいいです。で、『イナンナ』が消えてからすぐにエルフたちが地下通路にやってきまいた。私たちを捕らえようとしていたようで、私とペトラちゃんはそこで長さんが殺されたって知ったんです」

「はあ、なるほどな。でもその話を聞いて、イナンナがお前達を逃がさなかった理由は分かったな」


 そう口にしたヤスケにペトラがどういうことかと尋ねる。彼が言うのは単純な話だ。殺さず逃がさない、というのはつまり足止めということ。そして話を聞く限り『イナンナ』が待っていたのは駆けつけてきたエルフたちだということになる。その理由は一つ。


「その“大樹の秘密”が隠されている場所にいるお前らをエルフに目撃させることで、動かぬ証拠にしようとしたんだろうな。“大樹の秘密”を暴いて生命エネルギーを手にしようとしていることのな。確実に濡れ衣を着せるための一手というわけだ」

「でも、あたしとペトラが地下通路へ行ったのは偶然よ?」

「別に計画してなくても打てる手だろう。“大樹の秘密”の仕掛けを絶賛作動中のところにやってきたお前らを利用した相手が一枚上手だったということだ」

「そんな……。くそ、『イナンナ』、絶対許さないから……!」

『……』


 『イナンナ』への怒りを燃やすペトラだったが、アレシャの心は浮かない。その『イナンナ』が自分の姉だと告げたとき、ペトラがどんな風に思うか心配でないと言えば嘘になる。ただ、そういう無用な考え事はしないと振り切ったのだ。アレシャはダレイオスに話しの続きを進めるように促し、ダレイオスも頷く。


「お前達はそれで地下通路から逃げだし、オル・オウルクスまで戻ってきた。そうだな?」

「そうよ。それでダレイオスとセイフと合流して、一緒に街を出たわ」

「ヴェロニカさんとブケファロスはどこにいたんだ?」

「ペトラちゃん組との合流の可能性を高めるために事件現場で待機していたわ。結局エルフに見つかって戦闘になったのだけれどね。そんな最中だけどダレイオスちゃんとは合流できたわ。それでようやく全員揃って逃走開始というわけ」


 そこからは脱兎。ウサギに乗っているだけあって、まさに脱兎の逃走劇だった。しかし、そこに突然現れた存在の話を無視することは出来ない。


「逃走中の私たちの目の前に突然転移魔法陣が出現したんだ。そこから出てきたのが、あの『七色の魔物』だ」

「な、何だと!?そんな……いや、“死人”と関わりがあるらしい連中を相手にしているんだ。可能性としてはあったか……」

「『七色の魔物』と言うと、サーラ様の障壁と似通った力を持つ魔物、でしたね」


 魔物のことを知る居残り組たちは思い思いの反応をしつつ険しい顔を見せるが、彼らの予想とは違い、『七色の魔物』は障害とはなり得なかったのだ。ダレイオスがそのように言うと、彼らは険しい顔を緩めて一様に首をかしげる。


「『七色の魔物』は私たちを標的とせず、追っ手のエルフやデカン帝国の者ばかりを攻撃していたんだ。あのときはその行動を不可解に思っていたが、こうやって整理してみると理由は推測できるな」

「……そうね。相手は罪を『魔王』になすりつけようとしていたわ。そして、その『七色の魔物』は世間では『魔王』と深い関係があるというように思われているわ。そんな『七色の魔物』が私たちを庇ったとなれば、私たちが『魔王』一派である、というような印象を植え付けられるわね」

「どうしても粗方の罪をかぶせようとしてきているみたいだな……」

「ああ。それに私たちは脱出の直前、『顔見せだ』とかぬかすイナンナと直接対面した。しかし、私たちを殺そう、あるいは捕らえようとする素振りも見られなかった。今になって思うとな」

「……それって、わざと逃がしたってこと?ただ濡れ衣を被せるだけじゃない?」


 相手の行動の理由を解明しようと悩む一同。しかし、そういった考察の時間は後回しだ。ダレイオスはそこで一旦報告を締めることにする。

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