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第1話 フィジカル系女子エストリア

以前アルファポリス様でコンテスト用に書いてみた作品です。順位的に投稿作全体の半分よりやや上ぐらいでしたので、そこまでは悪くない、ハズ。

何となく令嬢溺愛モノも書いてみたくなって書いたやつです。私にしては珍しい王道テンプレ系です。

 沢山の人々が暮らすファーテル大陸にある国々のうち、特に自然豊かな国がレアル王国である。肥沃な大地と豊富な資源に恵まれたこの国は、発展を目的とした戦争とは無縁なとても平和な国である。


 しかし何の危険もないわけではない。平和な国でも事故や犯罪は起きるし、何よりも最大の問題があった。自然豊かで肥沃な大地から受ける恩恵は、何も人間だけの物ではない。


 この世界には魔物と呼ばれる危険な生物が存在し、このレアル王国近郊にも生息している。そんな魔物達もしっかりと豊かな自然の恩恵を受けていた。

 特に国境近くにあるモアラ大森林と呼ばれる広大な森には大量の魔物が住み着いている。これまでの歴史の中でも、魔物達が大森林から幾度も襲来している。


 そんな魔物達に対抗する為の守りの要、オーレルム辺境伯領がある。魔物の集団が国内に入り込むのを防ぐ為に、何百年も前から存在している要塞都市だ。

 そのオーレルム辺境伯領の一角で、1人の令嬢が収穫した穀物等を保管する食料庫へと向かっていた。彼女の名前はエストリア・オーレルム。今年21歳になったうら若き乙女である。


 オーレルム家特有の真っ赤な髪を短く切り揃え、騎士風の革鎧を着用している。女性にしては背丈が高く、170cmと結構大きい。

 見る限り細身ではあるが、決して貧弱という意味ではない。彼女はむしろその逆だ。エストリアと同世代の女性であれば、その多くは王都で社交に勤しみ重い荷物など執事や侍女に任せるだろう。

 しかしエストリアは違う、10キロの小麦が入った革袋を2つ、両脇に抱えながらスキップでもするかの様に軽やかに歩いている。


「よいしょ!」


 可愛らしい掛け声とは裏腹に、重厚な金属の扉を簡単に開けたエストリア。本来なら成人男性が2人がかりで開ける代物だが、彼女にとっては掛け声1つで開閉可能な扉でしかない。


 一度地面に置いた革袋を再び抱えたエストリアは、小麦の入った革袋を小麦置き場に下ろすと倉庫を出て行く。そして再び扉を閉めようとするが、微妙な引っかかりがあるらしく上手く閉まらない。


「また建てつけが悪くなったのでしょうか? お父様に報告しておきましょう。よいしょ!!」


 先程よりも力を込めて扉を引くと、今度こそ食料庫は閉じられた。何度も言う様だが、本来この扉は成人男性が2人がかりで開閉する扉である。

 決してうら若きご令嬢の細腕で動く様な軽さではない。では何故エストリアは可能なのかと言えば、鍛え抜かれた肉体を持つからだ。


 見た目が細く見えるのは、無駄な贅肉がなく引き締まっているから。ここオーレルム家では大昔から力こそが全てであり、民も守れぬ軟弱者は一族の恥だと言われて来た。

 それは女性であっても変わらない為、エストリアもまたそんな思想の下で育ったのだ。これはエストリアだけが特別なのではなく、歴代のオーレルム家に生まれた女性は皆こうなのだ。


 例えばエストリアの先祖で言えば、たった1人で百匹の魔物の群れを殲滅した女傑もいる。性別に関わりなく強者であらねばならないのがオーレルム家だ。

 もちろん嫁入りや婿入りして来た者はその限りではない。それ故にエストリアの母親はごく普通の伯爵家ご令嬢だった。


 そんな彼女の母親は、社交にまるで興味を示さない娘を心配している。このままでは行き遅れてしまうのではないかと。

 何度かお見合いの話も出たが、2人居るエストリアの兄達が猛反対した。軟弱者に妹を嫁にはやれないと主張し、父親もまた同意したので結局はご破産となった。


「さあ、今日も行きましょう!」


 そんな母親の心配などどこ吹く風で、エストリアは今日も趣味の遠乗りに出掛ける。長年共に過ごしてきた美しくサラサラとした毛並みの愛馬に跨り、エストリアは食料庫を出発した。

 そもそもこうして小麦を運んで来たのは、侍女達が苦労しながら運んでいるのを見掛けたからだ。力仕事など自分がやれば済むのだから、もっと他の事に時間を使って欲しいとの思いから出た行動だ。


 エストリアはそんな風に、遠乗りに出掛けては誰かを手助けしている。頭を使うのは苦手でも、身一つあれば出来る事なら何でもやる。それがエストリアという女性の生き方だった。


 季節によっては領民と共に畑仕事だってやる。貴族家のご令嬢としては間違いかも知れない、それでも民が幸せであるならば構わない。

 そうした生き方を選んで来たエストリアに、この後転機が訪れる事をまだ彼女は知らない。


 まさに運命の出会い、エストリアという女性を良く理解し、そして深い愛情を向けてくれる男性との出会い。そんな瞬間がすぐそこまで迫っていた。

既に完結済みの作品ですので一部修正・訂正をしながら、17時から予約投稿を利用して10分間隔でUPしていきます。

最終話まで今日中になんとか、出来たら良いなぁ。

もし面白いと感じて頂けたら最後までお付き合い下さい。


本作はトータル11万文字の51話構成です。

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