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毎日が幸せだった

適当に作ってたら偉いことになった……しかもあまり面白くないと言う(*´ω`*)この先砂糖多めですのでご了承ください。書いてる本人が糖尿病になりそうです(ヽ´ω`)

七歳の時に妹ができた。


びっくりするくらい綺麗な女の子で、僕みたいな普通の日本人とは似ても似つかない、北欧系のほりの深い顔だった。


それでいてとても愛らしくて、僕より断然小さくて、髪は太陽の光に透き通っていそうなくらいの白と金色の間の色のような髪だった。


目はくりくりしていて蒼い。


手は小さいのにとってもあったかい。


ほっぺたはもちもちのぷにぷにで、僕は彼女のぷにぷにもちもちのほっぺたを毎日触って幸せな気持ちになっていた。


そんな僕を、彼女は膝の上に乗って嬉しそうに笑っていた。


可愛い妹が、僕が五歳の時にできた。


でも似てないから当然だけど、連れ子だった。


これは後から聞いた話だった。


どこから種をつけたのか、新婚旅行中、ニューヨークで父はどこかのブロンドアメリカ人を引っ掛けてしまったそうで、そのことを父から聞かされた母さんは、心の底から怒り狂い、髪の毛を金色に逆立てて家から出て行ってしまった。


父さん?


うん、外道な人間だと高校生になった今でも思う。


祖母の話によると、どうやら、母の手はずによってメキシコ送りになったらしい。


ちょうど的が欲しいとちょっと怖い方面の方々が引き取ったという話だそうだ。


今頃、マラカス持ってアミーゴとかしているんだろうか。


それとも映画みたいにギターケースから機関銃乱射していたりしているのだろうか。


まぁ、父は殺しても死なないような人間なので多分生きているのだろう。


母も今頃実家でむせび泣いているのだろう。


というわけで、僕が十二歳。妹は七歳の時だろう。


この家は早い段階で空っぽになってしまった。


家の中には、僕と妹と、二週間に一度、ここに帰ってきてお金を置いて行ってくれる母だけ。


僕らは二人きりになってしまった。


二人きりだけど、妹のほっぺたは相変わらずふわふわのぷにぷにだった。


僕はそんな妹のほっぺたを毎日触っていた。


妹も楽しそうだった。


そんな毎日でいいなと僕は思った。





「もう、私下着お兄ちゃんのと一緒に洗濯しないでよ!汚いんだから!」


「一緒に洗わないと時間かかるからさ……ね、我慢してよリナぁ」


「いや!絶対にいや!大体私の服に触らないでよ!最低!」


「うーん、でも触らないと洗濯できない……」


「手袋してよ!とにかく絶対に触らないで!」


「リナが洗濯してもいいんだよ?」


「いや!絶対にいや!」


――お姫様は今日もご機嫌斜めです。


僕が十七歳。妹は十二歳だっ。


かわいい盛りだと個人的には思う。


「くさっ!お兄ちゃんのパンツ臭いよぉ!だから一緒に洗わないでって言ったのに……」


「にはは……ごめんちゃい」


「もぉ!笑ってないで早く取ってよぉ……うぇええ……」


「あ、僕手袋取ってくる」


「逃げんなぁ!」


というわけで、そんなこんなで十年が経った。


父は帰らず、母はほとんど顔を見せず、ただ母が大量に仕送りしてくれるお金だけが銀行に積もり積もっていった。


お金の方は流石に妹のリナに渡すわけにはいかず、僕の方が管理して、学校や勉強塾などに払っている。家の方も僕ができる限り家事を行い、リナがそれを手伝ってくれているという感じになっている。


ただ、リナの方はそういうのが不満なようで―――


「お兄ちゃん!お金!」


「何使うの?」


「新しい化粧品買いたいっ、いいよね!」


「予算提示♪」


「……三十万ぐらい」


――僕の方も彼女のその金銭感覚のなさに不満を覚えるばかりで。


「だぁめ。一万円だけ」


「いや!ぜったいこの香水ほしいの、あとこのかばんすっごく可愛いんだよ、学校でも流行っていてねっ!」


「ブランドなんか持ち歩いて変な人に襲われたらどうするの?リナは髪も綺麗なんだからすぐに目立つよ?」


「ううううううっ!これ欲しいのぉおほしい欲しい欲しい欲しいぃいいいい!」


「だぁめ」


「うううっ、このクソデブぅ!死んじゃえぇ!」


「にはは」


僕は出っ張ったお腹をさすって苦笑いを浮かべた。


何年か経って彼女の元気さは相変わらずで、友達に影響されたのか、或いは思春期というものなのか、言葉尻が少し毒々しい感じではあるけどとても元気だ。


僕はと言うと毎日朝起きて掃除して洗濯して学校に行って、すぐに帰って洗濯してご飯作って洗濯してお風呂を洗ってリナにこっぴどく怒られての繰り返しだった。


少ししんどいけど、立った二人分の生活を家事面で支えるのはそれほど生活サイクルに支障はなかったと思う。


結局卒業まで部活動をすることはなかったけど、こんなおデブさんだから友達もあまりできなかったけど、それでもこの十年毎日この繰り返しを続けていて、僕はそれほどイヤじゃなかった。


