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魔王と少女のヒロイック  作者: 瀬戸湊
第二部
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18 最高傑作

「なるほどな。それはまた何とも穏やかでない話だ」

「はい。ですから、この街の騒ぎは私どもが原因であるのです。誠に申し訳ありませぬ」


 そしてギンジロウは深々と頭を下げた。彼の後ろに控えるヤスケ、ダレイオス、アステリオス、クリームヒルデの四人も同じく頭を下げた。

 しかし、その謝罪を受けたアルカディー二世はまるで怒りを見せていなかった。ギンジロウに顔を上げるように言い、優しく語りかける。


「その話では、お前達は寧ろ被害者ではないか。確かに市街を破壊したのは褒められることではないが、幸い民は皆無事だ。壊れたものもすぐに直すことができる。式典に影響することも無いだろう。気にせずともよい」

「……ありがとうございます」


 ギンジロウたちは再び頭を下げた。アルカディーは微笑むと少し考えるような素振りを見せた。


「もしお前たちが望むのなら、品評会に参加している『アンブラ』への依頼主を探して出場を取り消してやっても良いぞ。品評会の開催を取り決めたのは私なのだから、この件の原因は私にあるとも言える。せめてもの罪滅ぼしだ」

「ご厚意感謝いたしますが、謹んでお断りさせて頂きます。そのような卑怯な手を使う輩、私の鍛冶の腕の前にひれ伏させて見せますよ」


 自信たっぷりのギンジロウの言葉にアルカディーは心底愉快そうに笑った。


「面白いヤツだ。では、期待しているぞ」

「はっ!」


 ギンジロウたちは最後にもう一度頭を下げ、王城の謁見の間を後にした。

 混乱する街の様子を見た彼らは、さすがに知らん顔をしているのはマズいだろうと思い、新王の元へ弁解をしに来ていたのだ。結果はアルカディーの温情でおとがめ無し。すっきりさっぱりした心で彼らは次にモロクの商会へと向かう。

 商会内は中々にばたついていた。どうやら式典までに壊れた設備の復旧を間に合わせるため、国から依頼が来ているようだ。


「私たちが原因で商会を振り回すのにも少しずつ慣れてきてしまったな。あまり罪悪感がわかん」

『そういうこと言わない』


 アレシャの言葉に肩をすくめ、ダレイオスは受付へと向かう。目的はランドルフへの連絡だ。態々通信を入れることでもないので手紙を送ろうと考えたのだ。自分が『魔導姫』のアレシャであると伝えると、受付嬢はすぐに手紙を受け取ってくれた。


『これが噂に聞く、名パス!なんか凄まじい高揚感があるね!』

「それはお前だけだ。さて、用事が済んだところで私たちも行くか」


 ダレイオスがそう言い、クリームヒルデとアステリオスが頷く。品評会の準備があるでギンジロウとヤスケとはそこで一旦別れ、三人は街の北東へと向かった。人気がさっぱりない街の一画。そこには昨夜のレイヴンとの戦いの爪痕がまだ生々しく残っていた。廃棄区画であるとはいえ、放置しておくわけにもいかない。ダレイオスは屋根に飛び乗り、屋根のえぐれた部分に手を添えた。そしてダ土魔術を発動させる。すると大穴はみるみる内に塞がり元通りに修復されていった。クリームヒルデもダレイオスほど正確では無いが土魔術を用いて修復を手伝い、アステリオスは建物内から崩れた瓦礫を運び出す。うららかな晴れ空の下、彼らは肉体労働に汗を流していった。



 モロクの街に高らかなファンファーレが鳴り響く。王城前の巨大な広場にはものすさまじい数の民衆が詰めかけていた。彼らの視線は一点に注がれている。広場の奥に作られた巨大なステージ。その上に立って手を振る、絢爛豪華なマントを纏った男だ。他でもない、モロク新王アルカディー二世である。しかし群衆の中でそれを眺めるダレイオスは新王よりも、その隣にいる人物らのことが気になっていた。


