二話 メイメルの弟子入り
治療を終えて、オリバーは自慢げな表情で言った。
「俺こんな商売してるんだ。これ本当は金取る治療だぞ?」
「すいません…ありがとうございます…」
「ほら、このパンやるよ」
オリバーはその場で動こうとしないでいる少女が気がかりになりつつも山の方向へ歩こうとする。
橋を渡りきったところで先ほどの少女の声が聞こえた
「あの…すいません」
オリバーが振り返ると少女は立ち上がってオリバーの方を見ていた。
「なんだ?どうした?」
「その、えっと…お、お手伝いとかなんでもしますので私を雇ってもらえませんか?」
オリバーは困った顔をして
「雇うって…俺そんな金無いしな…」
すると少女は
「魔法なら少し使えます…さっき魔法を使った商売をしてると言うようなことを言われていたので…」
「…ポーションくらいなら作れそうだが…困ったな」
オリバーが考えていると、
「…ダメですか?」
とうるうるした目で少女が顔色を窺うようにオリバーの顔を見つめた。
「わかった。雇ってやるよ」
「確かにもう一人いた方が助かるしな」
「頑張ります!」
少女は少し明るいトーンで言った。
「俺のうち山にあるけど登れるか?」
「大丈夫です」
少女は荷物をまとめると、オリバーの後につき二人は山へ向かい始めた
「結構遠いですね…」
「もう疲れたのか?」
「はい…」
「仕方ねぇな…ちょっとここら辺で休むか」
近くにあった大きな針葉樹の倒木に腰をかけると、オリバーは少女に水の入った瓶を渡した。
「これ飲めよほら」
「あ、ありがとうございます」
「優しいですね」
「…」
(オリバーが照れた表情になる)
「あの、すいません。そういえば名前を聞いていなかったので教えて欲しいです。」
少女がそういうと、オリバーは少し躊躇いながら口を開いた。
「オリバーだ。聞いたことあるだろ?街では俺は悪名高いからな」
「聞いたことないですよ?私最近あの街へ来たばかりなので」
「そうか。んでお前の名前聞いてないぞ?」
「私はメイメルっていう名前です。」
オリバーはその名前を聞くと驚いた表情で少女を見る。
「オリバーさん?どうかされました、?」
「メ、メイメルって西方に住むノルフドラゴンの末裔の種族でよくつけられる名前じゃないか?お前…ノルフドラゴンの末裔なのか?」
「あ、はい。この尖った耳でもう気づいていたと思いました。」
そう言いながらメイメルは笑っていた。
「ってことはここからずっと西方のヨーフォークから来たのか?」
「そうです。」
「でもなんで?あの国の方が裕福で暮らしやすいだろ?」
「最近、ヨーフォークでも魔力を持つ種族を迫害する動きがあって…、、それで逃げてきたんです…」
「すまん、悪いこと聞いたな。」
オリバーは何か思い詰めた顔に一瞬なり気まずそうに言った。
「さぁ、もう出発するか」
メイメルも気まずそうな表情で返事する。
「はい」