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第18話:お前の「価値」を計算してみろ

俺の「最適化」が始まった街は、もはや別の生き物のように脈動していた。 昨日までガラクタが散らばっていた大通りは、俺が計算した「最も効率的な動線」に沿って整備され、人々の流れがスムーズになっている。


俺は、パーカーの首元を直し、ポケットに手を突っ込んで歩く。機能性を突き詰めれば、やはりこの形に行き着く。


「……信じられない。あなたが数値を少し弄るだけで、これほど街の活気が戻るなんて」


後ろから、感心したような、それでいてどこか呆れたような声がした。 この国の第一王女だ。 彼女は昨日から、俺の「仕事」をこの目で見届けると言い張り、護衛を下がらせて俺の背中を追いかけてきている。


「王女様、視察なら勝手にやってくれ。俺の歩調を乱さない程度にな」


「これでも必死についていっているのよ。……あ、あれは?」


王女が街の広場の隅を指差した。 そこには、地面にへたり込み、ボロボロの布を纏った惨めな男がいた。


かつてのパーティリーダーだ。 金髪は汚れ、自慢だった豪華な装備は一つも残っていない。


「……レイン。……レインじゃないか!」


俺に気づいたリーダーが、這いずるようにして近寄ってくる。 だが、その前に黒い制服に身を包んだ自警団が、音もなく立ちふさがった。 彼らは俺が算出した「最短の巡回ルート」と「最適化された訓練法」で鍛え直した、この街の新しい番人たちだ。


「な、なんだよお前ら! そこをどけ! 俺は最強の剣士だぞ!」


「計算終了だ」


俺は立ち止まり、フードを深く被り直した。


「リーダー。お前の今の市場価値は、ゼロだ。……いや、自警団の業務を15秒停滞させた分、マイナスだな」


「な、何だと……! お前のせいで、俺たちはギルドを追い出され、装備も家も全部失ったんだぞ! 少しは責任を感じたらどうなんだ!」


リーダーが逆上して拳を振り上げる。 だが、その動きは自警団の隊員によって、あくびが出るほど簡単に封じられた。


「責任? 俺が辞めた後、お前らが自爆した数字の責任を、なぜ俺が取る必要がある?」


俺は冷たく言い放つ。


「お前は、俺という『調整者』をコストゼロだと勘違いして捨てた。その瞬間、お前の破滅は確定していたんだ。……これ以上、俺の視界にノイズを増やすな」


「…………っ、ああああああああああああああああああああああ!」


リーダーが絶望の叫びを上げ、自警団に引きずられていく。 かつて俺を「無能」と呼んだ男の、あまりにも呆気ない終焉だった。


「……レイン、少し厳しすぎない?」


隣で一部始終を見ていた王女が、少しだけ声を震わせて尋ねる。


「事実を言ったまでだ。……それより、王女様。あんたもいつまでも俺の後ろを歩いてないで、王宮に戻ったらどうだ。あんたがここにいる時間の損失を、俺に補填させるつもりか?」


「……! わ、わかってるわよ! でも、あなたの『基準』をもう少し見ておかないと、また国が傾きそうな気がするのよ」


王女は顔を赤くし、俺の袖を掴んだ。 王族の誇りより、俺の導き出した「基準こたえ」を選んだらしい。 ……やれやれ。たかが計算に、執着しすぎだ。


俺はため息をつき、再び歩き出す。 背後には崩れ去った旧世界の残骸。 目の前には、俺が書き換えていく新しい世界の数字。


勝負は、とっくに決まっていた。

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