「あの横の厳つい集団は何だ?」

『ああ、あれ?あれは、えっと、なんだったっけ……』


 アレシャが思い出そうと頭を捻る。深い緑に染まった軍服姿の厳つい顔立ちの男。いかにも力を持っているという威風堂々とした佇まいの彼の後ろには、整然と並ぶ集団が。彼ら全員に共通していたのは、獅子の紋章が記された緑色のマントを羽織っていることだった。

 そんな集団のことをアレシャが未だ思い出せないでいると、ダレイオスの疑問に先にギンジロウが答える。


「ありゃ、デカン帝国の皇帝様だな。デカン皇帝ルーグ。一代で自国を強国に成長させたやり手だ」

『それだ!確かロマノフ王国と国交を結んだっていつかの新聞に載ってた!』

「ああ、その記事なら私も覚えているぞ。“死人”事件の記事と同時期に掲載されていたからな。……となると、あのマントの集団は皇帝の近衛師団というところか」


 話題のルーグは丁度アルカディーと握手を交わしているところであった。互いに笑みをこぼすその姿は両国の関係の良好さを物語っている。

 すると、そこに割れんばかりの拍手が巻き起こった。ロマノフ王が新たに被る王冠が運び込まれてきたのだ。本来ならば前王がアルカディーへその王冠を授けるのだが、既に彼に与える立場の者はいない。故にアルカディーは臣下が持つ王冠を自ら手に取り、それを自らの頭へと乗せた。

 そして彼が右手を掲げると、その場に絶叫に近い歓声が響き渡る。アルカディーは笑みを浮かべながら民衆に手を振り続けていたが、彼が手で制すると民は口を閉ざしアルカディーの声に耳を傾けた。


「民よ!今一度我が名を名乗ろう!我が名ははアルカディー!このロマノフ王国を治める新たな王である!私が玉座に着いている限り、この国の繁栄と安寧を約束しよう!」


 更に大きな歓声が街中にこだました。さすがの支持率である。歓声はしばらく止むことは無く、アルカディーの即位式典は最高の形で幕を閉じた。

 だが、ギンジロウにとっては寧ろここからが本番である。式典があった広場には、設けられた数多くのステージで楽器の演奏、踊り、歌、様々な催しが執り行われ、まさに祭りという様相を呈していた。そんな中で先ほどの式典を行ったステージで行われるものこそ、何を隠そう世界中の高名な鍛冶職人を集めた品評会である。アルカディーの発案である上に、人々の関心も大きく引きつけているイベントだ。祭りの目玉であるとも言える。ステージの前には、出品される武具を美術品として見に来た金持ち、実用品として見に来た冒険者、アルカディーの姿を見に来た民衆がイベントの開始を今かと待ち構えていた。アレシャたちはその群衆の中で同じようにステージを見上げていた。


『くそ、私たちも関係者だろう。特等席は用意されていないのか!』

「まあ、アルカディー陛下以外にも偉い人がステージに立つからね。そういうわけにもいかないよ」

「ん、そういえばヒルデちゃんはどうした」


 その巨体故に彼の後ろにいる人から罵声を浴びせられているアステリオスは、周囲を見回す。先ほどまで彼の横にくっついていた少女の姿が見えない。アレシャも周囲にその姿がないかを探す。


『……もしかして、あれじゃないか?』

「あ、あれだ」


 ダレイオスとアレシャが発見したのは、少し離れた屋台で店主と口論になっている少女の姿だった。酒をよこせと言う少女と、もうやめとけと親切心で諭す店主。正直関わり合いになりたくないがそういうわけにもいかないので、二人は人混みをかき分けてそこへ向かう。


「えっと、ヒルデ……そこらへんにしとこうよ」

「ん?んだよ、アレシャか。このおっさんがあたしに酒を売れないってのたまってんだよ。何とか言ってやってくれ」

 一体いつの間に飲んだのか、すでにくだを巻き始めていたクリームヒルデにアレシャは頭が痛くなる。相手をするのが心底面倒だとさえ思った。


「お嬢さん、この子の友だちかね?悪いが連れて行ってくれないか。さすがにこんなになってる子に酒は飲ませられないよ」


 その言葉を聞いたアレシャが屋台の看板を見ると、『紅茶酒』の文字。そういえばクリームヒルデは紅茶が好物であったとアレシャは納得する。加えてつい最近になって酒の味を覚えたクリームヒルデにすれば飲みたくてしょうがない代物だろう。だからアレシャは、


