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第15話:基準(俺)を否定した代償

「……いい加減にしろ。お前の喚き声は、俺の演算を妨げる『ノイズ』だ」


俺は椅子に座ったまま、演算機から視線を上げずに吐き捨てた。 乗り込んできたギルドマスターと、ゼノン。 その怒気は、俺にとって処理待ちのゴミデータと同義だった。


「貴様ぁ! どこまで舐めた真似を! ゼノン、そいつを今すぐ拘束しろ!」


ギルマスの絶叫に合わせ、ゼノンが聖剣を抜いて詰め寄る。 俺はペンを回したまま、冷めた目でその剣先を眺めた。


「ゼノン。その剣、抜かないほうがいいぞ。……折れる」


「ハッ! 出任せを言うな! これは国宝級の聖剣だぞ」


「一度目は、俺を追放したあの日。二度目は、昨日の市場だ」

俺はそこで初めてペンを置き、ゼノンを正面から見据えた。


「ーー『三度目』はない。……エラーを放置した代償は、常に『現実』で支払うことになる」


「うるせえ! 死ね、欠陥品がぁ!!」


ゼノンが勢いよく聖剣を振りかざした、その瞬間。


パキィィィィィィィンッ!!!!!!!!


何もしていない。 ただ振り上げただけの衝撃で、聖剣は根元から粉々に砕け散った。


「な……っ!? 俺の……俺のおおおおおお聖剣が!!!!!?」


「計算通りだ。安物のオイルで誤魔化した摩擦熱と、俺が抑えていた金属疲労が限界を超えた」


俺は、折れた剣を抱えて立ち尽くすゼノンを視界から外した。


「……さて。次は、書類上のエラーを片付ける番だ」


俺は演算機の画面をギルマスへ向けた。 赤文字で埋め尽くされた、不正送金の記録だ。


「あんたが『正しい数字だ』と主張して承認印を押した書類。……これ、全部『架空取引』にすり替わってるぞ」


「……なっ!?」


「あんたが現場を無視してマニュアルを押し付けた結果、職員たちが帳尻合わせに書類を偽造したんだ。……結果として数億ゴールドが、実体のない幽霊業者へ振り込まれた。あ、もう着金してるな」


ギルマスの顔から、一気に血の気が引いていく。


「そんな……バカな……私は、数字通りに……!」


「あんたが管理してたのは『書類』であって、『現実』じゃない。……その承認印、あんたの魔力署名だろ。たった今、財務捜査局に通報しておいた」


扉が蹴破られ、調査官たちが踏み込んでくる。 彼らが携えているのは、ギルドマスターへの「逮捕状」だ。


引きずられていく彼らを、俺は見向きもしない。 再び演算機に向き直り、静かに独り言をこぼした。


「……やれやれ。これだけの計算ミスに気づかないなんて。やはり、俺の貴重な時間を割くほどの価値もなかったな」

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