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復讐者たち~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン3~  作者: そら・そらら


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42.乱入

「つまりアーシャって奴は組織の後釜に収まるために、邪魔者を消してたってことか? あんたはその邪魔者のひとり?」

「むにゃー!?」


 レオンの質問を肯定するように、私は転ばされた。ちゃんとレオンやユーファが支えてるとはいえ、心臓に悪すぎる。転ばされることを常に警戒しなきゃいけないの、疲れるし。

 この件が終わっても、数日は休みを取らないとやってられないわよ!


 あとレオンは事件の真相を掴んで、会ったこともないアーシャって女の真意も理解したみたいな雰囲気出してるけど、全部推測だからね。殺された霊も全部の事情を知ってるわけじゃない。アーシャとナベプタに殺されただけ。


 その事実と、殺された後のふたりの会話と、自身の立場から推測した真相を、私を転ばせるか転ばせないかだけの反応で伝えるしかない。レオンの推理も推測でしかないし。

 まあ、正しくはあるのだろうけど。


 そうやって霊と会話して転ばされて、道案内でも転ばされながらの移動だから、ビョルドンがいる場所までたどり着くのには時間がかかった。


 金持ちの貴族の邸宅が並ぶ一角から外れた、比較的富裕層の住む一帯。建物の間隔はそれなりに開いていて、騒ぎが起きても気づかれにくい。そして、この時間は兵士の巡回もあまりない。

 そんな場所の一軒が、ビョルドンの隠れ家だ。隠れ家なら、もっと慎ましいものを選ぶべきだと思うけど、ビョルドンはそれなりの高級住宅に隠れたいらしい。


 その扉が開いていて、中から悲鳴が聞こえた。


 真っ先に反応したのはユーファだ。建物の中に駆け込む。


「待て! 殺しは駄目だからな!」


 レオンも追いかける。


「ま、待って! 置いてかないで! 霊さん転ばせないでね! 今転んでも何も意味ないから!」


 霊に忠告しながら、わたしもゆっくりあとに続く。走りながら転ぶと大変だから。


 中はひどい有様だった。


 いくつもの死体や、死んでないけど怪我してる体が転がっていた。流血も多い。


「ナベプタ……」


 レオンが太った男に視線を向けていた。ヘラジカ亭にも客として訪れていた、勇敢なるイビルスレイヤーの正体。

 彼は今、大勢の男に掴まれて動きを封じられた上で、女と対面させられていた。


 こいつがアーシャか。他に女はいないし間違いない。


 ナベプタの目から血の涙が流れている。まさか、目を潰されたの?

 アーシャや男たちが、私たちの乱入に気づいた。


「あなたたち誰? 子供は寝る時間よ」

「こんな光景見せられて、寝てる場合かよ。ビョルドンはどこだ? 生きてるか?」

「はっ。とっくに死んだわよ。ああ。あなたたちも生かしてはおけないわ。この現場を見たならね。あなたたち、この坊やたちを殺して」

「そうか」


 自身に向けられる殺意にレオンは全く動じず、あらかじめ用意していた小瓶を取り出し中身をぶちまけた。

 ピンク色の粉が空中にばらまかれると、ランプに照らされていた屋内が闇に包まれる。


「乱暴者どもの視界を塞げ」


 私の周りを浮遊する霊を黒い靄として人の目に見えるようにする粉末。だから一瞬だけ、世界が闇に包まれたように見えた。

 レオンの指示を聞いた霊たちが、男たちやアーシャの顔に集まっていく。数が多いから、彼らは視界を塞がれることになる。もちろん、私たちには何の影響もない。


「な、なによこれ!?」

「前が見えねぇ!」

「おい! ガキ! 何をした!?」

「ルイ、ユーファを見ていてやれよ!」

「え、ええ!」


 やりすぎないようにね。目を潰されていても、あの体型は見間違えようがない。なぜかはわからないけど仲間割れしてやられてしまったナベプタは、まだ生きている。

 そんな彼にユーファが近づいていった。周りにいるアーシャたちは混乱の極みにいて、視界を塞ぐ靄を払おうとしたり逃げようとしてナベプタから離れている。


 無駄な努力なのに。


 ナベプタの前に行くユーファと、アーシャたちに近づくレオン。視界を奪われた彼女たちは、レオンにとって敵ではない。


「ビョルドンは死んだか。可哀想に。霊を慰めるために、お前たちは徹底的にいためつけなきゃいけない」


 言いながらアーシャに肉薄。無防備なお腹を数発殴る。くぐもった声と共に崩れ落ちる彼女の顔面を蹴り上げた。霊に覆われているから、どうなったか知らないけど、顔に痣を作るかもね。

 周りの男たちも、レオンは次々に殴り倒していく。足払いをかけて転倒させた上で腹を踏みつけ、別の男の襟首を掴んで引き倒して顔面と床を激突させ、別の男に体当たりをかまして後頭部を壁にしたたかにぶつけさせた。


 昏倒したり痛みに悶えて立てなくなったアーシャたちを見て、レオンは霊に語りかける。


「ビョルドンさん。悪いが俺は、悪人の霊にあまり優しくする気はない。見ての通り、あんたを殺した娘は倒した。これでおとなしく冥界に行ってくれないか? 他に死んだ手下も、そうするように説得してくれ」


 レオンは霊の反応を見てるはずだけど、ひとつひとつの霊は薄い靄でしかない。会話も出来ないから、ビョルドンの霊がどう意思表示しているのか、よくわからないらしい。

 ただ、私を転ばせることもなかった。

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