第三回ガチモード――YouTubeバーという現実
「ガチでやりましょう」
司会の宣言とともに照明が落ち、セットが組み替えられる。『第三回・ガチモード』。志願者席に座ったのは、先の貧乏父さんでも、金持ち父さんでもない。フード付きのパーカーに眼鏡、落ち着いた声の青年――みみずくだ。
「開業したいのは――YouTubeバーです」
虎の顔つきが一斉に“仕事”になる。ベンチャー、飲食、IT、アパレル、不動産が順に質問を重ねる。
「コンセプトは?」
「飲食×配信。“飲みながら撮る”体験を提供します。ブース三室、店内モニターで編集支援。配信のハードルを下げ、イベントへ誘導します」
「客単価と回転は?」飲食社長。
「平均五千円。二回転で四十名/日、月千二百名。売上六百万円を目標」
「理想論だ」飲食社長は即答した。「飲食で利益率二割は甘い。家賃、人件費、原価、歩留まり。どこで稼ぐ?」
「配信体験料二千円。利用者比率三割で月七十二万。週末イベント四回で百万円。スポンサー五十万。合計五百八十二万。利益率一五%で八十七万。回収二年」
IT社長が頷く。「話は現実に近づいた。スポンサー当ては?」
「音響メーカーと飲料。打診済み。スタジオ×試飲×レビューの導線を作る」
アパレル社長が手を挙げる。「学生が主客なら、単価五千は重い。価格、どう落とす?」
「学生デーは三千円。配信体験は千円に。回数券、学割、SNS拡散で実質値引き」
不動産オーナーが初めて口を開く。「騒音と近隣対策は?」
「会員制。身分証確認。泥酔者入場禁止。ブースは防音、防振。店内モニターで配信監視、規約で即停止」
言葉は滞らず、熱も暴走しない。数字は生々しく、甘さはまだ残る。――そのとき、スタジオに新しい影が現れた。
「どうも〜。俺らが来ちゃって大丈夫っすか?」
虎八、教育系人気配信者・キャンバスラボのホログラムが笑っていた。
「学生相手なら、体験がコスパ命っす。学び×笑いがちゃんとあるなら、客は来る。……で、コラボ枠、空けてくれます?」
みみずくは一拍置いて頭を下げた。
「もちろん。あなた方が“学びを笑いに変える”場を、店ごと用意します」
拍手。ベンチャー社長が腕を組み、短く告げる。
「続けろ。今日はガチだ。甘くない。でも――面白い」