趣味と実益
さて、今日は私の仕事を紹介したいと思います。皆さんは「子供なのに仕事をしてるの?」って思いますよね。
私達が住んでいる【アルステア孤児院】は国の助金が少ないらしくて経営するだけで精一杯で、そのせいでご飯が食べられないの。だから自分の食べ物は自分で買うしかない。
では、3歳児でしかない私がどうやってお金を稼いでいるのか?
説明するにはこの世界の事を話さなくてはいけない。この世界は地球と同じような環境で、驚くことに【魔法】が存在する世界なの。魔法は私達の暮らしに身近で、電気の代わりに魔力が生活を支えている。
魔法があるということは魔物も存在しているわけで、力のない人々は日々魔物の被害に怯えて暮らしているの。それを退治したりして生計をたてるギルドもある。そう、放浪者だ。または冒険者ともいう。とても自由な人達なの。
で、話を戻すと、私はそのギルドに薬草や小さな魔物を捕まえて売ってお金を稼いでいるというわけ。
「蒼空ちゃん、気を付けて行ってくるのよ?」
「はぁーい!」
施設の職員である修道女の彩乃さんに見送られて孤児院を出発した。私はお気に入りの小さな桃色のリュックを背負って近くの草原に向かう。
【ランテ草原】
はい、草原に着きました。名前はランテ草原と呼ばれている比較的に安全な草原です。ここには弱い魔物しか生息していないから子供でも安心して来られる場所なんだ。
「よし!今日も大収穫だぁ!」
これから私が採取するのはこの草原で採れるモノ全部です。私はモノを集めるのが好きで、収集癖があるの。それは前世からの趣味でね、珍しいモノを集めるのが大好きなの。だからよくガラクタみたいなのを持って帰るとね、朱鷺お兄ちゃんに売られちゃったの。最初は悲しくて泣いちゃったけど、それが美味しいご飯に変わるんだって知ったらケロッとしちゃった。
「えと、【青のハーブ】と【青の球根】は……あ、たくさんある!!よかったぁ!」
【青のハーブ】
回復薬の材料になる薬草。草原や道端に多く群生している。
【青の球根】
湿布の原料になる。また、滋養に良い食材。
これらを売ると100gで50リンになる。
リンとはこの国の通貨の呼び名なんだ。
1リン=1円
10リン=10円
100リン=100円
で、1000円くらいになると通貨名が変わるの。
千円→1レン
一万円→1ルン
百万円→1ヘル
一千万円→1ベル
こんな感じでお金があるのだけど、私達が使えるのは精々1ルン(一万円)だと思っている。だから大きな単位を覚えなくても大丈夫……だと思う。
でね、私は大体500gを収穫するから250リン(250
円)を貰える。その他にも色々採取するから一日で1レンと300リン(1300円)を稼いでいるのだ。
パン1個が150リンだから結構な稼ぎがある。
「あ、【兜キングの脱け殻】だ!」
あっちこっちに落ちている虫の脱け殻。これは家畜の餌に混ぜられるの。兜キングの脱け殻には脱皮するために沢山の栄養を溜め込んでいるから、当然脱け殻にも豊富な栄養がある。それを家畜は喜んで食べるの。この脱け殻は100gで30リンする。
その他に【狼の牙×2】【トビ兎の糞】【大きな骨×3】【鳥の羽×30】【天然ワサビ×20】【何かの種】
「今日はこれくらいにしようかな?」
ちょっと早いけどお昼過ぎたし、朱鷺お兄ちゃんの門限はお昼頃だから丁度いい。夕方くらいになると少し強い魔物や悪い人間が行き交うからね。
「お嬢ちゃん、今日も大量だな。」
「兵士のお兄さんもおつかれさま!」
この草原の付近には見張りの兵士のお兄さん方がいる。ここの草原はたいしたことのない平凡な場所なのだけど、唯一、街を繋げる通りだから一応見張りを立てているそうなのだ。
「兄ちゃんの言いつけを守って偉いなぁ!」
「うん!」
ナデナデと頭を撫でられてちょっと嬉しい私。兵士のお兄さんにお菓子を貰って別れた後、街のギルドに直行する。
【ムツキの街】
ムツキの街というのが私達が暮らす街。ここはムツキ子爵様が治める街なの。どこにでもある小さな街の一つだ。
「こんにちは!」
ギルドに入ると領民のための窓口に今日の収穫物を提出する。ここはギルドに登録しなくても領民なら誰でも収穫したものを換金してくれるの。
「いらっしゃい。今日も大量だな。」
「晴さん、今日もおねがいします!」
この人はギルド職員の晴さん。40代の優しいおじさんなんだ。元は放浪者だったんだって。怪我をしてからここのギルド職員になったらしい。
「今から計算するから待っていてね。」
「はい。」
暫く時間が掛かりそうなので大人しく隅にある椅子に座って待っている。その間にさっき貰ったお菓子を食べてお昼の代わりにする。
ギルド内を見ると今日もチラホラ放浪者がいる。彼等は自身の実力で勝ち取った様々な装備を装着していて、様々な格好をしている。鎧とか厳めしい格好はない。何というか、近代的な服装に装飾として竜の鱗を付けたり、甲殻を身に付けたりとお洒落なのだ。
「お待たせ。これが今日の報酬だよ。」
「ありがとうございます!」
今日は何と2000レン(二千円)があった。かなりの報酬だけど……。
「あ、あの……」
「あぁ、報酬が多いのはね、薬草や家畜の餌になる兜キングの甲殻を誰も採ってこないからなんだよ。沢山集めるのに時間が掛かって低報酬じゃ誰もやりたがらなくてね。だから報酬を高くしたのさ。だから多いんだよ。」
「なら、明日もたくさん採ってくるね!」
「助かるよ。気を付けて帰りなよ。」
「はい!さようなら!」
今日は沢山報酬が出たからお兄ちゃんに美味しい物を食べさせてあげられる。でも、お兄ちゃんの方が稼ぎが良いから、私はいつも薬とか滋養に良い食べ物を買うようにしている。残ったお金は貯金しているんだ。いつか、お兄ちゃんと一緒に暮らすためにね。
蒼空が帰った後、ギルドでは……
「本当に良い子だなぁ……」
「最近のガキはスレてるからな。蒼空ちゃんだけが可愛いぞ。あそこの孤児院のガキは皆、変に大人っていうのか……」
「まあ、親がいなくて自分の飯を稼がなくちゃいけないのが原因なんだろうがな。」
放浪者達はこの街の事情を知っている。自分が暮らす街を知っておくのも基本だからだ。
「お前達も蒼空ちゃんを見習って報酬が少なくても何でも請け負えよ。雑事が溜まって仕方ないんだ。」
「そりゃあないぜ、晴さん。俺達も生活があるからな。それに、蒼空ちゃんが殆ど片付けてるだろ?」
「……まぁな。」
「蒼空ちゃんの仕事を奪っちまったら可哀想だ。」
「違いねぇ!」
ガハハハハと好き勝手に言う彼等は目的の依頼書を持って旅立っていったのだった。