1場。人生は選択の連続で、自分に今必要なことを選ぼう。
1場。
凛は突然、所属していた事務所を辞めた。
やっと、自分にも個人のマネージャーが付いて、これからが勝負と言うときに…不安が訪れたのだ。
ある朝、起きて台本を読もうとしたら,何も浮かばない。子役の時から台本を読んでも次から次と演技プランや、その台本の世界がカラフルに生き生きとイメージが出来たのに、今、手元にあるのは、ただの紙の上に印字された黒い文字だけだった。
色鮮やかだった世界が急に灰色の世界に変わった。
演技のレッスン中にも、集中が出来ずパートナーに対して嫌悪感ばかり募っていた。
【辞めよう。】
何度も思った、でも仲の良いマネージャーに言い出す事が出来なかった。
私の夢を叶えようとしてくれている人に向かって【芝居が出来ない】と言うのは余命を言い渡されるのと同じ意味を持っていたから。
子役の時から、ずっと女優として、生きてた自分。芝居が出来ない=女優として生きていけない=自分に価値がない。そんな方程式が頭の中をずっと巡って居た。
【でも、今の状態でお仕事は出来ない】
涙ながらにマネージャーに伝えた。
そして、ずっと生きがいだった女優という仕事に一回だけ休憩をしようと考えた。
子役の時から休みなんてなかった。
人生に1回だけ大きな休みをとろう。
明日から凛は【27才 女性 職業無職。】になる。