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祭りの日――金の粉ナイト

 オープンから一ヶ月。会員数は百人を突破し、条件付き出資の最初のラインをクリアした。

 その記念として、初の「祭りの日」が企画された。テーマは――金の粉ナイト。


 金持ち父さんが提案し、虎九が釘を刺し、各社長が条件を整えた結果のイベントだ。

 派手さは毒になる。しかし、ときに必要な「刺激」も客を呼ぶ。祭りの日にそれを集約することで、文法を壊さず、話題性を作ることができる。


 午後七時。開店前から入口には行列ができていた。

 SNSで「金の粉が降る夜」という告知が拡散し、期待と不安が入り混じった熱気が漂う。

 スタッフは規約を再度読み上げ、来店者全員に同意サインを求める。安全対策は万全だ。


 午後八時。

 店内の照明が一度落ちる。司会がマイクを握り、ゆっくりと告げる。

「――これより、金の粉ナイトを開始します」


 天井のスリットから、金色の粉が舞い降りた。

 ライトに反射して輝くその粒子は、危険ではない特殊素材。触れても肌に残らず、掃除も容易だ。

 だが見た目は圧倒的で、観客からは歓声が上がる。


 ブースで配信していた学生が叫ぶ。「やばっ、映画みたい!」

 そのまま動画を回し続け、金の粉を背景にトークを繋ぐ。コメント欄には「豪華すぎる」「夢ある」「行きたい」の声があふれた。


 虎七は観客席から冷ややかに眺めていた。「まあ、数値は出るだろう。だが、コストは?」

 飲食社長が横で答える。「スポンサーのサンプル提供分。金は降らせても赤字は出ない。ちゃんと設計してある」

 IT社長は端末を見ながら頷いた。「リアルタイム視聴数は五万を突破。今夜だけで十万人単位に届く可能性がある」


 イベントは成功した。

 だが、みみずくは満足していなかった。

 金の粉が降る間、確かに客は喜び、SNSは盛り上がった。だが、その熱は「粉が降るから」であって、「自分が撮るから」ではない。

 終演後のカウンターで、彼はスタッフに言った。

「今日は祭りだ。文法を見せる日じゃない。でも――祭りに頼るな。常日頃の“間”を大事にするんだ」


 スタッフはうなずいた。

 金の粉は確かに話題を作った。しかしその輝きは、一夜限りの刺激に過ぎないことを、誰もが理解していた。

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