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三話 オリバーの汚家(おうち)


針葉樹の山の中を数時間進み、ようやく二人はオリバーの住む小屋までやってきた。小屋は石で造られていて、小屋の背後には川があった。

メイメルは景色を見るとさっきまでの暗い表情から一転し、明るくなった。

「綺麗ですね!私、こんなところで住みたかったんですよね」

「なんか故郷を思い出します」

メイメルがそういうと、オリバーは自慢気な表情になる。

「そうだろ?俺もここが気に入って建てたんだ」

「えぇ!?オリバーさんが建てたんですか?」

「お、おうそうだ」


「お家の中はどうなってるのかな?」

メイメルがそんなことを呟いていると、オリバーは何か思い出したかのように焦り出した。

「あ!ご、ごめんメイメルち、ちょっとだけ家の外に居てて」

「なんでですか?」

「それは、その…」

「どうかしたんですか?」

「家がちょっと汚いからさ」

そういうと、メイメルは笑顔で

「それなら任せてください!私、今日からこの家のお手伝いなのでそれくらいのことはさせてください」

「汚いから俺がなんとかするからさ」

そういうと、メイメルは

「いえいえさせて下さい!どんなに汚くても大丈夫です。私も劣悪な環境にいたので慣れてますよ〜」

とニコニコしていた。

「ほ、本当に大丈夫だな?」

オリバーは汗をだらだら流しながらいう。

「はい」

二人は小屋のドアの前まで来て、オリバーがドアノブを握った。

「覚悟しろよ?」

「はい」

「3..2..1」

ガタンっ!!

勢いよくオリバーがドアを開けて、部屋の中が露わになる。

ドアを開けた瞬間、ドス黒い何かが入った瓶で埋め尽くされた床に、得体の知れない動物の骨などが散乱していた。

「っっ!!」

その瞬間、メイメルはさっきまでの自信に満ちた笑顔から一転青ざめて唖然とした顔になる。

「メ、メイメル…どう?片付けられる?」

メイメルは唖然として、オリバーの質問を無視する。

「メ、メイメルちゃん?」

メイメルはゴミを見渡して、少しの間黙った。そして、やっと口を開けると、小さくつぶやく。

「こ、これはヤバすぎる…!!!」

そして、オリバーに向かって

「これはいくらなんでもヤバすぎます!」

と大声でいうと、オリバーも分かっていたかのように項垂れる。

「だ、だよね〜」


「このままだと住めないので、掃除するしかないですね…」

メイメルは覚悟を決めて部屋に入ると、部屋の床一面には黒いモノが入った瓶や何の動物のかわからないマダラ模様の卵、毛皮などいろいろなものが転がっていた。

「こんなモノ…何にどうやって使うんですか?」

メイメルは気味悪そうに床のものを避けながら爪先立ちで歩いていると、オリバーも家に入ってくる。

「これは魔法薬とか色々作るのに役立つからでな…」


「こんなにあったら捨てるの時間かかりますね…」

メイメルが言うとオリバーは

「いやいやいや捨てたらもったいないからそのまま取っておく」

そう言うと、メイメルは言葉には出さなかったが少し苛立った表情になった。

「捨てなかったらどうするんですか?それになんかすごいくさいし」

「とにかく外に出しましょう!こんなの家の中に置いてると病気になりますよ?」

「大丈夫だから。俺なんかここに何十年もいるぞ

そう言いながらオリバーは咳き込むと、メイメルが

「ほら。咳き込んでるじゃないですか。」と、呆れた表情になる。


オリバーはメイメルに説得されて部屋にあるものを片付け始めた。

ゴソゴソゴソゴソ…

メイメルが床に落ちているモノを片付けていると、マダラ模様の卵が目に留まった。

「ん?何の卵?」

「オリバーさんこのマダラ模様の卵って何の卵ですか?こんなに大きいとハトとかではないですよね?」

マダラ模様の卵は鶏の卵より二回りほど大きかった。

「そんなところにあったのか?!」

オリバーはメイメルの持つ卵を見て喜んだ。

「窓際にある机に置いといてくれ。いやぁ片付けもたまには良いもんだな

「で、この卵って何の卵なんですか?」

メイメルが机に置いて卵を見つめながらいうと、オリバーもメイメルの近くへ来て

「これはな…たぶんリドラの卵だと思うんだけどなぁ」

と首を傾げながら言うと、メイメルが驚いた表情をする。

リドラって…このフロストヴィントランド王国にいるとされてる幻獣だよね??なんでこのうちにあるんだろ??しかも床に…床に…

大粒の汗を垂らしながらメイメルがそう考えていると、オリバーが不思議そうに見る。

なんでメイメル、そんなに驚いてるんだ?

「リドラ見たことないのか?」

「み、見たことないですよ?だってあれは空想上の生き物で伝承の中でしか…」

最後まで言う前にオリバーが

「じゃあこれを見てみろよ?」

と卵の方を指さしてメイメルもみると、卵が高速で回転している。

「なになに?!」

本当に見たことないんだな笑

「もうすぐ産まれるぞ。こいつは気に入った人が持つと孵化するんだ。メイメル、お前懐かれたみたいだな。」

卵がピタッと止まると、殻が割れ始める。

パキパキッ

中から大きく黄色い目をした丸い猿のような顔がうっすら見える。

リ、リドラだ…ありえない…

メイメルはその姿を見てリドラだとすぐにわかったようだった。

「どうだ?もうすぐ空想上の生き物が出てくるぞ笑

オリバーが笑いながら後ろでごちゃごちゃ言っているのを無視してメイメルはリドラの孵化に夢中だった。

卵から全体が現れると、猿のような体で非常に小さく、コウモリのような羽が生えたリドラが姿を現した。

「えぇ…信じられない…」

ポツリと言っていると、オリバーが後ろから

「まぁ…こいつは魔物だから普通の人間は見えねぇんだけどな」

そう言うとメイメルは

「どういうことですか?」

と聞く。

「魔物って魔力を持つものからしか姿が見えないらしい。だから俺とメイメルは見えるけど山の下の街の奴らはこいつを見えないんだよ。」

「だから幻獣って呼ばれるんですね」

さぁ、孵化したし外へ逃すか。

オリバーがそう考えて、窓を開けようとするとメイメルが止める。

「ここで育てないんですか?」

リドラ飼ってみたいのに…

「飼いたいのか?」

「そういうわけでは…」

いや笑絶対飼いたいんだろ笑

リドラ飼うのはめんどくさいが…まぁ、メイメルの魔力を上げるのに役立つし、そうなったら魔法薬も多く作れるから良いかもな。

「わかった…でも自分で世話しろよ?」

「はい!」

メイメルは頬を赤くして喜んだ。

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