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第7話:調査対象になった

王都の一角、役所街。


朝から人の出入りが多く、空気が重かった。

書類を抱えた役人たちが、落ち着きなく行き交っている。


理由はひとつ。


「……通商路の混乱、まだ原因不明だそうだ」

「水量、物資、馬車事故、全部バラバラなのに、同時に起きてる」


噂は、すでに役所の中まで入り込んでいた。


(そりゃそうだ)


レインは、少し離れた通りから建物を眺めていた。

帽子を深くかぶり、人混みに紛れている。


(ここまで崩れると、さすがに“偶然”じゃ済まない)


現場で小さく直しただけのつもりだった。

荷車、水量、油の配分。

どれも「本来あるべき形」に戻しただけだ。


だが――

それが逆に目立った。


「おかしい点がある」

「誰かが、流れを理解している」


そう判断する人間が、必ず出てくる。


案の定だった。


役所の建物から、数人の男が出てくる。

武装はしていないが、動きが揃っている。

ただの役人ではない。


(調査班か)


レインはすぐに理解した。


彼らは、犯人探しを始めたのではない。

“基準を狂わせた存在”を探している。


「報告書だと、“レイン”という名前が何度も出てくる」

「元冒険者。補給係だったらしいな」

「追放済みか。なら話は早い」


その会話が、はっきりと聞こえた。


(……ああ、来たか)


胸がざわつく。

だが恐怖ではない。


むしろ、遅すぎるくらいだ。


彼らはまだ勘違いしている。

レインが“犯人”だと思っている。


違う。


彼は壊した覚えなどない。

ただ――耐えられない基準が勝手に壊れただけだ。


だが、調査する側にはそんな理屈は通らない。


「まずは接触だ」

「単独行動を確認する」

「必要なら、拘束も視野に入れろ」


その言葉を聞いた瞬間、

レインは静かに背を向けた。


(面倒になってきたな)


だが、逃げるつもりはない。

ここで動かなければ、もっと大きな歪みが生まれる。


――そして、その歪みは、必ず自分に向かってくる。


路地へ入る直前、レインは一度だけ空を見上げた。

昼間なのに、なぜか冷たい風が吹いていた。


(“基準”を守る側が動いたか)


それはつまり――

この世界が、本気で自分を異物として認識し始めた証拠だった。

調査班、動き出しました。

次は「話し合い」じゃ済みません。

明日も19時更新です。

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