「アステリオスさん。執行」

「了解」


 アステリオスはクリームヒルデに歩み寄ると、その華奢な身体をひょいと肩に担いだ。アレシャは店主に頭を下げて謝罪するとその場を後にした。酒に酔っているときのクリームヒルデの性格は正直面倒くさい。ここで甘やかせば、さらなる要求を通そうとしてくるだろう。なのでここは連れ去るのが一番であった。クリームヒルデは、最初は「離せ」ともがいていたが次第に大人しくなり、今はアステリオスに肩車されて品評会の開始を見守っていた。

 そしてついにステージ上に司会の男が姿を現した。彼が手に持っているものにダレイオスは見覚えがなかったが、アレシャがムセイオンで作られた拡声器であると説明する。司会者はそれを用いて、観衆へ声を届ける。


「お集まりの皆様!大変ながらくお待たせいたしました!これより、アルカディー陛下主催、世界の名工による品評会を開催したいと思います!」


 パチパチと拍手が起こる。まずまずの盛り上がりだ。


「では、早速お越し頂きましょう!我がロマノフ王国の君主にして今回の審査員!アルカディー陛下です!」


 凄まじい拍手が起こる。相当な盛り上がりだ。手を振りながら現れたアルカディーは先ほどとは違って簡素な背広姿であった。彼は司会に促され用意された椅子へ腰掛ける。


「更に更に!特別審査員のこのお方もお呼びいたしましょう!デカン帝国皇帝、ルーグ陛下です!」


 先ほどと見たときと同じ軍服の男が壇上へ上がる。アルカディーほどでは無いが大きな拍手が起こった。彼は顎髭をさすりながらアルカディーの隣へ腰掛けた。


「これほどのお二人がおられる場に立っているだけでも私、震えが止まりませんが、今回はアルカディー陛下から『無礼講』との有り難いお言葉を頂戴しましたので、のびのびとやらせていただきます!さて、名工達が持ち寄った最高傑作の数々、私も楽しみです!早速参りましょう!」


 司会が舞台の袖へ視線を向けると、そこから一人目の職人が姿を現した。日に焼けた肌と逞しい腕がいかにもそれらしい。彼が包みを解き取り出したのは、数々の細工が施された剣であった。その美しさに金持ちの観客たちは興味を強くする。その見た目には素晴らしいものであった。だが、その作品に苦言を呈する者がいた。


「話にならぬな。見事な細工だが、それが剣の刃にまで及んで居るではないか。それでは剣としては二流品だ」


 その言葉はデカン皇帝ルーグのものであった。見るからに武人である彼は、武器としての役割を損なっている剣の存在が許せなかったようだ。そしてその意見にはアルカディーも同意していた。「美しいだけならば、初めから美術品を求めれば良い」。彼のその言葉でトップバッターは見事に玉砕し、舞台袖へとぼとぼと帰って行った。

 しかし、それからも出るわ出るわ。武具のイデアとも呼べるものを捨て去り、見た目に固執した作品が次々と披露されていく。程度は様々であったが、宗教画が描かれた盾が持ち込まれたときはさすがのアルカディーも頭を抱えてしまった。イベントは失敗であったか。見物人はそう思うが、それは杞憂である。

 これまで壇上に上がった職人に共通していたのは、皆まだまだ年若い者ばかりであったということだ。後半に控えるは、熟練の技術と経験を持つベテラン職人達である。

 そのベテランたちのトップバッターは、長く伸ばした髭を蓄えた初老の男だった。彼が取り出したのは、一本の槍だ。光を受けて鋭く光る刃と赤い柄が対照的な一品である。


「刃には精錬したダマスクス鋼を使用しております。柄には血命樹を用い、石突きには少量のアダマントを。要所にのみ金属を用いることで取り回しやすさを重視し、槍の特性を殺さぬようにいたしました」


