お兄ちゃんと私
私は嶺塚蒼空。3歳の女の子だけど普通の幼女じゃないの。実は、私は転生者で前世の記憶があるの。前世の私は保育士で30歳の独身だった。死因は病死。あっけない最期だったと記憶している。まあ、今は蒼空として生きていくだけだから前世に未練はない。
次に私の今の状況を説明しようと思う。
私は孤児で今は施設に身を置いているの。孤児になったのは1歳の時だった。母親が私達を棄てたのだ。
「蒼空。」
『あ、朱鷺お兄ちゃん!』
彼は私の正真正銘血の繋がった兄の嶺塚朱鷺、10歳。将来を約束されたイケメンで私には過保護の自慢の兄である。
ヒョイと私を抱き上げるお兄ちゃん。お兄ちゃんは他の施設の子を抱き上げたことはない。いつも私だけ。
お兄ちゃんはイケメンだから施設の女の子に人気なんだ。私とお兄ちゃんは黒髪なんだけど、毛先に向かって赤い髪になるんだ。私のお気に入りなんだよ。それと、お揃いのサファイアのような瞳。お兄ちゃんは私の目が一番綺麗だって言ってくれるけど、私はお兄ちゃんが一番綺麗だと思う。
「昼ご飯が出来たそうだ。行くぞ。」
『うん!』
お兄ちゃんはどんな時も私と一緒に過ごそうとする。最近はお風呂とトイレは無くなったが、それ以外は私と一緒に行動するのだ。
私はお兄ちゃんと一緒にいられて嬉しいと思うけど、施設にいるお姉ちゃん達は「あんた達、異常にベタベタし過ぎよ。」と呆れ混じりの嫉妬をしてくる。
「ほら、ゆっくり食べろ。」
『もぐもぐ……うん。』
固いパンをちぎってスープに入れてくれたお兄ちゃんもすぐに自分の食事に入る。
優雅に食べるお兄ちゃんをお姉ちゃん達はうっとりと見ながら食べていた。頬を染めながら食べる乙女達が不気味だと思う。
お兄ちゃんはあまり話したがらないけど、私達は元々どこかの名家の血を引いているらしい。それなら私達を母親はどうして捨てたのかな?もしかして転生者である私が原因だったのかも……。正確な事は分からない。でもお兄ちゃんは私をいっぱい愛してくれているから両親がいなくても平気だ。お兄ちゃんがいるなら大丈夫だもん。
お兄ちゃん大好き!!