だって毎日の中に妹がいたから、そんなに苦しくはなかった。


毎日、妹を見ることができたから―――


「ねぇ聞いてよお兄ちゃん。今日社会の武道がねすんごいむかつくこと言ったの」


「あ、武道先生?あの人厳しいよねぇ。僕もすごく怒られた記憶があるよ」


「お兄ちゃんはなんで怒られたの?」


「宿題忘れた」


「……もういい」


「にひひっ、リナも宿題忘れたんだろぉ」


「……」


「だからあれだけ寝る前に宿題済ませたかって聞いたのに。僕手伝ったよ、寝る前なら」


「――-お兄ちゃん手伝うって言ってすぐ寝ちゃうじゃん!全然手伝ってくれないじゃん!」


「そう?」


「むかつくぅ!何その自覚のないって顔!不思議そうに首かしげないでよ!」


「記憶にございません」


「このド天然デブ!」


「にはは」


罵倒でも、リナが目の前で僕のご飯をおいしそうに食べてくれるだけで、もう、それだけで十分だった。


それだけ、僕は良かった―――






『ねぇ、本気なの達也?』


「うん」


電話の向こうであの女が話しかけてくる。


僕らを捨てて家を出て行ったあの女の言葉が耳に垂れ流れてきて、許容できない程のおぞましさと気持ち悪さに、僕は思わず携帯の受話器を耳から離した。


それでもあの女の声はひっきりなしに聞こえてくる。


今にも携帯を握りつぶしてしまいそうだ―――


「何度も言わせないで。僕は……絶対にこの家を守る」


『無茶言わないでよ。もうそっちのローンをいつまでも払うとかばかばかしいことしてられないの』


「いやだ。リナと一緒にこっちに暮らす」


――この女の目的は大体知っている。


どうしても、僕の血が欲しいようだ。なんでもあの女の家は伝統と格式のある家柄らしいので、僕の男の血はどうしても必要らしい。


血反吐が出る。それこそこの血反吐をあの女に送りつけてやれるくらいに――


「祖母もそっちにいるんだろう。聞いてるだろ、あなたたちの言うことには従わない。僕らは今まで通りここで暮らす」


『あいつの娘と一緒にいて何になるのよ、いいからこっちに戻っていらっしゃい』


「十年も僕らを放り出していたあんたが言えたことかよ。……あんたにこの家の敷居を跨がせるつもりはない」


『食べさせてるのは私でしょ?だったら――』


「金を与えれば子供が育つを思っているのか!? 人のぬくもりも与えずただ冷たい床の上に僕らを放っておいて勝手に出て行って、何様のつもりだ!」


ビシリと携帯のフレームがきしみ、誰もいない薄暗いリビングに僕の怒声が響き渡る。


だから、この女と喋るのは嫌だ―――心も一緒に軋んでしまいそうだから。


「……。僕はあの家に行かない。……リナも同様だ」


『――-お父様があなたの顔を見たいと言ってるのよ、どうしても』


「写真を適当に送ってやるそれで我慢すればいい。こんなくだらない電話二度と送ってくるな」


そう言って僕は携帯の電源を切った。


そうして僕は誰もいないリビングの薄暗い天井を見上げ、深いため息を投げかける。


聞こえてくるのは、静寂の中でやけに響く、荒い僕の息遣い。


そして遠くから聞こえる、緊張気味に小刻みに震えるか細い吐息。


苛立ちに髪をくしゃくしゃに書きあげるままに後ろを振り返ると、そこには明かりのついた廊下からリビングの入口を覗きこむブロンド髪の少女が不安げに僕を見上げていた。


かわいらしいパジャマ姿。


ジワリと涙をにじませる蒼い瞳。


唇は少し乾いて緊張気味に息が零れていて、華奢な身体は小さな肩をさらにすぼめていた。


そのほっぺたは今も白く、ぷにぷにのふわふわだった。


「……」


僕は溜息を大きく吐き出すままに妹に近づく。


引き寄せられるように歩み寄るままに、妹はハッとなって首をすぼめて背中を丸めて身体を縮こまらせる――


「ご、ごめんなさい……」


「――ぷにぷにぃ……」


「……お兄ちゃん?」


妹は恐る恐る顔を上げる。


僕は膝を丸めて、涙を浮かべて惚ける彼女のぷにぷにのほっぺたを軽くつついたり手でこねるように撫でたりする。


そんな僕を妹はぽかんとした表情で見上げる。


とてもかわいらしくて、僕は目を細めた。


「にははっ。リナのほっぺた柔らかいなぁ……」


「にゅう……お兄ちゃんそればっか……」


「だってリナ可愛いだもん。いいじゃんっ」


「……そればっか」


「リナに嘘はつきたくないからね。本当のことを毎日言ったらおんなじことしか言えないよぉ」


「……お兄ちゃん、私……」


「大丈夫だよリナ」


僕は微笑んだ。


リナは不安げにゆがめていた顔をほころばせると、僕を見上げた。


僕はもう一度言った。


「大丈夫。必ずこの家は守って見せるから」


――手段がないわけじゃなかった。


いざとなれば、こっそりとあの女から渡されていたお金で弁護士等々を雇って家の権利を委譲させることもできる。


そのために高校を辞め近くで働くことになるになるかもしれない―――それでもある程度準備は進めていた。


この家を守るためなら、僕は何でもする。


妹が傍にいるのなら―――


「――-大丈夫、僕が絶対にリナを守るから」


「お兄ちゃん……!」


リナは僕の出っ張ったお腹に顔をうずめる。


グニグニと柔らかな肌が僕のお腹をつついてこそばゆくて、気恥ずかしくて、それでも僕は泣きじゃくる妹の背中をなだめるようにさすった。


そして震える小さな肩をさすり、彼女の耳元に囁く。


「さぁ寝よう。明日も学校行かないとね」


「うん……うん……」


――明日も同じことの繰り返し。


でもその繰り返しができることが何よりうれしい。


この繰り返しを守っていこう。どこまでも妹が傍にいる世界を守り続けていこう。


泣きじゃくる妹をさすりながら、力強く僕は頷いた。

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