 アルカディーは差し出されたそれを手に取り、興味深げに眺めていた。観客達もその匠の作り出した業物に興味を引かれていた。


『あれはいいものだな。これまでのものは何だったのかと思うくらいだ』

「確かに……。ギンジロウさんにとってはこれからが勝負ってことかな」


 そしてアレシャの言う通りになる。それから現れた職人達が披露した作品はどれも息を飲むようなものばかりであった。ずっと厳しい意見を述べていたルーグすら、アルカディーと二人で作品の検分に夢中になるほどに素晴らしい品々である。だんだんと場が暖まっていき、ギンジロウの出番もだんだんと近づいていく。そしてついに、数多くの名品を見てほくほく顔のアルカディーの前に髭面の大男が姿を現した。


「あ、出てきた!ギンジロウさんだ!」

「ほんとだな!ヤスケもいるぞ!おぉい、頑張れよ!」


 アレシャと未だ酔っ払っているクリームヒルデがステージへ向けて手を振るがギンジロウはそれに気づくこと無く、ただ難しい顔をしていた。彼の後ろに控えていたヤスケが担いでいた包みをとき、一本の剣を取り出す。鞘に収まってるそれをヤスケが引き抜くと、ギラギラとした輝きを持った反りのある刀身が姿を現した。全てを断ち切らんとするような鋭い光に、二人の王も観客も感嘆の声を漏らす。


「これは私の故郷発祥の『カタナ』と呼ばれる剣にございます。ミスリルを熱し打つことを何度も繰り替えすことで、切れ味を限界まで高めた一品です」

「ほう、それは良いものだな。どれ、見せてみろ」


 アルカディーが手を差し出し、カタナを受け取ろうとする。しかし、ギンジロウはそれを手渡さなかった。難しい顔をして考え込んでいた。


「えっと、ギンジロウさん?どうされましたかー?」


 司会が呼びかけるも、ギンジロウは俯いたままだ。ヤスケも心配そうな顔で父親のことを見つめていた。


「どうした、何かあったか?」


 アルカディーが心配するようにギンジロウへ声をかける。すると彼は顔を上げ、カッと目を見開いた。


「申し訳ございません、アルカディー陛下!これは間違いなく私の自信作ですが、私の最高傑作と胸を張ることはできませぬ!」

「な、何?」


 ギンジロウの突然の宣言にアルカディーはぽかんと口を開けてしまう。ルーグもまた少しばかり驚いた顔で顎髭を撫でていた。ギンジロウはそんな二人に一礼すると、同じくぽかんとしている観客に向けて大きな声で呼びかけた。


「おい、嬢ちゃん!こっちまで来てくれ!やっぱり俺にとっての最高傑作はそれ以外にねえんだ!」


 ギンジロウが呼ぶ“嬢ちゃん”は間違いなくアレシャのことである。まさかのお呼びにアレシャは状況の理解が及んでいなかった。


「呼ばれてるぞ、アレシャちゃん」

「いや、分かってるけど……この中で出て行くの?」

『何を言っている。当たり前だろう』

「いや、でも……」


 アレシャはなおも困惑しており、このままアレシャに任せていては拉致があかないとダレイオスは思った。なので、ダレイオスはアレシャと身体を強制的に交代する。


『ちょ、ダレイオスさん!?』

「悪い、アステリオス。少し肩を借りるぞ」

「ああ」


 ダレイオスは隣に立つアステリオスの肩へ飛び乗ると、それを足場にして大きくジャンプした。その場にいた全員の視線がダレイオスへ釘付けになる。彼はそのままステージに華麗に下りたった。


「あ、えっと、こ、困ります!観客の方はステージから下りて……」


 不測の事態に慌てふためく司会を華麗に無視しつつギンジロウはダレイオスの肩をがしっと掴む。何を言いたいのか察したダレイオスはぐっと親指を突き出すと、背負っていた荷物から愛用のガントレットを取り出した。太陽の光を受けて透き通った白い光を放つガントレット。甲の部分に添えられたラピスラズリは持ち主の少女の瞳と同じ美しい蒼をたたえていた。それを見た誰もがその洗練された美に視線を奪われていた。

 ギンジロウはダレイオスからそれを受け取るとアルカディーの前へ跪き、それを手渡した。彼はそれを丁重に受け取るとゆっくりと手で触れていく。


「これは、素晴らしい。ガントレットというものの特性を失うこと無く、いや、寧ろ引き出した上で、なお美しさを損なっていない……。これは、素材は何でできているのだ?」

「これは全てアダマントで作られております」


 ギンジロウの言葉に、アダマントの希少性を知る者は大いに驚いた。アルカディーも勿論その一人であり、ガントレットの持つ輝きを楽しむようにそれを眺めていた。


「アダマントか……。どうやって手に入れた?」


 ルーグがふとギンジロウへ問いかける。しかし、ダレイオスとアレシャは「まずい」と思った。正直に答えれば、元はムセイオンから持ち出したものであるということがバレるかもしれないと思ったのだ。


「全くの偶然でございますよ。客が価値も知らず代金の代わりに置いていった汚れた剣を、私が打ち直したのです」

「ふむ。なるほどな。それは凄まじい拾いものをしたものだ」


 ルーグが顎髭を触りながら納得したように頷く。『魔王』の事情を知るギンジロウは上手く機転を利かせくれたようだ。二人は心の中で感謝を述べる。

 一通り堪能したアルカディーはガントレットをギンジロウへと返し、視線をダレイオスへと移した。


「お前は『魔導姫』のアレシャだったな。“死人”事件の功労者。ギンジロウがこれだけの一品を預けるとは、やはりただ者ではないようだ」

「お褒めの言葉感謝いたします。ですが、私は一介の冒険者にすぎませんよ。 私のギルド、『アルケーソーン』!の運営すらままならない小娘ですから」


 ギルド名のところだけやたらと声を張り上げつつダレイオスがそう言うとアルカディーは楽しげに笑った。その笑みは、まさに大満足というようにダレイオスには見えた。

 アルカディーは手をパンと叩くと椅子から立ち上がる。そしてステージの中央まで歩いて行き、観衆へ向けて話を始めた。


「私は決めたぞ。今回の品評会で最高の品を見せてくれたのは、このギンジロウだ」

「え!?えっと、アルカディー陛下、まだ他にも職人達が待っているのですが……」

「ああ、そうだな。だが、これ以上の品を持ってくることができる職人が居るとは私には思えないのだ。……では、こうしよう。このガントレットよりも良い品を持ってきていると自負する者は登壇するのだ」


 アルカディーは舞台袖へそう呼びかけるが、何者も現れることはなかった。それからアルカディーはルーグへ視線を向ける。ルーグもまた異論はないと頷きを返した。それからアルカディーは司会から拡声器を受け取り、観客へと呼びかける。


「皆、素晴らしい武具の数々を見せてくれた職人達に拍手を!そして、その中でも最高の一品を作り上げたギンジロウに拍手を!」


 その言葉に応え、轟々とした拍手の波が会場中に満ちた。ギンジロウは満面の笑みで手を振り、その拍手に答える。ダレイオスとヤスケもその隣で同じく手を振っていた。アステリオスはそれを眺めながら拍手をしつつ、肩車したままのクリームヒルデへ話しかける。


「これで無事に依頼料も手に入るな。今度こそ依頼完了だ。アンブラに近づくという希望はなくなってしまったが……」

「いや、あたしには我らが団長がいればそれでいいよ。アレシャはあたしを優しく包み込んでくれた。ダレイオスは二度もくじけた私を強く叱咤してくれた。あの二人があたしにとっての希望だよ」

「……そうか。……そうだな」


 クリームヒルデの呟きにアステリオスは同意を返し、彼女は少女らしい明るい笑みを浮かべた。そしていつの間にか懐に隠し持っていた紅茶酒を飲もうとしてアステリオスに取り上げられた。

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